5.終宿主は? 生活環は? | ||
本吸虫のメタセルカリアが寄生したオイカワおよびコウライモロコは、第二中間宿主であり、生活環の中で謎として残るのは成虫が寄生する終宿主のみとなりました。終宿主は通常魚食性の魚種です。そこで、宇治川の天瀬ダム下流域に生息する魚食性魚類4種(ニゴイ、ビワコオオナマズ、ナマズ、オオクチバス)等の消化管における寄生虫検査を行いました。その結果、検査対象とした4尾のビワコオオナマズのすべての直腸から多数(数百〜数千虫体)の腹口類成熟成虫が見つかりました。ナマズ1尾とオオクチバス7尾中1尾の直腸からは少数の未成熟成虫が見つかりましたが、メタセルカリアからほとんど発育していませんでした。魚食性のニゴイやギギ、ブルーギルの消化管からは何も見つかりませんでした。 以上のことから、ビワコオオナマズが本腹口類の終宿主であることが判明しました。ナマズとオオクチバスは、終宿主であると推定はできず、今後の検討が必要と考えられました。
宇治川における本腹口類吸虫の生活環は、概略以下のようになります(図1)。
ビワコオオナマズの直腸に寄生した成虫から卵が生み出され、水中で卵から孵化したミラキディウム幼生がカワヒバリガイの体内に侵入し、寄生します。カワヒバリガイの体内で無性的に増殖して、スポロシストになり、更にスポロシスト内で増殖して多数のセルカリアを形成します。これらが成熟すると、第一中間宿主からセルカリアが泳出して、第二中間宿主であるオイカワやコウライモロコの体表から侵入し筋肉中や鰭の軟状内で被嚢し、メタセルカリアに変態します。メタセルカリアの寄生したオイカワやコウライモロコをビワコオオナマズが食べて、感染します。消化管を通過し、脱嚢したメタセルカリアは直腸に到着して、成長、成熟して成虫となります。
以上のように、宇治川では腹口類吸虫の生活環が完全に成立して定着、増殖していると考えられました。
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