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※2023年5月26日に「サル痘」から「エムポックス」に感染症法上の名称が変更されました。
エムポックスはオルソポックスウイルス属のモンキーポックスウイルス(別名:エムポックスウイルス)による感染症で、同じオルソポックスウイルス属には天然痘(痘そう)ウイルスなども含まれます。国内では感染症法上の4類感染症に指定されています。コンゴ盆地型(クレード1.a及び1.b)と西アフリカ型(クレード2.a及び2.b)の2系統が存在します。
エムポックスは1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて報告されて以降、アフリカ東~中央部(クレード1.)および西部(クレード2.)の人々の間で感染がみられ、当時の患者は15歳以下の子どもの割合が多くみられていました。
2022年5月以降、クレード2.bが世界的に流行し、WHOは同年7月に国際的な公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を宣言しました。2023年5月に宣言は解除されましたが、2023年3月以降東アジア、東南アジアなどからの報告が増加し、国内でも、2022年7月に1例目の患者が確認され、京都府でも2024年7月に初めて患者の届出がありました。
それらとは別に、2023年秋以降、コンゴ民主共和国でクレード1.a及び1.bが流行しました。クレード1.bは感染者との密着により感染し、感染者は主に成人で、主に性交渉を介して他の集団へと拡大しています。2024年7月にコンゴ民主共和国に隣接した国々への感染拡大を受け、8月WHOは再度PHEICを宣言しましたが、2025年9月に終了宣言が行われました。
▶エムポックスに関する関係省庁対策会議第3回資料(外部リンク)
アフリカに生息するリス等のげっ歯類をはじめ、サルやウサギ等ウイルスを保有する動物との接触により感染する可能性があります。また、感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む)、患者との接近した対面での飛沫への長時間暴露、患者が使用した寝具等の接触により感染の可能性があります。
空気感染を起こした事例は確認されていません。
潜伏期間は5~21日(通常6~13日)で、発熱・頭痛・リンパ節腫脹などの症状が0-5日程度持続し、発熱の1-3日後に発疹が出現します。多くの場合2-4週間持続し自然軽快するものの、小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがあります。
適切な支持療法を行うことで、クレード1.aの死亡率は1.4-1.7%、クレード1.bで1%以下になり、2022年以降のクレード2.bの流行における死亡率は0.3%と報告されています。
治療の基本は、補液などの支持療法と疼痛コントロールです。国内では抗ウイルス薬のテコビリマットが薬事承認され、特定臨床研究が実施されています。
発熱、皮疹等がありエムポックスが疑われる患者には、標準予防策(マスク着用・咳エチケット・手指衛生)を基本とし、患者が使用したリネン類や衣類は直接的な接触を避けます。エムポックスウイルスの主な感染経路は接触感染や飛沫感染です。しかし水痘、麻疹等の空気感染を起こす感染症が鑑別診断に入ること、エムポックスウイルスに関する知見は限定的であること、入院中の免疫不全者における重症化リスク等を考慮し、現時点では、医療機関内では空気予防策の実施が推奨されます。
天然痘ワクチンによって約85%発症予防効果があると言われています(FinePE,1988)。
2024年7月にクレード1.bが同定されて以降、現在も新たな知見が随時発表されています。最新の知見については、国立感染症研究所等の関連文章をご参照ください。