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自然現象
名称 | 類型 | 所在地 | 特記事項 |
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久美浜温泉 | 温泉 | 京丹後市久美浜町字平小字下和田 | 旧源泉は別場所 |
木津温泉 | 温泉 | 京丹後市網野町字木津 | |
三津鉱泉 | 鉱泉 | 京丹後市網野町字三津 | |
浜詰温泉 | 温泉 | 京丹後市網野町字浜詰 | 現在は消滅 |
岩滝温泉 | 鉱泉 | 与謝郡与謝野町字岩滝 | |
由良温泉 | 鉱泉 | 宮津市由良小字岩神 | |
神崎鉱泉 | 鉱泉 | 舞鶴市字蒲江小字中井田 | 舞鶴温泉とも呼ばれる |
宮垣鉱泉 | 鉱泉 | 福知山市大字宮垣 | 岩戸温泉とも呼ばれる |
桧山鉱泉 | 鉱泉 | 船井郡京丹波町桧山 | |
安鳥鉱泉 | 鉱泉 | 南丹市日吉町小字前畑 | 安鳥温泉とも呼ばれる |
千歳温泉 | 温泉 | 亀岡市千歳町国分 | |
湯の花鉱泉 | 鉱泉 | 亀岡市稗田野町佐伯 | 湯の花温泉と呼ばれている |
嵐山鉱泉 | 鉱泉 | 京都市西京区嵐山 | 嵐山温泉と呼ばれている |
鞍馬諸鉱泉 | 鉱泉 | 京都市左京区鞍馬本町 | 4か所が知られている |
北白川諸鉱泉 | 鉱泉 | 京都市左京区北白川 | 4か所が知られている |
小倉山鉱泉 | 鉱泉 | 京都市右京区嵯峨小倉山 | 現在は利用されておらず、現状不明 |
亀ノ井鉱泉 | 鉱泉 | 綴喜郡宇治田原町 | 真言院境内 |
湯屋谷鉱泉 | 鉱泉 | 綴喜郡宇治田原町字湯屋谷 | 4か所が知られている |
郷の口温泉 | 鉱泉 | 綴喜郡宇治田原町字郷の口 | |
木津川流域鉱泉 | 鉱泉 | 相楽郡南山城村字田山 | 2か所が知られている |
笠置温泉 | 温泉 | 相楽郡笠置町大字笠置 | |
琴引浜 | 鳴き砂 | 京丹後市網野町字掛津 | |
砂方浜 | 鳴き砂 | 京丹後市丹後町砂方 | 現在はほとんど鳴かない |
御香水 | 地下水 | 京都市伏見区御香宮 | 伏見七名水のひとつ |
磯清水 | 地下水 | 宮津市字文殊 | 天橋立の中にある |
普甲峠の清水 | 湧き水 | 宮津市普甲峠 | |
長命いっぷく水 | 湧き水 | 与謝郡与謝野町字岩滝 | |
白雲宮御神水 | 湧き水 | 与謝郡与謝野町三河内 | |
真名井ケ池 | 地下水 | 福知山市大江町佛性寺字真井野 | |
真名井の水 | 地下水 | 舞鶴市公文名 | ポンプで汲み上げている |
梨木神社の清水 | 地下水 | 京都市上京区染殿町 | |
舞鶴湾 | 雲海 | 舞鶴市舞鶴湾 | |
三岳山 | 雲海 | 福知山市三岳山 | |
本庄浜の龍穴 | 風穴 | 与謝郡伊根町本庄浜 | |
質志鍾乳洞 | 風穴 | 船井郡京丹波町質志 | 府指定天然記念物 |
郷村断層 樋口地区 | 地震断層 | 京丹後市網野町字郷小字樋口 | 国指定天然記念物 |
郷村断層 小池地区 | 地震断層 | 京丹後市網野町字郷小字小池 | 国指定天然記念物 |
郷村断層 生野内地区 | 地震断層 | 京丹後市網野町字生野内 | 国指定天然記念物 |
自然現象レッドデータブックについて
レッドデータブックとは急激に減少したり、存続の危機に追いつめられた世界の野生生物種の状態についてのデータをまとめた情報集であり、最初の刊行は1966年の世界自然保護連合(IUCN)による哺乳類レッドデータブックであるとされている。その後、哺乳類以外の生物についてのレッドデータブックも順次発行されている。日本でも1986年に、「我が国における保護上重要な植物種および植物群落の研究委員会植物種分科会」によって『我が国における保護上重要な植物種の現状』(日本自然保護協会、世界野生生物保護基金)が作成されて後、環境庁によって1991年に『日本の絶滅のおそれのある野生生物(脊椎動物編、無脊椎動物編)』が発行され、以後植物、昆虫などが発行されている。またこれに呼応して、各都道府県からのレッドデータブックが順次発行されて、現在ではその計画のない都道府県はほとんどない状態となっている。
しかしながら、これまでに発行されてきた各都道府県のレッドデータブックのなかでは、植物群落や生態系などを取り扱った例はあるものの、自然現象にまで手を広げた例はごく稀である。京都府の場合には、京都の自然や古来から受け継がれてきた人の暮らし、あるいは文化を意識して、自然現象についての項目を付け加えることになった。自然現象というものをどのように定義し、また実際にも何を取り上げるかということは議論のあるところではあるが、同じく京都府レッドデータブックで扱われている地形・地質や生態系などと区分して、以下に取り上げたような項目を選択した。
また、自然現象については、現在の人間活動に依存して成立しているような点も多いために、今後の推移についても議論ができないような面がある(とくに生物と同じような絶滅危惧のランク付けは不可能である)。ほかに例がないために十分に吟味できていない点もあるが、自然現象ごとにその性格などについて述べる。
温泉(鉱泉)
一般的には、地中から温かい水が湧き出してくる現象を温泉と呼ぶ。科学的には、温泉とはその土地の平均気温より高い水温を持つ湧水と定義され、
1)水温が25℃以上
2)溶存成分の総量が、1kg中1g以上
3)CO2、NaHCO3、H+、硫黄など17成分のいずれかが所定の含有量を越える
の三つの条件のうちのいずれか一つを満たすということである。そして25℃未満は冷鉱泉、25℃以上34℃未満は低温泉、34℃以上42℃未満であれば、温泉と区別されている。したがって、温度だけでいえば25℃以上を温泉といい、25℃未満であっても特定の成分を含んでいるものは冷泉あるいは鉱泉と呼ばれる。また、42℃以上の温度のものを高温泉と呼んで区別することがある。
この温泉を、温度以外では、その成立形態によって、①自噴水:自然に湧出する、②沸騰泉:泉水が沸騰して水蒸気とともに噴出する、③間欠泉:一定の時間的間隔をおいて自噴する、④汲み上げ泉、⑤人工的温泉:掘削や揚水、保温などによって人工的につくる、に分類することができる。
また、温度とその成分からは、①単純温泉、②食塩泉、③硫黄泉、④炭酸泉、⑤鉄泉、⑥ラジウム泉に、温泉の起源からは、①有馬型、②グリーンタフ型、③海岸型、④火山型などと区分することができる。(新版地学事典 1996 平凡社)
とくに、温泉は第四紀の火山活動地帯と一致するものが多く、日本は世界でも最も温泉が多く、また利用されている場所は、全国に2,000か所以上ある。温度の高い温泉が多いために、入浴用に利用され、日本では観光地の条件の一つとして、毎年掘削されて、その数は増加している。また入浴や飲用以外にも、その熱を活用して、施設園芸や養魚、噴出蒸気による発電なども行われている。
京都府内の温泉は、1964年の『京都府鑛泉誌』、続いて1984年度の『京都府温泉誌』においてその全体像がまとめられており、現在は111の温泉(含む鉱泉)があることが分っており、掘削によって毎年、その数は増加している。ただし、過去から公には利用されていないためにリスト化されていない温泉や、かつての利用はあったものの、現在は利用されていない温泉、あるいは現在はその位置がわからなくなっているものなどもあり、実体は明らかではない部分もある。
リストには、掘削を除き、自然な状態で湧き出している温泉(鉱泉)をあげた。
鳴き砂
歩くと微妙な音を出す砂浜が全国の各地にあり、鳴き砂の浜と呼ばれている。この「鳴き砂」は石英の砂の面が強く擦りあわさることで音が出るものであり、50%程度の石英が混じった均質な石英の砂浜であれば、どこでも鳴き砂の浜になるはずの現象であるといわれている。しかし現実には、海水の汚染や汚濁物質、懸濁物質等が混ざることで鳴き砂の浜は全国的にもごく少なくなっており、問題となっている。
京都府内の砂浜でも過去には各所に鳴き砂があった可能性は高いが、現在では京丹後市網野町の「琴引浜」が代表的な鳴き砂の浜となっている。琴引浜の鳴き砂は古くから知られており、すでにおよそ200年ほど前に書かれた「丹哥府志」*という地誌に『太鼓濱前後六七丁の間、足をひいて砂を磨る其聲涓然として微妙の音あり、羅状元の金微巧奏蝉聲細玉 輕調鶴管清といふ一聯を急歩緩歩の間に記し得たり、實に天地の無絃琴なり』とあり、急いで歩いたり、ゆっくり歩いたりすれば音階が出て、琴の音がする。これこそ自然が作りだした弦のない琴だ、と絶賛する記述がある。琴引浜は環境省の「残したい日本の音風景百選」や「日本の渚百選」等にも選ばれている。しかし海岸の汚染や海のゴミの増加等に伴って、鳴き砂の音の保存が問題となり、「琴引浜の鳴き砂を守る会」が結成され、また「全国鳴き砂サミット」等とともに、活動を行なっている。なお、網野町に「美しいふるさとづくり条例」が設置され、琴引浜では、1998年からは禁煙となっている。2007年に国の天然記念物・名勝に指定された。
*丹哥府志:丹哥は丹後の意味。宝暦11(1761)年、宮津藩主の命を受けて小林玄章は「宮津府志」を編纂、宝暦13(1763)年に完成したが、地域を丹後全域に広めた地誌(あるいは図会)の編纂を志し、子の之保、孫の之原が引き継ぎ、80年後の天保12(1841)年に完成したもの。原本の所在不明。藩に保存されていた写本を元に下記の活字本およびその復刻本が刊行されている。上記の『 』は復刻本からの引用。
【活字本】小林玄章(編)、小林之原(册補)、佐藤正持(描画)、永濱宇平(校訂)「丹哥府志」丹後郷土史料集第1輯、竜灯社出版部 1938
【復刻本】同上 臨川書店 1985
地下水(湧き水)
地球は水の惑星と呼ばれているが、実はその水の大部分は海水であり、人間の立場でいえば生活用水や飲料水等として簡単に利用することはできない。地球上の水の中の淡水の割合は約2.5%であり、またその淡水の中の約70%は両極の氷である。したがって利用可能な淡水の量は地球の水のうちの0.75%程度であり、その96%は地下水として存在している。そして、この地下水を利用するために、井戸を掘る場合と、地下水の一部が地表に湧き出した湧水がある。
この地下水は、陸地の堆積物の粒子の間のすき間や岩石の割れ目などに存在しているものである。狭義には地下水とは循環水を指しており、雨水や地表水が地下に染み込んで存在し、長い時間をかけて地中を移動し、河川や湖沼、海などに流出するという水の循環をなすものである。このほか、その成因からは、処女水あるいはマグマ水と呼ばれ、地殻の内部で生成されるもの、化石水と呼ばれる油田や天然ガス田のかん水などのような、地層の形成と同時に閉じ込められた水がある。
地下水は人間にとっては飲料水として貴重なものであり、湧き水を利用したり、井戸を掘って利用したりしている。とくに雨の少ない季節でも地下水はほとんど変わらず流れており、また地下にあるために様々な汚染に見舞われることも少ないので、地表水が豊富な場所でも飲料水としては地下水が利用される。
しかし、1950年代後半から、大量の地下水を工業的に利用するために地盤沈下を引き起こしたり、農林業における害虫駆除薬、化学肥料の利用や、諸排水の地下への浸透が化学物質等による地下水汚染を起こしており、地下水利用についての課題となっている。
京都府では地下水質の維持をはかるために計画に基づいた水質測定を行っており、またいっぽうで、おいしい水への要望等から府内各地の湧き水には、水を汲む人の列ができるような状態になっている場所もある。
水質汚染の問題は地下水だけでなく、河川、湖沼などの陸水、海水も同様に、人類にとっても、生物にとっても自然界では重要な問題で無視できないが、レッドデータブックとして取り上げるには限界があり、むしろ環境白書の中で取り上げられる方が適当であろうと思われる。
霧
空中に浮かんだ無数の微小な水滴の集りであり、地近くにできた雲ということができる。微小な水滴による乱反射と吸収のために見通しが悪くなり、便宜上、視が1km以下のものを霧、それ以上のものを靄(もや)呼んでいる。またマイナス20℃以下になると水滴が凍って細かい氷晶が浮かんだ状態となり、これを氷霧と呼んでいる。
その原因には、①放射霧:夜間に地面が放射冷で温度が下がり、それに接した空気中に生じる、②気霧:空気よりも暖かい雨または暖かい水面からの蒸によって生じる、③混合霧:暖かい水面上に冷たい気が流れ込んできて、水面上の暖かい空気と混合して発生する、④前線霧:前線の近くで天気が悪くなる時に発生する、⑤滑昇霧:風が山麓から山腹に沿って吹き登る時に断熱冷却によって発生する、⑥移流霧:暖かくて湿った空気が冷たい地面や海面に触れて発生する、といったものがあり、その発生する場所によって山霧、川霧、海霧、盆地霧、沿岸霧などがあり、また発生する時刻によって朝霧、夕霧などと区別している。
いずれにしても、暖かく、水分の多い空気が冷たいものに触れたり、その水分が凝結して微小な水滴となるが原因である。
また近年は水蒸気の凝結だけではなく、煙突などか発生する塵挨などの大気汚染物質が視界を悪くしたりあるいはその塵挨が凝結核になって霧を発生するということが起こり問題となっている このように霧は本来は純粋な気象現象であるが、地形や海流などが原因となっても起こるために、各地に霧が起こりやすい場所ができる。
雲海
層積雲や積雲が低くたなびいた時に、高山から斜に見下ろすと、雲が重なりあって、水平線までが一面に雲に埋めつくされたように見える状態を雲海という。雲海を下から見ると一面に雲が広がっているわけではなく、雲の合間に青空が見える場合もある。大気の下層の湿度が高く、上空2km付近に逆転層が存在する場合に発生する。
京都府では、福知山市三岳山や舞鶴湾などが比較的によく発生する場所として知られている。
風穴
粘性の低い玄武岩質溶岩流の内部に固化した横穴状の空洞で、火山の溶岩が流出する時に、その外側は早くに冷えて固まるが、内側は高温で流れ続けて、その部分が抜けて空洞となったものを、熔岩トンネル、あるいはその規模の小さいものを熔岩チューブと呼ぶ。また、鍾乳洞を指している場合もある。
冬季に凍った熔岩トンネルの中の氷は、気温の変化があまりないために一年中融けない場合があり、トンネル内から冷たい風が吹き出す。また岩塊が積み重なった隙間や空洞を満たす空気の温度と外気温の差から、涼しい風が吹き出しているような場所を風穴と呼んでいる例も日本各地にある。
京都府では与謝郡伊根町の安山岩地域と、古生層の分布地域になる船井郡京丹波町質志の鍾乳洞とが知られている。
活断層と地震断層
断層は地層や岩体の中に発達した断裂のことで、その断裂面を挟んで地層や岩体が相対的に移動している場合をいう。それらのうち、今から約258万年前から現在に至る第四紀、とくにその後期に繰り返し運動し、地層や岩体が変位してきた証拠があり、今後も活動する可能性があるものを活断層という。断層の活動には地震がともなうことが多い。第四紀更新世後期は日本列島では現在のプレートテクトニクスによる地殻変形の様式がはじまった時代であり、個々の活断層の運動した履歴を調査し、運動の時期やその大きさの周期性を知ることは、地震の予測に役立つと考えられている。京都府内でこれまでによく知られている活断層としては、比叡山東麓をほぼ南北に走る「比叡断層」、醍醐山地西麓を南北に走る「黄檗断層」、丹波山地と比良山地を分ける渓谷に沿って南北に走り、京都・東山の西麓に延びる「花折断層」がある。これら活断層の露頭は大規模な土木工事の際、見られることがあるが、普通は土壌や植生によっておおわれて見ることができないので、自然現象としてはリストに挙げていない。
地震の際に地表に変位を表した断層は、地震断層といわれる。府内では、1927年3月7日に発生した北丹後地震の際に地表に現れた「郷村断層(国指定天然記念物)」と「山田断層」が知られている。郷村断層は、京丹後市網野町浅茂川―中郡大宮町、北北西~南南東に断続し、全長約18km(そのうち網野町郷を通る一つのセグメントが狭義の郷村断層)。断層崖のよく保存されている「高橋断層」、断層運動にともなう摩擦により生じた鏡肌をよく残している「生野内断層」は、いずれも郷村断層の一部である。山田断層は与謝郡野田川町から岩滝町へ西南西~東北東に断続し、全長約7.5kmの断層で、トレンチによってその変位が確認されているが、現在地表では不明瞭である。
郷村断層は、樋口地区、小池地区、生野内地区の3か所で国指定天然記念物として保護されている。
執筆者 京都橘女子大学名誉教授 千地万造
※2002年版レッドデータブックに掲載した故・千地万造先生の原稿に、補筆のうえ再録させていただきました。
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