京の景観形成推進プラン
1 プラン策定の趣旨
- 先史から、古墳などの遺跡も多く、平城京から恭仁宮、長岡京、平安京へと至る遷都とともに日本の歴史舞台の中心であった京都府は、山地と盆地が織りなす自然環境を基礎に、府内及び近隣府県を緊密に結ぶ街道や豊かな水系に支えられ、各地の景観はこれらの自然環境や人の営みとの関わりの中で育まれてきました。
- また、古くから営々と耕作されてきた農地や手入れされてきた山林、長い歴史をしのばせる建築物、社寺及び町家など、特色ある街並みが数多く残されており、こうした歴史、文化によって醸成された景観が、悠久の時間を経て、現在も各地で継承・発展を遂げ、今の京都府を形づくる骨格となっています。
- さらには、古代より多くの文人墨客が訪れ、和歌や絵画で表現された情景は、地域共通の文化に、ひいては日本を代表する景観に育っていきました。
- しかし、日本の近代化、とりわけ戦後の復興やその後の高度経済成長は、利便性・合理性を追求する近代化の流れの中、技術革新や経済産業の発達を遂げ、私たちにものの豊かさと便利な社会生活をもたらしましたが、生活スタイルの変化や生業環境の変化により、身近な景観を一変させるとともに、里山や農山漁村等の文化としての景観を失わせつつあります。
- 一方、道路、河川等の社会基盤は、引き続き整備を行う必要があるものの、これまでの高度成長期のような「都市化社会」から、安定成熟した「都市型社会」が到来する中で、多様な価値観を模索する新しい時代を迎えて、安心・安全との調和を図りつつ、美しさなど質に対する配慮についての要請が高まっているといえます。
- 地方分権時代へと移行する中、地方自治体には地域特性に応じた独自の取組が求められており、価値観の多様化や地域個性に対応した多様な施策展開により、各地域の特性を活かし、魅力を発信していくことが一層重要となってきています。
- 歴史・文化に裏打ちされた良好な景観の形成は、ふるさと意識が希薄化する現代において、「府民」としてのアイデンティティーを自覚して、再確立し、21世紀の国際社会の中で誇りを持って生きていく上で、その精神の柱となるものと考えます。
- 「景観は公共的資産」であるという認識のもと、それぞれの場所のもつ空間的、歴史的な背景や文脈を十分に読み解きつつ、先人から受け継いだ京都府の美しい景観を保全し、育成し、あるいは新たに創造して、次の世代に引き継いでいく必要があります。
- こういった「景観」に対する基本認識のもと、国による景観法の制定などを踏まえ、京都の歴史や多様な地域個性を活かし、環境と文化の共生による地域づくりを進めるため、本プランを策定し、地域の活性化に繋がる、また、府民や市町村との連携による実効性のある景観形成施策を推進するものです。
2 現状と課題
(1)府の特徴ある景観の再生
- 豊かな自然を有する田園部を通過する道路沿道や観光地における過剰な看板広告や自己主張の強い建築物、あるいは伝統的集落や旧街道における不調和な近代建築の出現や歴史的建造物の滅失、電柱・電線類の乱立による景観の混乱など、身近な景観が大きく変化しています。
- また、一部の農山漁村においては、過疎化や高齢化による生業の維持が困難なため、あるいは、地域の生活様式を支える技術者の減少等により、文化としての景観が失われつつあります。
- これまでのまちづくりにおいて、経済性や効率性、機能性を重視したため、このような長い歴史を経て育まれてきた特色ある景観の変質や美しさへの配慮を欠いた雑然とした景観や無個性・画一的な景観が各地で見られます。地域特性を踏まえた広範な議論によりこれらを再点検・再確認し、具体的取組を進める必要があります。
(2)府民意識の醸成と価値観の共有
- ゴミや空き缶の投げすて、不法駐輪など社会的なモラルの低下により身近なまちの景観が悪化しています。
- また、良好な景観を有する地域においても、住民間で価値観が共有されていないことにより、その景観を守り育てる府民活動として現れず、歴史的街並みや農林水産業などの生業と人の生活により形成されてきた景観の維持が困難な地域があります。
- 良好な景観形成にあたっては、行政及び事業者を含め、府民一人ひとりが自分たちが住み、働く地域の景観や歴史、文化などの魅力に気付き、地域の誇りとしての価値観を共有することが必要です。
(3)まちづくり活動としての総合的、継続的取り組み
- 人々の生活や文化活動、生業としての経済活動の有り様が、景観として映し出されることから、各主体の日常のまちづくり活動が直接的・間接的に地域の景観形成に繋がっていることを認識し行動することが重要です。
- 良好な景観形成の推進は、行政、府民及び事業者の参加と協働を基本とし、まちづくりや観光施策と連携した、総合的、持続的な取り組みを促進するとともに、地域の景観づくりへの思いを支援する仕組みが必要です。
(4)法律等の景観関連制度の活用
- これまでも都市計画や建築関連制度において、高度地区や地区計画等により直接的、間接的に良好な景観を誘導してきましたが、建築基準法など全国一律の制度が個性的な景観形成を阻害してきた面もあり、さらに、国民的景観保全のニーズの高まりの一方で近年の規制緩和との整合性の確保の問題もあります。
- 美観地区(現景観地区)や風致地区は、他府県に比べ京都府では広く指定されてきましたが、特徴的な地域への指定にとどまっているといえ、地域の特色を活かせる景観法など法制度の活用方策検討が必要です。
(5)行政システム、体制の充実
- 地域の景観は、家並みだけではなく、山、農地、水面等の自然、そして人の生活等によって成り立ち、これら相互の繋がりや関係が重要です。
- これまで、京都府においても個々の施策や施設整備において、それぞれ景観配慮についての検討は行ってきましたが、地域景観としての総合的マネジメントやフォローアップなどの継続的取組は十分になされてきていません。
- 府域の景観形成の方向性の提示や、地域特性を踏まえ景観を総合的にマネジメントする体制づくりとともに、景観の質的向上を誘導する専門機能の導入が必要です。
3 施策の基本方向
(1)各主体の役割と協働
府内の良好な景観形成を推進するに当たっては、景観づくりに関わる全ての主体がそれぞれの役割を認識しつつ、参加・協働により主体的かつ継続的に取組を進めることが必要です。
京都府の役割
- 京都府域における景観形成の基本的方向を提示した上で、市町村域や府県域を超える街道、水辺、緑などの広域的広がりや繋がりを有する地域における景観形成を推進するとともに、京都府を代表する又は特徴を持った地域や資源を活かした良好な景観形成を推進します。
- 多くの市町村が景観行政団体となり主体的に景観施策を進めることができるよう支援するとともに、府民及び事業者等による主体的かつ自律的取組が促進されるよう意識啓発や支援活動を行います。
- 公共施設管理者として、広域的景観の骨格づくりを推進するとともに、地域の特性に応じて良好な景観形成の先導的役割を果たします。
市町村の役割
- 身近な景観形成に当たっては、地域特性に応じたきめ細やかな取組が必要であり、府民に最も近い基礎的自治体である市町村が担うべきであり、景観法に基づく景観行政団体となり、主体的に景観行政を担うことが望まれます。
- 府民の意向を十分に把握し、地域の個性を尊重しつつ、府の施策との連携を図りながら、地域の特性に応じた景観まちづくりの施策を推進する役割を担います。
府民、NPO等及び事業者の役割
- 地域の景観形成に当たっては、身近な景観づくりの担い手である府民やNPO等のまちづくり団体等が、自らの街や故郷を魅力あるものにする意欲と情熱を持ち、かつ、主体的、自律的な活動を行うことが不可欠です。
- また、すべての事業者は、地域社会の一員として、土地の利用等の事業活動について景観に配慮するとともに、良好な景観形成に寄与することが求められます。特に、建築、開発、広告、電気通信等の事業者は、その事業活動が景観への大きな影響を与えることを認識しつつ、配慮と積極的な景観づくりを実施すべきです。
- 府民、NPO等の市民活動団体及び事業者は、自らのまちの景観について考え、主体的に参加し、活動するとともに、行政が行う施策に積極的に参加、協働する役割を果たします。
「景観まちづくり」とは…
地域の自然、歴史及び文化特性を活かした良好な景観を、府民の智恵と力を合わせ、守り、育て、あるいは新たに創造することにより、地域が賑わい又は安らぐ環境づくり活動を、「景観まちづくり」と定義します。
また、「まちづくり活動」を通じて、地域で共有できる価値観を見いだしていく過程の重要性を表すものでもあります。
(2)3つの視座(景観形成に当たっての基本的視点)
良好な景観形成のためには、視覚的な価値ばかりではなく、空間的及び精神的な他者との繋がりを考えることや、持続的に景観が維持され創造されていく仕組みが不可欠です。
景観形成の推進に当たっては、以下の3つの視座を大切にします。
先人の営みを育て将来に引き継ぐ視座
- 府内各地においては、各時代の資産や、自然と歴史、人々の生業と生活により織りなされた景観が、時代を超えて生き続けています。
- 先代から受け取ったものを継承し、各世代の価値観に基づく成果を付け加え又は修復することにより良好な景観を育成し、次の世代に引き継いでいく中で京の景観をより魅力あるものとして発展させていくことが必要です。
総合的空間として景観を捉える視座
- 農地、林地や建物、公共施設、自然などの景観を構成する要素は多様であり、景観全体を見る視点が重要です。それぞれの個別の外見のみを考えていては、調和のとれた景観は形成されません。
- 人の生活や生業、さらには歴史、文化及び環境等との関係も踏まえつつ、地域の景観を総合的空間として捉えることが必要です。
生活・生業・交流に景観を活かし維持・創造する視座
- 府内各地においては、地形条件などの自然環境、歴史性を背景に、職住の関係や他地域との交流により、特徴的な景観が形成されてきました。
- 良好な景観形成に当たっては、生活や生業に配慮しつつ、「景観素材の地産地消」という循環※、さらに、観光振興、産業振興及び交流人口の増加に繋がる、また、それらの活動により景観が維持・創造される循環を生み出すことが必要です。
※「景観素材の地産地消」という循環とは、ここでは、「地元で生産された農林水産物や建築資材などを地元で利用、消費することで、農林水産業の健全な営みの維持や地域の風土に応じた建築活動等により、地域で育まれてきた良好な景観を持続的に保全・育成する循環」のことを表します。
(3)5つの取り組み(施策の基本方向)
良好な景観形成に当たっての各主体の役割分担と3つの視座(景観形成に当たっての基本的視点)を踏まえ、次の5つの施策の基本方向のもと、良好な京の景観形成を推進します。
広域的及び特徴的景観形成の推進
- 広域的景観形成を進めるため、モデル地域において関係市町村や府民等との連携により景観計画の策定に向けた取り組みを推進します。
- 府民の生活や生業、風土により形成されてきた文化的景観地や歴史的な景観資源など、府の特徴を形作る景観を守り育てるため、景観計画の策定や重要文化的景観等の選定の取り組みを推進します。
- 連続的公共空間として景観上重要な要素となる道路、河川等の公共事業の実施に当たっては、市町村や住民等による景観まちづくり活動との協働により、自然環境や景観などの地域特性に応じた整備を行います。
府民意識の醸成と啓発
府民一人ひとり、あるいは事業者が景観に対して関心を持ち、景観の公共性や景観まちづくりの意義や必要性を理解した上で、自律的な取り組みが推進され蓄積されるよう、また、意識の醸成とともに価値観の共有が図られるよう、プロセスを重視した意識啓発活動を実施します。
参加と協働による景観まちづくりの促進
- 府民やNPO団体等の自律的、継続的取組や意識啓発を促すため、参加・協働型事業を推進します。
- 景観形成に関する自主的な取り組みを実施する意欲ある組織と協働、連携した取り組みを推進します。
景観まちづくりの担い手支援
- 景観まちづくりの主体である市町村による景観計画※1の策定や、景観に関する条例の制定、あるいは、地域の景観に関する取組に対し、支援します。
- 自律的かつ継続的に地域の特性に応じた特色ある景観形成が促進されるよう、府民等が行う景観まちづくり活動に対して支援します。
総合的推進体制の確立
府域の良好な景観形成の推進に当たり、府、市町村、府民、NPO、事業者等が、参加し、連携・協働し、府民運動として展開していく体制や仕組みを整えます。
4 重点施策
(1)広域的及び特徴的景観形成の推進
景観計画の策定と文化的景観等の選定・支援による景観形成
- 景観法を活用した府の広域的及び特徴的景観形成の推進のため、景観計画※1の策定を推進します。広域的観点からモデル地域における景観計画の策定に取り組み、府の特徴を成す重要な文化的景観※5の保護に向けて対象地の選定を行います。
- 次の3地域を広域的景観形成のモデル地域として景観計画※1策定に向けた取り組みを推進します。
・広域的及び特徴的景観資源である日本三景天橋立の周辺地域
・府県を跨る広域景観資源である桂川、宇治川及び木津川の三川合流地域
・新都市としての良好な景観形成を先導的に推進している関西文化学術研究都市
- 人々の生活又は生業及び地域の風土により形成されてきた府を特徴づける重要な文化的景観について、事例調査を通じて府独自の選定基準や保護及び支援制度のあり方等を検討します。その保護・育成のため、市町村との適切な役割分担のもと、景観計画※1の策定に取り組むとともに、重要な文化的景観※5を選定し、必要な支援を行います。
施設整備による良好な公共空間の創造・再生
- 京都府が実施する公共事業においては、『環』の公共事業ガイドラインによる構想から実施、管理段階に至る評価や点検を行うことにより、地域個性や文化環境を背景とした地域固有の景観を保全・復元・再生するなど、自然と環境に配慮した公共事業を推進します。(『環』の公共事業行動計画関連)
- 景勝地や良好な風致を有する地域の眺望を愉しむ場所(視点場)からの景観において、周囲と不調和なものとなっている施設について、修復や植栽等による修景等により、良好な景観を保全する取組を推進します。
- 無電柱化推進計画に基づき、電線類の地中化などによる道路の無電柱化を推進し、自然景観や歴史的景観と調和した道路整備を進めます。
- 景観地区※3等の特に景観上配慮すべき地域においては、当該地域の景観形成方針に応じ、防護柵、標識、照明などの付属物や舗装、植栽の再整備により、良好な道路等の公共空間を創出します。
- 心地よい水辺空間を創出する河川においては、自然環境や人・まちとの関わりなど川の特性等に応じて良好な河川景観の保全、創出を図ることとし、特に、鴨川等(京都市)では山紫水明の京都にふさわしい河川整備を進めるとともに、大手川(宮津市)では城下町の風情を偲ばせる河川整備を進めます。
屋外広告物の適正な規制・誘導
屋外広告業の登録制を導入するとともに、許可対象区域を拡大するなど、屋外広告物の適正な規制・誘導を行い、良好な景観の形成を推進するとともに、制度の一層の適正かつ実効性ある運用を図るため、実態の把握を行うとともに、地域の状況に応じた屋外広告物対策を進めます。
農山漁村景観の保全への支援
農山漁村における良好な景観は、農業生産活動等を通じて守られていますが、高齢化や過疎化により農地や水路などの維持管理が困難となってきています。農地や施設を維持・保全するための集落共同作業や、都市住民も参加した活動を促進するための支援を行います。
自然景観の保全と創出
優れた自然の風景地を保護するとともにその利用の増進を図ることを目的とし、さらには観光振興等による地域の活性化に繋げるため、自然公園区域の拡大・新規指定を行い、適切な保護・利用施策を進めます。
歴史的及び文化的な景観資源の保全
- 世界文化遺産(社寺)等周辺の森林の枯損木、倒木等による文化財への危害を防ぐとともに、風致地区等の美しい景観を守るための不良木の伐採、整理等を実施します。(京都・文化の森づくり事業(緑の公共事業関連))
- 景観に関する条例等の対象となっている歴史的、文化的街並みを有する地域の住宅及び、歴史的・文化的意義が特に深い建造物等において、改修、保存継承のための支援を行います。
- 地域の生業や生活とともに育まれ、周辺の自然景観との空間的一体性をもつ歴史的価値のある土木施設の保存・再生を行うこととし、特に、雲原砂防施設(福知山市)において、地元市及び関係者とともに景観保存及び活用計画の策定等を行い、施設の復旧事業とともに、施設と一体的な保存管理を行います。
(2)府民意識の醸成と啓発
景観資源の発掘
府内各地に存在する、あるいは、意識化されていない隠れた景観資源(眺望景観、文化的景観等)を発掘した上で、その価値を再認識し、共有していく活動を、多様な主体の参画と協働によって取り組みます。
景観情報の収集・蓄積・発信
- 府域の景観資源やまちづくり活動に関する情報を収集・蓄積する仕組みを作ります。
- 京都府、市町村及びまちづくり団体等による景観まちづくりの取組紹介や、府の景観資源情報の発信等を行うため、景観まちづくりに関するホームページを開設します。
研修・勉強会等の実施
- 建築、開発や広告物など、その事業活動が地域の景観形成に大きな影響を及ぼす事業者との勉強会を実施するとともに、シンポジウム等を通じて府民への景観に関する意識啓発活動を実施します。
- 景観まちづくりに関する取組を実施する先進地の事例研究を通じた学習や意識啓発等を目的とし、景観や公共事業を担う行政職員等の知識の習得のための研修や勉強会を実施します。
(3)参加と協働による景観まちづくりの促進
NPOの様々な取組の促進
良好な景観形成のための主体的な取組を行うNPOが育ち、将来的には景観整備機構※4として、良好な景観に関する調査研究や地域の景観まちづくり活動に対する援助などの、自主的、自律的な景観に関する活動を担えるよう、NPOとの協働事業を実施します。
景観に関する府民参加型事業の推進
- ワークショップ等多世代が参加しやすい学習機会や体験機会を確保することにより、地域特性に応じた景観まちづくりを推進します。
- 府民、地域企業等による、地域の身近な道路、公園、河川などの公共施設の緑化・美化・清掃活動等を通じ、地域への愛護心、地域環境の向上、地域コミュニティーの形成を図ります。
景観に関する学習の支援
- 自ら身近な景観に興味を持ち行動していける人材の養成に繋げるため、教育関係者及びNPO等との協働による啓発冊子を作成し、学校教育などの取組を支援します。
(4)景観まちづくりの担い手支援
景観まちづくりアドバイザー(仮称)の派遣
- 府民、市町村又は事業者が実施する景観まちづくりに関する各種の取組に対し、あらかじめ登録した関係分野の専門家を派遣し、必要なアドバイスを行うことにより技術的に支援します。
景観計画策定支援
- 多数の市町村が景観法に基づく景観行政団体※2となり、景観計画※1の策定に向けた取組が促進されるよう支援を行います。
景観まちづくりの手引き(仮称)の作成
- 行政、事業者及び府民の景観まちづくり活動を支援するため、公共や民間が設置する建築物や土木構造物、あるいは民間の事業活動で設置される看板や広告物等について、配慮するポイントや良好な事例等を示すとともに、景観に関するマネジメントを行う視点を含めた景観まちづくりの取り組み方策や手法等を示した「景観まちづくりの手引き」(仮称)を作成します。
(5)総合的推進体制の確立
「京都府景観条例」(仮称)の制定
- 府域全体の景観まちづくりが着実に推進されるよう、京都府の景観まちづくりに対する方向性とともに、府域の景観まちづくりの方針、啓発、人材育成及び体制整備などの取組姿勢を広く示し総合的に施策を推進するため、「京都府景観条例」(仮称)を制定します。
総合的、一体的な推進体制の確立
- 景観行政を専門的かつ横断的に推進できるよう、府の体制を充実します。
- 景観行政に当たっては、地域特性に応じたきめこまやかな景観形成の推進が必要であり、「現地・現場主義」のもと広域振興局等を単位に、関係団体からなる連絡会等を設置し、景観に関する総合的なマネジメントを行う視点を踏まえ、地域活性化や観光振興にもつながる計画づくりと施策を実行します。
【用語の説明】
※1 景観計画、景観計画区域
・良好な景観の形成に関する計画であり、景観行政団体が定めます。景観計画には区域(景観計画区域)、景観形成の方針及び行為の制限に関する事項等を定めます。
※2 景観行政団体
・景観法に基づく景観行政を行う主体。京都府においては、指定都市である京都市は自動的に景観行政団体となり、その他の区域においては京都府となりますが、府の同意を得ることにより市町村が景観行政団体となることができます。
※3 景観地区
・市街地の良好な景観の形成を図るため、市町村が都市計画に定めることにより、建築物の形態意匠の制限、建築物等の高さや壁面の位置の制限が行える制度です。なお、景観地区の創設に伴い、美観地区は廃止されました。
※4 景観整備機構
・景観法第92条の規定により、景観行政団体が公益法人又はNPO法人から指定するものです。 景観整備機構は、人材派遣や情報提供等の援助業務、調査研究業務、その他の良好な景観形成を促進するために必要な業務を行います。
※5 文化的景観
・文化財保護法の改正(平成16年5月)により、『地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のために欠くことができないもの』を「文化的景観」と定義し、文化財として新たに位置付けられました。
・国は、景観計画区域又は景観地区内にある文化的景観で、特に重要なものを「重要文化的景観」と して選定することができることとされ、修理、修景、復旧、防災等の事業に関する経費補助が措置されています。
参考資料
美しい国づくり政策大綱 (平成15年7月 国土交通省)
- 美しい国づくりのための基本的考え方と国土交通省のとるべき具体的な施策についてまとめられたものです。
- 前文では、「行政の方向を美しい国づくりに向けて大きく舵を切ることとした。」と宣言しており、具体的な15の施策が示され取り組みが進められています。
観光立国行動計画 (平成15年7月 観光立国関係閣僚会議)
- 平成15年7月に、関係行政機関の緊密な連携を確保し、観光立国実現のための施策の効果的かつ総合的な推進を図るため、行動計画としてまとめられたものです。
- 「美しい自然を有する日本では優れた「景観」が大きな魅力であり、ともすればこれまで犠牲にしてきた景観形成についても施策を実施していく必要がある。」とされ、観光推進の観点からも景観施策の必要性が示されています。
景観に関する法改正の状況 (平成16年6月公布)
上記などにおいて、景観に関する基本的な法制度の整備及び緑豊かなまちづくりのための制度や屋外広告物制度の充実が重要な政策課題として位置づけられ、制度強化・充実を図るため、いわゆる「景観緑三法」として制度措置されました。
- 景観法
・これまで各地方公共団体で取り組まれてきた自主条例による景観行政に対し、法的根拠を持った取組を可能とさせるものとして策定され、平成17年6月1日から全面施行されています。
・基本理念や国等の責務が定められるとともに、都市、農山漁村等を一体的に含めた景観計画※1の策定をはじめとした土地利用規制に関する規定や、景観整備・保全を支援する仕組みが規定され、我が国で初めての景観に関する総合的な法律です。
・京都府内では、京都市が法律上自動的に、また宇治市が京都府知事の同意を得て景観行政団体※2になり、景観計画の策定などの景観法に基づく取り組みを進めています。
- 緑に関する法改正
特に都市部において景観を構成する重要な要素であるみどりについて、緑地の保全、緑化及び都市公園の整備を総合的に推進するための制度を創設、拡充するため、都市緑地法・都市公園法等が改正されました。
- 屋外広告物に関する法改正
違反広告物をなくして良好な景観を形成する観点から、法制定以来の大幅な改正が行われ、景観行政団体である市町村が主体的に屋外広告物条例の規制を行うことができるようにするとともに、許可対象区域の拡大や広告業の登録制の導入がなされました。
- 文化財保護法の改正 (平成16年5月公布)
景観緑三法の法改正と同時期に、文化財保護法の改正がなされ、地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された文化的景観を新たな文化財として位置付け、特に重要なものを重要文化的景観として選定し保護を図っていくことができることとなりました。
全国都道府県の取組
- 平成17年4月の時点で、28都道府県(約60%)が独自の景観に関する条例を策定し、地域の特性に応じた様々な景観施策を実施しています。
- 景観法の施行後は、法律に裏付けられた条例や計画となるよう改正の検討が進められています。
参考
「景観」と「文化的景観」の関係について(PDFファイル、42KB)(PDF:41KB)
参考(検討会議関連)
1)検討会議メンバー
委員名簿(PDFファイル、4KB)(PDF:4KB)
2)検討会議の開催状況
6月28日 第1回検討委員会
7月12日 第2回検討委員会
8月2日 第3回検討委員会
9月6日 第4回検討委員会
11月18日 第5回検討委員会