コイ目 コイ科
イチモンジタナゴ
京都府カテゴリー | 絶滅寸前種 |
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2002年版 | 絶滅寸前種 2002年版を参照する |
環境省カテゴリー | 絶滅危惧ⅠA類(CR) |
京都方言 | ボテ(混称) |
選定理由 | 全国的に個体数が減少している。府内では、平安神宮神苑の池と淀川水系の一部に局在するのみで、平安神宮神苑の池では、近年、個体数が激減している。 |
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形態 | 体長は5~7cmで、オスはメスよりも大型になる。側線は完全で、1対の短い口ひげを持つ。日本産のタナゴ類の中では比較的体高が低く、体側には肩部の点からはじまる緑青色の縦帯がある。 ◎近似種との比較 体側縦帯の前端が肩部の暗色斑に達することで、近似種のタナゴA. melanogaster やタビラ類A. tabira subspp. と区別できる。 |
分布 | 日本固有種で、濃尾平野、琵琶湖・淀川水系、三方湖、紀ノ川などに分布する。また、山陽地方、九州北西部などに移殖されている。 ◎府内の分布区域 かつては府内を流れる琵琶湖・淀川水系の各河川に広く分布したが、現在は、平安神宮神苑の池、淀川水系の一部に局在するに過ぎない。 |
生態的特性 | 平野部の浅い湖沼や池、これらにつながる用水路、河川敷内のワンドなど、泥底または砂泥底の水草の繁茂する流れの緩やかな浅所を好む。雑食性で、付着藻類や水生の小動物を摂餌する。産卵期は3~7月で、ドブガイ類などのイシガイ科二枚貝の鰓腔内に産卵する。 |
生息地の現状 | 平安神宮神苑の池では、オオクチバスなどの外来魚の侵入以前に浄化装置が設置されていたため、琵琶湖疏水からの外来魚の侵入は防がれている。しかし、近年、池底に有機物が堆積し、底質環境が悪化したことによって産卵母貝となるマルドブガイが激減し、それに伴って本種の個体数も明らかに減少している。 |
生存に対する脅威 | 圃場整備や河川改修による生息場所の減少、肉食性外来魚による食害、産卵母貝の減少および飼育目的による乱獲が本種の生存に脅威を与えると考えられる。また、外来種のタイリクバラタナゴとの間で餌や産卵基質をめぐる競合が懸念される。 |
必要な保全対策 | 近年、平安神宮神苑の池では、産卵母貝のマルドブガイが激減し、本種の存続が危ぶまれている。マルドブガイの安定した増殖を目指し、堆積した有機物の除去を行うなどの対策が望まれる。また、府内で新たに本種の生息が確認された場合には、水質モニタリング、肉食性外来魚からの隔離、飼育目的での乱獲の防止、河川等改修方法の検討などの配慮が求められる。 |
その他 | 日本固有種 |
文献 近藤(1932)、宮地(1935)、長田(1977)、中村(1969)
執筆者 山野ひとみ