トップページ > 地形・地質・自然現象 > 地質 > チャートの層裏痕
分類 | 構造 |
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細分 | 堆積構造 |
時代区分 | 中生代三畳紀 |
地域 | 綴喜郡宇治田原町犬打峠 |
選定理由 | 深海堆積物とされるチャートに見られる層裏痕は、堆積メカニズムの推定に重要な証拠であり、貴重なものである。 |
分布 | 層状チャートは日本の中・古生界の海洋プレート層序の中では最も普遍的な岩相なので、各地のチャートに見いだされると期待されるが、記載されたものはほとんどない。 論文記載された当時の京北町のもののほか、府内各地のⅠ型地層群分布地域に見られるが、記載はほとんどない。 |
特徴(特異性) | 本地域の丹波層群はⅠ型地層群に属し、三畳紀─ジュラ紀のものである。領家変成作用を受けて熱変成しているため、挟みの泥質部と剥離しやすく、チャート層の下底の初成堆積構造が観察しやすい。不規則な生痕様の堆積構造、クレッセントマーク(水底の粒子周囲に水流によってできた三日月状の掘り込み)、フルートマーク(水流によってできたV字型の掘り込み)、スキップマーク(粒子の跳躍運搬によってできたと考えられる掘り込みの連続したもの)などがある(前島ほか 1981)。層裏痕の存在は、層状チャートが放散虫等の生物遺骸で構成されている生物岩であることを示すだけでなく、底層流によって移動堆積したものであることも示している。また、系統的記載はないが、狭い地域で多様な層裏痕が観察される点でも重要である。 |
現状 | 宇治田原町郷の口から犬打峠を経て和束町に至る林道のいくつかの地点で見られる。このうち最も特徴的なスキップマークは鷲峰山への登山道との分岐点で、茶畑用採水施設のある地点のチャートの崖に見られた。現在は崩落予防の鉄製のネットで覆われ、蔓植物も繁茂しているため、観察できなくなっている。前述したように熱変成によって観察しやすくなっているため、多様な層裏痕が観察できる場所である。数億年前の遠洋性堆積物であるチャートの特異な堆積作用を示すものとして保全されなければならない。 |
保存に対する脅威 | この林道は宇治市や京都市山科地域から南部地域の和束町や南山城村へ抜ける間道となっており、今後道路の拡幅や整備が進むものと思われる。山地の道路なので道路側面の擁壁などによる保護が進む可能性が高い。 |
必要な保存対策 | 道路側面のチャートの崖については、崩落防止のため補強等の措置が必要であるが、コンクリートの覆いや、アンカー工法による擁壁保護は必ずしも必要ではない。斜面勾配を緩くするなどの措置で露頭の保護をすることで対応すべきである。 |
執筆者 武蔵野實
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