丹後広域振興局
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大手川では、平成16年の台風23号により2,400棟を超える人家の浸水被害など、大変大きな水害がありました。
そのため、二度とこのような大規模な水害が起きないよう、本格的な改修事業を行うこととなりました。
ここでは、丹後土木事務所が大手川で進めている改修工事についてお話します。
大手川は、京都府が管理する二級河川で、京都府北部の宮津市の中心を流れます。流域面積は、27.6平方キロメートル、流路延長は10キロメートルの河川です。
大手川は宮津市役所のすぐ横を流れています。古くは宮津城のお堀としての働きがありました。現在は散策をしたり釣りをしたりする水辺として人々に親しまれています。
北近畿タンゴ鉄道(KTR)宮津駅を降りて、徒歩5分程度で大手川に到着します。
京都府北部に大変大きな被害をもたらした平成16年10月の台風23号では、大手川も氾濫して、大変大きな浸水被害となりました。
家屋の床上・床下浸水が2,400棟を超える浸水被害が発生したのです。
上の写真で赤色の線で囲んだ部分が浸水した範囲です。浸水面積は、約170ヘクタールです。これは東京ドーム何個分になるでしょうか?答えは約36個分です。
宮津小学校のグラウンドも洪水で浸かってしまい、しばらく使うことができませんでした。
家の中の畳まで浸かったり、車が浸水して立ち往生するなどもあり、市民生活がマヒしてしまうような大変な状況でした。
水に浸かって使えなくなったものなどの処分にがんばる人々
雨の強さを表すときによく「○○ミリ以上の雨量」と表現します。円柱型の容器を外に出して、1時間後にたまった水の深さが「○○ミリの雨」です。
次のようなことに気をつけることが大切です。
京都府では雨量や水位の情報を京都府ホームページ「河川防災情報」で提供しています。(河川防災情報システム URL http://chisuibousai.pref.kyoto.jp/index.html(外部リンク))
雨量を地図や表で見ることができます。水位をグラフや表で見ることができます。
また、主な河川の今の様子を河川防災カメラで見ることができます。当然、大手川も見ることができます。おおよそ30秒に一度更新されます。
ここで、川についてのいろいろな言葉を知っておきましょう。
川は上流から下流に向かって見て、右側を「右岸」といい、左側を「左岸」といいます。宮津小学校は大手川の右岸側に、宮津市役所は左岸側にあります。
普段の水位より高いところにある川の敷地のことをいいます。普段は様々な活動に利用され、植生が茂ったりしていますが、大きな洪水の時は水に浸かります。
大手川では、下流の湊橋あたりでヨシが生えているところが高水敷です。小さな川では高水敷のない河川が多くあります。
普段水が流れる部分です。
堤内地とは、堤防によって洪水から守られている土地をいいます。家が建っている場所は、堤内地です。水の流れている川側の土地が堤外地です。
一つの川が集まる範囲の全地域を流域といい、その大きさを流域面積といいます。
支川には、それぞれ支川ごとに流域があり、それらが集まって全流域を形作ります。
全ての支川を含めた全流域のことを水系ともいいます。
水系の主流となって河口に向かう木の幹に当たる流れを本川(または本流)といいます。
枝に当たる流れを支川(支流)といいます。大手川についていうと、大手川が本川で、滝馬川、今福川などが支川となります。
河川には、一級河川と二級河川があります。一級河川は、私たちの暮らしを守り、産業を発展させるうえで特に重要な河川のうち、国が管理している河川です。二級河川は、一級水系以外の比較的流域面積が小さい水系(二級水系)の河川のうち、都道府県が管理している河川です。
では、なぜ大手川で大きな水害があったのでしょうか?
その原因としては、次のようなことがあったと考えられます。
まず、大きな理由としては予測できないほどのたくさんの雨が降ったこと。
次に、流域面積の割合に対して必要な洪水を流せる川ではなかった、つまりは川幅が狭かったということです。
この他には、橋に橋脚があり、ゴミなどが引っかかりやすく、その結果、水の流れが悪くなってしまったことがあります。
(大量のゴミのひっかかった京口橋と普段の京口橋)
また、宮津市の街が海に近く、土地が低く、潮位(海面の高さ)の影響を受けやすいこと、川が蛇行していてスムーズに流れにくいことなどがあります。
蛇行している大手川です。(蛇行とは、ヘビが動くように曲がりくねっていることです。)
川の改修は川幅を拡げて、コンクリート護岸をつくり、急な河川にすればいいだけというわけにはいきません。
まず、川を拡げるといっても、川の横にある建物の移転が必要になったり、土地の買収が必要になったりします。買収に費用がかかるだけでなく、そこに住んでいる人の生活に関わるわけです。住んでいる人の理解と協力がないとできません。
また、コンクリートの護岸では周辺の景色に合わないことがあり、何よりも魚などの生物が住みにくい川になってしまいます。
急な勾配の河川にすると川底が掘れやすく、その結果、護岸などの施設が壊れるなどの問題も生まれます。
そのため、河川の改修を行うときは、このようなことを総合的に考えながら進める必要があります。また、動植物や環境への気配りも忘れてはいけません。
河川の改修は一度行うと簡単にやり直すことができないため、慎重に考えて行う必要があるのです。
大手川は、北部最大の河川「由良川」とは違って、流路延長が短く、地形勾配が急であることから、雨が一番強く降った時点から見て、短い時間で洪水の水位が一番高くとなります。
大きな河川では、大雨が降ってから2時間くらいで最大の洪水となりますが、大手川のような小さな河川では短い時間で最大となります。
そのため、水防活動が行いにくく、洪水被害が発生することを住民に伝えることが難しいなどの特性があります。これは、多くの中小河川に同じようにいえることです。
(雨量と水位の関わりを表す図)
改修を行う区間は河床勾配が1/200から1/1000となり、下流では河床勾配がかなり緩くなります。
台風23号による大きな被害を受けたことから、このような大変な被害が二度と起きることがないよう、本格的な改修が必要となりました。
そのため、国土交通省と協議を行い、「河川激甚災害対策特別緊急事業」という事業で本格的な改修を進めることになりました。京都府では2番目の事業です。
この大手川での事業は、120億円という大変多くの事業費を使い、5年間という短期間で約5キロメートルの区間を集中的に改修を行うというものです。
それでは、どのような規模の改修を行うのでしょうか?
大手川は、流域に多くの家の建ち並ぶ市街地のある河川であることから、30分の1の降雨確率で改修を行います。(30年で一番の大雨でもあふれない安全な川にするということです。)
この確率で計算すると、京口橋付近で毎秒270トンの洪水を流せる河川になります。この水の量は、ちょうど台風23号の時に流れた水の量とほぼ同じになります。
したがって、現在進めている改修工事が終われば、台風23号と同じくらいの大雨が降ってもあふれない、安全な河川に生まれ変わることになります。そのため、できるだけ早く事業が完了することが望まれるのです。
大手川改修を進める上で、特に気を配ること、それはどのようなことでしょうか?
それは、おおよそ次のようなことになります。
1 大手川は宮津市の中心部を流れる河川であることから、「宮津の歴史と自然を活かした安心で心安らぐ水辺づくり」として、地域に愛される水辺づくりを目指すこと。
2 河川の改修を行う上では、治水・利水だけでなく、環境にも気配りすること。
地域の人々に愛される水辺づくりを進める上では、どのようなことが大切なのでしょうか?
それには、まず、どのような水辺にしていくかを地域の人たちと一緒になって考えて、その結果を具体的に工事に反映させることが必要だと考えました。
その方法として、「ワークショップ」という仕組みで地域の人のいろいろな意見を聞いて設計することとしました。
大手川を周辺の地形や利用の形を考えて、大きく下流・中流・上流に分けて考えました。そして、それぞれの場所に適したイメージや形態で検討をしました。
ワークショップは、たくさん開いてもまとまりが悪くなることから、いずれも3回開きました。
ワークショップでは、まず現地の調査を行い、川の特徴や周辺の状況、どのように利用されているかなどを確認します。次に、利用や整備に当たっての課題や問題点などを話し合います。
そして、どのようにそれを解決するか、どのような形や利用が望まれるかなどを話し合い、それをまとめ、イメージ図や模型などで、より具体的に形として残します。
土木事務所は、そのワークショップで検討してできあがったイメージ図や模型を基本として、具体的に工事のための詳しい設計図を作り、そして、工事に結びつけていくのです。
このような取り組みを行うことで、住民に愛着の生まれる河川としての整備に近づくのです。いつまでも皆さんに愛される「大手川」にしたいと思います。
下流部では、「大手川の護岸を考えるワークショップ」という名前のワークショップを行い、皆さんで話し合ったことを整備イメージにしてまとめていただきました。
出来上がったのが、下のイメージ図です。
下流部では、大手川が宮津城のお堀であったことなどから、上の絵にあるように、右岸側は白壁が建ち並び、お堀のイメージを出します。ゆっくり散策できるようにします。
(お堀とは、敵がお城に入ってくるのを防ぐためなどのために作られたお城の周りにある水路のようなもの。)
中流部では「大手川に『自然と親しむ空間』を作ろう」ワークショップ」という名前のワークショップを行い、曲がりくねった区間の改修によって残る元の河川部分の有効利用を考えました。
生き物にも配慮した川とふれあえる空間の整備について、皆さんで意見を出し合っていただきました。
下のイメージ図が、皆さんで話し合って決めた中流部の整備イメージ図です。
流れの速いところ、遅いところができ、変化に富んだ形により、いろいろな生物が棲みやすくなります。自然観察などに適した場所になると考えられます。
このような形にすることで、魚などの生き物とふれあえる水辺として、みなさんに親しんでいただけると考えています。
上流部(上宮津地区)では、「大手川『みんなで育む!川づくり』ワークショップ」という名前のワークショップを行い、「地域で創り、育てる川づくり」を目標に、川に親しめる空間整備を考えました。
環境へ気配りということでは、人が洪水に対して安全であればよいかということではなく、魚などにもやさしい川でなければということです。
また、景観(すぐれたけしきのこと)にも気配りされていなければなりません。
(瀬・淵のイメージ)
そもそも河川は人工的であってはいけないのです。豊かな自然の環境を守ることは大変大切なことなのです。魚の隠れ場所の確保も含めて、瀬や淵が必要です。また、景観的にも美しいことが望まれます。
大手川改修では、これらを実現するため、「大手川環境配慮指針(案)」というものを作成し、計画を立てる、工事を行う上で気配りすべきことなどを定めています。
大手川には、たくさんの種類の魚などが棲んでいますので見ておきましょう。
工事をするときは、生態系のことを考えて、これらの魚などが棲みやすいような形で護岸などを作ることが必要となります。
モクズガニ
生まれてから4から5年は川で大きくなり、卵を産むために秋から冬は海に下ります。ハサミの長い毛は脱皮直後は白髪になります。
ケフサイソガニ
日本各地の内湾の川のそばで、石の多いところでみられます。オスのハサミにやわらかい毛が生えています。
キヒトデ
ヒトデまたはマヒトデともいいます。日本近海の浅い海や港の中で最も多く見られる種類です。
ウグイ
日本各地の川の上流から下流に広く見られます。卵を産む時期、3本の赤い縦じまがみられます。川底のコケ、水中の虫などなんでも食べます 。
マハゼ
日本各地の湾内や河口の砂泥上にみられます。寿命は1から2年です。大食いでなんでも食べるので釣りやすい魚です。汚い水に強く、都市の港でも見られます。
ヒイラギ
背中のトゲがヒイラギの葉に似ていることから、この名がつきました。アゴを“ギギ”とならすことから、宮津ではギチまたはギギと呼ばれています。体はヌルヌルした粘液を持っています。
ボラ
日本各地の湾内や河口に見られます。大きさで名前が変わる出世魚で、関西ではハク、オボコ、スバシリ、イナ、ボラ、トドと大きくなります。川底のコケなどを食べます。
アミメハギ
日本各地の茂場や岩場にみられます。大きくなっても6から7センチメートルと小さいです。夜は海草などをくわえて流されないように寝ます。
クサフグ
内蔵や皮などに毒を持ちます。砂に潜って目だけを出している姿を見ます。6月の新月と満月、波打ち際(ぎわ)で集団で産卵します。
大手川には、この他にもコイ、メダカ、セスジボラ、ウキゴリ、ゴクラクハゼ、ヌマチチブ、アイナメ、ネズミゴチ、ナマズなど、たくさんの種類の魚がいます。
丹後土木事務所では、より良いまちづくりを進めるために、積極的な情報発信や府民参画の取り組みを進めています。
大手川改修でも積極的に情報発信と府民参画の取り組みを進めています。
いろいろな人々が川づくりに参画していただくことで、より府民満足が得られるわけです。そのためには、いろいろな情報をできるだけ発信して知っていただくこと、そして、たくさんの人々が参加しやすい仕組みが大切です。
それでは、大手川で改修では、どのようなことをしているのでしょうか?
これは、毎月20日に発行しています。地元に配る紙印刷(A4版両面印刷)のものと、丹後土木事務所ホームページで公開しているホームページ版の2種類を作っています。
大手川だより紙印刷版です。これを地元に配っています。
特にホームページ版では、紙印刷のものより、さらにビジュアル(目で見て分かりやすいよう)にしています。川に関する専門的な言葉の説明やその時々の話題など、毎回、担当者が知恵をしぼって作成しています。是非、見て下さいね。
工事現場に近くに、いろいろな情報を提供しています。
改修のイメージ図、工事の流れ、大手川にいる魚の写真と説明など、少しでも大手川の特徴や改修工事について理解していただく取り組みをしています。
たくさんの取り組みがありますので、具体的にはホームページや現地で見て下さい。
さきに説明した「ワークショップ」も府民参画の仕組みの一つですが、これ以外にもいりいろいろな取り組みがあります。
「大手川自然博物館」での展示、「土木フェスタ2007inたんご」(平成19年11月16日から18日)での展示や出前講座などを行いました。また、小学校の総合学習や河川美化の取り組みなども行っています。
大手川水辺の学校「自然博物館」(平成19年7月17日から7月22日)では、宮津小学校と上宮津小学校4年生の生徒を対象に「勉強会」や「体験学習」を行い、現地での「体験学習」の成果は「公開展示」をして市民の皆様にお知らせしました。
大手川では「大手川クリーンアップ大作戦」と題して、平成19年10月28日に約200名という多くの方に参加していただき一斉清掃を行いました。
平成16年の台風23号水害の記憶を忘れることなく、末永く大手川に対する愛着を深めてもらい、大手川をいつまでも美しく守っていくため、継続して実施できることを期待しています。
工事を進める中で、いろいろな掲示物を設置したりして、府民に分かりやすい工事を目指して進めていることは、おおよそ理解していただけたと思います。
それ以外にもいろいろと気配りしていることがあります。それは何でしょうか?
答えは「品質の確保」です。では、品質の確保とは何でしょうか?
よい物を作るということだけではありません。品質の確保は、物が丈夫か、きれいかというだけではなく、安全に進められているか、環境に気配りされているかということが大切です。
そのために、丹後土木事務所では府民や工事に関係する人たちが安全であるよう「事故ゼロ」を目標に工事を進めています。
工事現場ではいろいろな建設機械を使って工事をします。
大手川改修の工事現場で働くいろいろな建設機械を見ておきましょう。
バックホウ
油圧で動くショベルカーです。主に土の掘削などに使用します。
クレーン仕様の場合は、クレーンと同じように器材のつり上げを行うこともできます。
ブルドーザ
土を敷き均しするときなどに使います。
ダンプトラック
土などを運ぶときに使います。
タイヤローラ
土を締め固めするときなどに使います。
矢板圧入機
周りに振動の影響が出ないよう、矢板を油圧で押し込むときに使います。
バキュームカー
ヘドロを吸い上げるときなどに使います。
大規模な工事をするときは、このようにたくさんのいろいろな機械を使いますので、やはり安全が第一です。安全には十分注意して進めていきます。
このように丹後土木事務所では、大手川の改修工事を進める中で、洪水に対して安全にするというだけではなく、府民に積極的に参加していただき、より良い水辺づくりができるよう取り組んでいることを理解していただけたでしょうか?
大手川改修でのいろいろなことを広く情報提供することにより、さらに質の高い住民サービス、府民満足度の向上につなげていければと考えています。
丹後土木事務所ホームページの「キッズページ」でもいろいろと公開していますので、そちらも見て下さいね。
防災や公共工事などについて、いろいろと見て学んでいただけるよう作っています。
台風23号の時の浸水した範囲を示す図
丹後土木事務所 災害対策室 ダイヤルイン電話 0772-22-3243
お問い合わせ
丹後広域振興局建設部 丹後土木事務所
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