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棺(ひつぎ)内のドライアイスによる二酸化炭素中毒について

★NHK
本日は、「棺内(ひつぎない)のドライアイスによる二酸化炭素中毒について」お話いただきます。いきなりこのタイトルからドキッとしてしまいますが、「棺(ひつぎ)内のドライアイスによる二酸化炭素中毒」とはどのような事例なのでしょうか。

☆相談員
ドキッとしますよね。でもそのタイトルの通り、身近な方が亡くなったときの、葬儀の際の話です。ご遺体を保冷するドライアイスがありますね。それによって引き起こされる死亡事故です。今回は契約トラブルではなく、消費者事故についてお話します。

★NHK
死亡事故ですか。それは本当に驚きますね。

☆相談員
はい。消費者庁に寄せられた重大事故の情報から、国民生活センターがテストを行いました。その結果を踏まえて先月発表された情報を元にお伝えします。

★NHK
気になりますが、具体的にはどのような事例なのでしょうか。

☆相談員
この数年で3件ありました。

1.葬儀場で、ドライアイスを敷き詰めた棺桶の小窓が開いていて、そのそばで、70代の方が意識不明の状態で発見され、その後搬入先の病院で死亡したという事例

2.おなじく葬儀場で、ドライアイスを敷き詰めた棺桶内に顔を入れた状態で発見され、搬送先の病院で死亡が確認されたという事例

3.そして今度は自宅で、ドライアイスを敷き詰めた棺桶内に顔を入れた状態で60代の方が発見され、死亡が確認されたという事例です。

★NHK
棺に顔を入れた状態で・・・。驚きますね。そんなことがいったいどうして起こるのですか。

☆相談員
このような事故は、通夜終了後、告別式までの間、ご遺族等が寝ずの番を行っている時間帯に発生しています。

★NHK
寝ずの番。確かに、親族が寄り添いますよね。

☆相談員
はい、葬儀中ではなく、周囲に人がいない中で故人とゆっくり別れを告げている時間帯です。でも、故人に話しかけているとき、棺の中ではドライアイスが気化し、二酸化炭素が充満していて危険な状況になっています。

★NHK
それは怖いですね。いったいどのぐらいの時間で危険な状況になってしまうのでしょうか。

☆相談員
国民生活センターがテストをしました。敷布団を敷いた棺にダミー人形を入れ、脱脂綿で包んだ重さ2.5キロのドライアイスを4個置き、棺の蓋を閉めます。すると、二酸化炭素濃度はテスト開始直後から急激に上昇し、20分後には「ほとんど即時に意識消失」するとされる、濃度30パーセントを超えました。

★NHK
ほとんど即時に意識消失ですか!

☆相談員
はい。その後も二酸化炭素濃度は上昇を続け、4時間後には90パーセント前後になります。7時間後、蓋を開けると二酸化炭素濃度は急激に60パーセントまで下がりますが、それから50分が経過しても「ほとんど即時に意識消失」するとされる30パーセント以上を維持していました。

★NHK
蓋を開けて50分経過しても30パーセント。なかなか濃度が下がらないんですね。

☆相談員
二酸化炭素は空気より重く、棺の中に残りやすいためです。棺にドライアイスを入れるとすぐに、二酸化炭素の濃度は人体に有害な濃度を超える可能性があり、蓋を開けなければ、24時間後にも「ほとんど即時に意識消失」する、とされる高い濃度を維持することがわかりました。たとえ棺の蓋を開けても、空気の大きな対流がなければ、長時間危険な濃度を維持します。

★NHK
では、事故を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。

☆相談員
3つのポイントがあります。

  • 棺の中に顔を入れないこと

棺の中では、ドライアイスの設置直後から二酸化炭素濃度が急激に上昇し、20分後には即時に意識を失うほどの濃度になります。蓋を全開にしても気流の動きが少ない状況では、棺の内部に高濃度の二酸化炭素がたまっています。安置されているご遺体に話かける際は、棺に顔を入れて高濃度の二酸化炭素を吸い込まないようにしましょう。

  • 室内の換気を十分に行うこと

棺は完全に密閉されているわけではないため、内部の二酸化炭素は室内に漏れ出ています。室内に二酸化炭素が滞留しないよう、十分な換気を行いましょう。

  • 線香番などで一人にならないこと

通夜から告別式の間に、慣例としてご遺族が寝ずの番、いわゆる線香番を行うことがありますが、なるべく複数人で見守りましょう。また、葬儀では飲酒する機会も想定されますが、酔った状態で棺に近づかないようにしましょう。

★NHK
もし気分が悪くなってしまったときはどうしたらよいでしょうか。

☆相談員
高濃度の二酸化炭素では、症状を自覚してから意識消失まではあっという間です。もし気分が悪くなったら、すぐに棺から離れて換気の良い場所に移動してください。症状があれば医療機関を受診しましょう。呼吸や意識に異常があるなど緊急性の高い場合は、すぐに救急要請をしましょう。

★NHK
なるほど、よくわかりました。

☆相談員
最近、火葬場が混雑して、ご遺体を何日も安置しなければならない状況も多いようです。ドライアイスによる二酸化炭素中毒の事故、みなさん十分ご注意ください。

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