3 実験から推測したアサリ資源の変化
(1)分 布
9月の時点では、アサリは水深1m帯と水深2m帯に多く分布しており、その うち初期稚貝だけに限りますと水深5mまでと比較的広い範囲に分布しています。これが後期稚貝になりますと水深3mまでの分布になり、さらに成貝ではほぼ水深1m帯に限って分布しています。
次に11月のアサリの分布をみてみますと、水深1m帯では9月と同様に多く 分布していますが、それ以外の水深帯では初期稚貝から成貝まで急に分布密度が減少しているのが分かりました。
これらのことから、舞鶴湾におけるアサリでは、初期稚貝は水深5mまで分 布しますが、その後成長するのに従って深い方に分布しなくなり、特に成貝は水深1m帯を中心とした浅場にだけ分布するようになること、また、9月から11月の間に水深1m以外の水深帯では、何らかの原因でアサリが急にいなくなることが分かりました。
(2)移 動
1他の水深帯から水深1m帯にアサリ自体が移動した。
2波浪や潮流等の外部からの物理的な力によってアサリが水深1m帯に移動さ せられた。水深1m帯以外の水深でアサリに何らかの減耗要因が働いた。
このうちアサリの移動では、水深1m、2m及び3mに殻長10mmサイズ、20mmサイズ及び30mmサイズのアサリの一定量に標識をして放流し、その3〜4カ月後にどの程度アサリが移動したのかについて調べました(図8)。
その結果、アサリ自体が移動する距離は、放流点から3m以内とあまり大き くないことが分かりました。また、アサリが波浪等の他の物理的な力により移動させられているのかどうかも死殻の分布状況から調査しましたところ、舞鶴湾ではその可能性はほとんどないことが分かりました。
すなわち、舞鶴湾においてアサリが水深1m帯を中心にした浅場にしか分布 しない理由というのは、どうもアサリが移動したのではなく、水深1m帯以外の水深で何らかの減耗要因が働いているからということになりそうです。
(3)減 耗
網を被せたコンテナの場合は、水深に関係なくアサリは高い比率(92〜98%)で生き残っていました。網を被せないコンテナの場合は、水深1mに設置したものでは100%生き残っていましたが、水深2m及び3mでは、水深が深くなるほど生き残りが悪くなっていました。コンテナを使用しないで放流した場合には、各水深帯ともの場合よりさらにアサリの生き残りが悪くなりました。上記のことを整理しますと、舞鶴湾においては、主として害敵生物によって捕食を受けることによりアサリが減耗しており、捕食の程度は水深1m帯では小さく、2m、3mと深くなるほど大きくなっているということです。つまり、舞鶴湾におけるアサリの分布の特徴は害敵生物によるアサリの捕食程度が水深帯によって相違しているためであると考えられます。なお、この実験を通じて得られたアサリの死殻を詳細に調べてみますと、冬から春に出現する死殻には損傷は見られなかったものの、夏から秋にかけて出現した死殻の一部には穴のあいたのや、割られたものがみられるなど、季節によってアサリを捕食する害敵生物の種類の違うことが伺われました。 (4)害敵生物 なお、これまでに述べきたような害敵生物に由来するアサリの水深帯ごとの 減耗パタ−ンを把握できたことにより、今後これらを応用した、アサリ増殖のためのより効果的な漁場造成が可能になると考えられます。
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