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京都府レッドデータ調査の概要
調査趣旨
地球上には1千万種にも及ぶ多様な野生生物が存在するといわれているが、人間の活動によって、これまでにないほどの速さと規模で種の絶滅が進んでいる。あらゆる野生生物の種を絶滅から守っていくことは、生物多様性の保全から見ても、野生生物の持つ様々な価値を守るうえからも緊急の課題である。
また、野生生物の生存基盤である地形や地質、これらと野生生物の総体である自然生態系も、生物多様性の保全を進めるうえで重要な要因であり、総合的な取組が課題となっている。
このため、京都府では、府内における絶滅のおそれのある野生生物種や保護を要する地形・地質・自然現象、自然生態系の現状やその保全対策を複合的に把握し、府内の生物多様性を保全する施策の基礎的データとして活用するため、1998年から2001年にかけて京都府レッドデータ調査を実施し、それらをとりまとめて2002年に初の京都府レッドデータブックを発刊した。
その後、10年余りが経過し、府内の生物多様性をとりまく状況も大きく変化したことから、2011年から絶滅のおそれのある野生生物種について、レッドリスト見直しのための調査を開始し、2013年に京都府レッドリスト改訂版(野生生物編)を公表した。あわせて2013年から地形・地質のほか、地域生態系や人間-環境系の歴史的側面の調査を開始し、2002年版のすべての分野をカバーした。
調査対象
1──対象分野
本調査の対象とする分野は、「野生生物種」、「地形・地質・自然現象」、「自然生態系」とした。
【野生生物種】
①哺乳類、②鳥類、③は虫類、④両生類、⑤淡水魚類、⑥昆虫類[蜉蝣(カゲロウ)目、蜻蛉(トンボ)目、直翅(バッタ)目、革翅(ハサミムシ)目、蟷螂(カマキリ)目、蜚蠊(ゴキブリ)目、半翅(カメムシ)目、脈翅(アミメカゲロウ)目、鞘翅(コウチュウ)目、長翅(シリアゲムシ)目、双翅(ハエ)目、鱗翅(チョウ)目、毛翅(トビケラ)目、膜翅(ハチ)目]、⑦クモ類、⑧甲殻類およびその他の淡水産無脊椎動物、⑨陸産貝類、⑩淡水産貝類、⑪維管束植物(シダ・種子)、⑫コケ植物、⑬車軸藻類、⑭地衣類、⑮菌類[担子菌類、子嚢菌類]
【地形・地質・自然現象】
①地形、②基盤地質・鉱物、③被覆層・化石、④自然現象
【自然生態系】
①地域生態系、②生息・生育地、③人間-環境系の歴史的側面
2──対象範囲
本調査の対象とする野生生物の範囲は、陸産、淡水産及び陸域と密接な関係を持つ海岸域の生物のみとし、純海産の野生生物は除いた。また、地形・地質や自然生態系も陸域、海岸域までとし、海底の地形・地質や海域の自然生態系などは含まれていない。
3──対象地域
本調査の対象とする地域は、京都府全域とした。なお、府内の地域区分の名称は、2011年3月京都府発行の「明日の京都」の地域振興計画を参照して、下図のとおり五つの地域区分とした。
新区分 | 2002年版 | ||
---|---|---|---|
地域区分名 | 市町村名(旧市町村名) | ||
丹後地域 | 宮津市、京丹後市(旧:峰山町、大宮町、網野町、丹後町、弥栄町、久美浜町)、伊根町、与謝野町(旧:加悦町、岩滝町、野田川町) | 北部地域 | 丹後地域 |
中丹地域 | 福知山市(旧:福知山市、三和町、夜久野町、大江町)、舞鶴市、綾部市 | 中丹地域 | |
南丹地域 | 亀岡市、南丹市(旧:美山町、園部町、八木町、日吉町)、京丹波町(旧:丹波町、瑞穂町、和知町) | 中部地域 | |
京都市・乙訓地域 | 京都市(旧:京北町)、向日市、長岡京市、大山崎町 | 南部地域 | 京都市・乙訓地域 |
山城地域 | 宇治市、城陽市、八幡市、京田辺市、久御山町、井手町、宇治田原町、木津川市(旧:山城町、木津町、加茂町)、笠置町、和束町、精華町、南山城村 | 山城中部地域 | |
相楽地域 |
調査体制
1──希少野生生物保全専門委員会
京都府レッドデータブック改訂のための調査を実施するに当たっては、調査の総合的な方針や選定、評価の基準、掲載内容などを定める必要があるため、絶滅のおそれのある野生生物種については、京都府環境審議会自然・鳥獣保護部会の希少野生生物保全専門委員会(委員長 村上興正氏)で検討を行った。また、地形・地質や自然生態系についても、各分野の専門家による委員会を開催し、検討を行った。
2──京都府レッドデータ調査者
本調査は、2011年から2014年までの4箇年をかけ、各分類群及び分野ごとの専門家が調査方針や方法を検討し、文献や標本、現地調査などにより実施したものである。さらに、調査者以外にも多くの研究者や専門家の方に分布情報や資料提供、写真提供のほか、現地調査などの御協力をいただいた。
野生生物
希少野生生物保全専門委員会 委員
- 秋山 弘之 兵庫県立大学自然・環境科学研究所准教授/兵庫県立人と自然の博物館主任研究員
- 近藤 高貴 大阪教育大学教育学部教授
- 佐久間大輔 大阪市立自然史博物館主任学芸員
- 須川 恒 龍谷大学非常勤講師
- 竹門 康弘 京都大学防災研究所附属水資源環境研究センター准教授
- 津軽 俊介 大本花明山植物園元園長
- 中村 桂子 日本野鳥の会京都支部副支部長
- 細谷 和海 近畿大学農学部教授
- 松井 正文 京都大学大学院人間・環境学研究科教授
- 光田 重幸 同志社大学理工学部准教授
- 村上 興正 京都府環境審議会自然・鳥獣保護部会部会長(委員長)
- 吉安 裕 元京都府立大学大学院生命環境科学研究科教授
担当課
京都府自然環境保全課
分野別の調査者 下線は分科会責任者(敬称略)
哺乳類分科会
- 村上 興正 (再掲)
- 高柳 敦 京都大学大学院農学研究科講師
- 本川 雅治 京都大学総合博物館准教授
- 前田喜四雄 奈良教育大学名誉教授
- 中川 尚史 京都大学大学院理学研究科准教授
鳥類分科会
- 須川 恒 (再掲)(全体総括)
- 中村 桂子 (再掲)(京都市ほか担当)
調査協力者
- 狩野 清貴 京都府立網野高等学校・日本鳥学会会員(北部担当)
- 梶田 学 日本鳥学会会員(中部担当)
- 脇坂 英弥 兵庫県立大学大学院生(南部担当)
- 和田 岳 大阪市立自然史博物館学芸員(全般)
- 塩崎 達也 京都大学野生生物研究会・名古屋大学大学院(情報集積)
写真提供者
河合恵美子、柴野哲也、中川宗孝、堀本尚宏、安原清志
両生・は虫類分科会
- 松井 正文 (再掲)(全体総括)
- 田邊 真吾 日本爬虫両棲類学会会員
- 西川 完途 京都大学大学院人間・環境学研究科助教
- 疋田 努 京都大学大学院理学研究科助教授
- 森 哲 京都大学大学院理学研究科助手
調査協力者
- 関 慎太郎 京都水族館副館長
- 見澤 康充 株式会社建設環境研究所
- 吉川 夏彦 国立科学博物館特定非常勤研究員
- 江頭幸士郎 京都大学博物館研究員
淡水魚類分科会
- 細谷 和海 (再掲)
- 東山 憲行 京都府教育委員会 総合教育センター北部研修所研究主事
- 林 博之 京都府立嵯峨野高等学校教諭
- 辻野 寿彦 大阪市立三国中学校教諭
調査協力者
- 川瀬 成吾 大阪府立環境農林水産総合研究所 水生生物センター研究員
- 中尾 遼平 近畿大学大学院農学研究科院生
- 田中 和大 近畿大学大学院農学研究科院生
- 河野健士朗 近畿大学農学部環境管理学科学生
- 須藤 允之 元近畿大学農学部環境管理学科学生
- 辻 晃一 元近畿大学農学部環境管理学科学生
昆虫・クモ類分科会
- 吉安 裕 (再掲)
- 中尾 史郎 京都府立大学大学院生命環境科学研究科准教授
- 大石 久志 日本双翅目談話会、大阪市立自然史博物館外来研究員
- 水野 弘造 日本甲虫学会
- 田端 修 日本トンボ学会
- 沢田 佳久 元兵庫県立人と自然の博物館
- 松本吏樹郎 大阪市立自然史博物館
- 加村 隆英 追手門学院大学社会学部教授
- 吉田 真 立命館大学名誉教授
- 谷田 一三 大阪府立大学大学院理学系研究科教授
- 竹門 康弘 (再掲)
- 伊藤 建夫 日本甲虫学会
- 黒田 悠三 日本甲虫学会
- 蝦田 渉 丹後・丹波虫の会
- 小野 克己 日本鱗翅学会(執筆)
調査協力者
写真提供者
- 景井 直人 京都府立大学
- 中嶋 智子 京都府保健環境研究所
- 初宿 成彦 大阪市立自然史博物館
- 吉田 健 京都市
貝類分科会
- 近藤 高貴 (再掲)
- 中井 克樹 滋賀県立琵琶湖博物館主任学芸員
- 石田 未基 滋賀県立琵琶湖博物館
貝甲殻類およびその他の淡水産無脊椎分科会
- 竹門 康弘 (再掲)
シダ植物・種子植物分科会
- 光田 重幸 (再掲)
- 赤松 富子 京都植物同好会会員
- 近藤 和男 京都植物同好会会員
- 田中 徹 京都植物同好会代表
- 津軽 俊介 前花明山植物園園長
- 細見 俊樹 京都植物同好会会員
- 山本 義則 京都植物同好会会員
執筆協力者
角野康郎、川辺龍太郎、澤田徹、高木俊夫、西沢信一、松岡成久、村田源
調査協力者
京都府農林水産技術センター海洋センター、西澤公男、水谷高典、村田章、湯川幸子、その他情報を提供して下さった皆様
写真提供者
人見昌司、松尾美和子
コケ植物分科会
- 秋山 弘之 (再掲)
- 小林 亮平 京都市北区在住
- 大崩 貴之 京都大学理学研究科
- 道盛 正樹 特定非営利活動法人大阪自然史センター理事
調査協力者
- 大石 善隆 信州大学農学部助教
- 田村 英子 岡山コケの会
- 長谷川二郎 南九州大学理事長・学長
写真提供者
- 木村 全邦 森と水の源流館
車軸藻類分科会
- 坂山 英俊 神戸大学大学院理学研究科講師
- 加藤 将 神戸大学大学院理学研究科日本学術振興会特別研究員PD
地衣類分科会
- 山本 好和 秋田県立大学生物資源科学部教授
菌類分科会
- 佐久間大輔 (再掲)
- 今村 彰生 北海道教育大学准教授
調査協力者
- 丸山健一郎 関西菌類談話会
- 小寺 祐三 関西菌類談話会
- 上田俊穂(故人) 関西菌類談話会
- 森本 繁雄 関西菌類談話会
- 名部みちよ 関西菌類談話会
- 折原 貴道 神奈川県立生命の星・地球博物館学芸員
- 吉見 昭一(故人) 関西菌類談話会
- 小西 思演 日本冬虫夏草の会
写真提供者
小寺祐三、吉見昭一(故人)、小西思演
地形・地質
地形分科会
- 植村 善博 佛教大学歴史学部教授
- 山脇 正資 京都府立嵯峨野高等学校教諭
- 塩見 良三 元京都府立大江高等学校教諭
- 高田 将志 奈良女子大学文学部助教授
地質分科会
- 石田 志朗 元山口大学理学部教授
- 小滝 篤夫 京都府立大学生命環境学部非常勤講師
- 武蔵野 實 大阪成蹊大学学長
- 楠 利夫 同志社女子中・高校講師
- 貴治 康夫 大阪府立箕面東高等学校教頭
調査協力者
荒木邦雄、藤原重彦、南木睦彦、竹村恵二、山本睦徳
写真提供者
益富地学会館、飯田義正、池田俊夫、小村良二、松原典孝、中川淳美(故人)、西村昭、藤原紀幸、産総研地質標本館
自然生態系
地域生態系分科会
- 高原 光 京都府立大学大学院生命環境科学研究科教授
- 布谷 知夫 三重県総合博物館長
人間-環境系の歴史的側面分科会
- 小椋 純一 京都精華大学大学院人文学研究科教授
- 高原 光 (再掲)
- 中村 治 大阪府立大学大学院人間社会学研究科教授
- 深町加津枝 京都大学大学院地球環境学堂准教授
- 村上 興正 (再掲)
調査方法
今回の改訂では、2002年発行の初版に掲載された対象がこの10年余りでどのように変化したのかを中心に、新たな対象も含めて調査を行ったものである。初版と同一の調査者が実施した場合もあれば、新たな調査者が実施し、初版に加筆修正を加えたり、新たに書き起こした場合もある。これらはすべて、知見の積み上げにより完成したもので、初版を執筆いただいた調査者に対してもあらためて謝意を表したい。
また、府内の自然環境保全上、特に重要な場所について、野生生物種や地形・地質、生態系の分野を超えて調査を行う合同現地調査について、初版では冠島や修学院離宮、平安神宮など9箇所で実施したが、今回は宮内庁京都事務所のご理解とご協力により、桂離宮(京都市西京区)での現地調査を2度にわたって実施した。この結果については、第3巻の生息・生育地の項で記載している。
なお、本調査を取りまとめた京都府レッドデータブック改訂版は3分冊で、第1巻は野生動物編、第2巻は野生植物・菌類編、第3巻は地形・地質・自然生態系編とし、あわせて京都府自然環境目録についても改訂を行った。
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