2)株を移植して増殖する方法
株を移植して増殖する検討は、図7の舞鶴湾の西湾と東湾の真ん中あたりに位置する通
称「牛渡し西」に、水産事務所の事業で水深0.5〜1.5mの海域のほぼ200uのアサリ漁場が造成され、この造成された海域でアマモの株を2ヶ月毎に10〜20本の栄養株を移植して生育状況をみていきました。2月は岸側(水深0.5〜1.0m)と沖側(水深0.8〜1.5m)、4月は沖側(水深1〜1.5m)と造成場外の水深1.5mの小石混じりの砂場(砂礫場)に株を移植しました。6、8、10、12月までは沖側(水深1〜1.5m)に移植しました。図8は時期及び場所別の移植した株の状況や生長などを調査した結果です。2月に移植した株のうち、沖側に移植した株は7月までは80%の株が残っていました。岸側に移植した株はかなりの株が流出し、7月には20%が残りました。4月に移植した株のうち、沖側に移植した株は7月までは70%が残っていました。造
成域外に移植した株は移植した翌日から流出し、7月まで残りませんでした。6月に沖側に移植した株も翌月までにアマモの多くが流出してしまい、急激に減少しました。8月に移植した株は翌年4月には60%、10月に移植した株は翌年4月には40%が残っていました。12月に移植した株は4月まで流出することなく、全ての株が残っていました。また、移植した株を沖側と岸側で比べてみた場合、岸側の方が流出が多い傾向がみられました。岸側で流出が多かったのは、舞鶴湾では秋から春先にかけては平均潮位が下がるためであり、そのことでアマモが波浪の影響を受け、流出すると考えられます。日本海は秋から春先にかけて潮位の低下することから、株を移植する場合は事前に秋から春先にかけて移植する場所の潮位をよく調べ、波浪の影響を避けるため、潮位が低下する時期に水深1m以上の場所に移植する必要があります。また、今回は造成域外に移植した株は流出しましたが、移植した場所の底質を比べてみると、造成海域の底質は砂質、造成域外は礫(れき)分の多い砂礫(されき)場で、移植した株を十分に固定できる支持基盤(底質)に違いがみられました。造成海域外は砂礫場という株を支える基盤が脆弱(ぜいじゃく)であったため、海況の変化に株が耐えることなく流出したと思われます。また、6〜10月に移植した株は流出したものが多くなりましたが、アマモは水温が23℃以上から最高水温を経て23℃に下降する6月から9月までの期間が葉の枯死、流出による衰退時期にあたることから、この時期に移植した株は残るものが少なかったと考えられます。 図9は時期や場所別の移植した株の株分かれの状況を調査した結果です。2月に移植した株は4月から株が増殖して分かれる様子が観察され、7月に株分かれが最も盛ん
になりました。4月に沖側に移植した株は2月に移植した株ほど株は分かれませんでした。また、造成域外に移植した株は株分かれはありませんでした。6月に移植した株はあまり株分かれはありませんでした。また、8,10月に移植した株も株分かれはそれほど多くはありませんでした。しかし、12月に移植した株は翌月には移植した株の80%で株分けが活発に行われ、移植した株の中では最も株分けが多くなりました。天然のアマモも11月〜2月に株分かれが盛んになることから、移植した株も同様に株分かれが起こったとみられます。
移植した株のうち、2月と4月に移植した株は生殖株がみられましたが、6,8,10,12月に移植した株からは生殖株はみられませんでした。
株移植による増殖方法をまとめると次のようになります。
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