4.水ガニをどう漁獲すれば良いのか
(1) 水ガニの漁獲の仕方
「水ガニ」を効果的に漁獲するには、どうすれば良いのでしょうか。一般に、漁獲量や漁獲金額を増やしたり、減らしたりするには、漁獲する魚の大きさや漁獲する強度をコントロールします。このことを「水ガニ」に当てはめ、模擬計算をしてみます。
図5に漁獲金額の模擬計算の結果の概要を示しました。図中の黒丸が現状です。現状よりも漁獲金額を増やそうと思えば、漁獲開始サイズを大きくし、漁獲の強度を弱くする必要があります。逆に、漁獲開始サイズを小さくし、漁獲の強度を強くすると、漁獲金額は現状よりも減ってしまいます。
また、同じコントロールをしたときに、「交尾2」の能力を持つ雄ガニの生残り尾数がどう変化するのかを計算してみます。不足している雄ガニを増加させる方向は、漁獲開始サイズを大きくし、漁獲の強度を弱くすることにあります。これは、漁獲金額を増やす方向と全く同じです(図6)。
すなわち、この方向が上述した問題点を解決する突破口になると考えられます。
(2) 具体的な方策の提言
漁獲開始サイズを大きくすることは、誰にでも容易に理解することができます。すなわち、現在の甲幅9cmを例えば10
cm、11 cmにすることを意味します。
漁獲の強度を弱くすることには、いくつかの方法があります。例えば、漁船隻数を減らす、漁船規模や漁具を小さくする、操業回数を減らす等々。「水ガニ」の場合では、現状の漁業の実態を考慮すると、漁期を短縮することが最も適当と考えられます。
「水ガニ」が解禁となる12月下旬から1月中の平均単価は、その後の漁期後半の単価に比べ全体的に低い傾向にあります(図7)。これにはいくつかの理由が考えられますが、最も直接的なのは「水ガニ」の質的な動向にあると思われます。すなわち、漁期が進むにつれて、脱皮からの経過時間が長くなるので、甲羅は徐々に硬くなり、身入りも良くなるということです。
このことから、漁期全体を短縮するときには、「水ガニ」の解禁日を現状よりもさらに遅く設定することが有効と考えられます。
(3) 漁獲制限を実施したときの漁獲金額の推移
当面の目標として、現状の漁獲開始サイズ甲幅9cmと解禁日12月21日を、それぞれ甲幅10
cm、1月10日としたときに、漁獲金額がどう変化するのかを3つのパターンで計算しました(図8)。計算は現状の漁獲開始サイズ、解禁日のときの漁獲金額を1としたときの相対値となっています。
いずれの項目も管理を開始した年の漁獲金額は、現状に比べ5%前後減少します。しかし、2年目からは現状と同等もしくは増加することが分かります。4〜5年後には、「管理1」では現状の約1.4倍、「管理2」では約1.3倍、「管理3」では約1.1倍に増加すると考えられます。
また、ここでは詳しくは述べませんが、以上のような管理を実践することにより、先に述べた「交尾2」の能力を有する雄ガニが増加することが分かっています。「水ガニ」の漁獲開始サイズを大きくしたり、漁期を短縮するということは、漁獲金額の増大が期待されるだけではなく、再生産にとっても効果的な方策となります。
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