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波が穏やかな春の丹後の海には、様々な魚の稚魚が泳いでいます。その中に大きさ数センチのひときわ目を引く変わった形の魚がいます。キアンコウの稚魚です。アンコウと言えば、こげ茶色の平らな体に大きな口で深い海の底に棲んでいるイメージがありますから、一目見てそれと気づく人は少ないのではないでしょうか。
半透明の体や大きな鰭、そして長く伸びるリボンのような軟条は優雅に見えますが、その大きな胸鰭を動かしてアップアップと不器用に泳ぐ様子は実にユーモラスです。
キアンコウは稚魚の間は海面近くで暮らしていますが、形や色が徐々に成魚に近くなると海底に降りて、成魚と同じ深い所での生活に入ります。春の天気の良い日に漁港を散策していれば、この不思議な姿に出会えるかも知れません。
(平成23年10月27日 上野 陽一郎)
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