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京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり条例に係るガイドライン

京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり条例に係るガイドライン(平成26年12月)

 

この条例は、障害のあるなしにかかわらず、みんながお互いにかけがえのない個人として尊重し合いながら、共に安心していきいきと暮らしやすい社会(共生社会)の実現を目指して制定されました。

誰もが暮らしやすい社会にするため、みんながお互いを思いやり、支え合う地域社会を築いていきましょう。

はじめに

このガイドラインは、「京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり条例」の施行(平成27年4月1日)に向け、条例に基づき府や事業者が行う合理的配慮の望ましい事例等を示すとともに、条例の目的や内容(障害を理由とした不利益取扱いの禁止、相談、助言・あっせんの仕組み等)をわかりやすく解説し、広く府民の皆様に条例の内容や障害、社会的障壁(バリア)等に関する理解を深めていただくため作成したものです。

このガイドラインは、条例施行後の経済社会情勢の変化や障害を理由とする不利益取扱いに関する具体的事例、合理的配慮の事例の集積等を踏まえるとともに、国の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」などの動向も注視しつつ点検を行い、適時、必要に応じた見直し、充実を図っていくこととしています。

条例制定の背景

私たちの住む京都では、障害のあるなしによって分け隔てられることなく、みんながお互いにかけがえのない個人として尊重し合いながら、共に安心していきいきと暮らせる地域社会をつくるために、多くの努力が重ねられてきました。

しかしながら、現状では、障害のある人が毎日の生活を送る上で支障となる様々なバリア(この条例では「社会的障壁」といいます。)があることによって、障害のある人が、地域で安心して生活することや、社会活動に参加することが十分にできていない状況があります。

全ての府民が、共に安心していきいきと暮らせる社会をつくるためには、私たち一人ひとりが、それぞれの立場で、協力し合い、こうした様々なバリアをなくしていく配慮や工夫をするなどの取組を進めていく必要があります。

この条例は、このような認識を府民みんなが共通のものとし、共生社会をつくっていくために、その取組を進めていく上での基本的な考え方などを定め、京都府・府民・事業者・市町村などみんなが協力してその取組を進めていくために制定されました。

この条例は、障害のある人だけのものではありません。共生社会をつくっていくため、障害のある人も、ない人も、みんなで取組を進めていくための条例です。

社会には、障害のある人にとって毎日の生活を送る上で支障となるバリアがあります。

今はバリアを感じない人も、齢をとったり、病気や事故により、いろいろなバリアを感じることがあります。

みんなが障害のことを知って、それぞれの立場でできる配慮や工夫をすることにより、バリアがなくなれば、障害のある人だけでなく、誰にとっても暮らしやすい社会になります。

周りの人の理解や障害に応じたちょっとした配慮があれば、障害のある人も地域で安心して生活を送り、障害のない人と同じように働いたり、スポーツ・芸術活動などを楽しむことができます。

筆談や読み上げなど、ちょっとした配慮で助かる人がいます。

また、歩道に車を止めたり、必要でない人がおもいやり駐車場(車いすマークの駐車場等)を利用したり、一般トイレを利用できる方が多機能トイレを長い間利用することなどは、マナー違反です。

みんなが思いやりの心を持って行動し、身の回りで困っている障害のある人がいたら、積極的に声をかけ、みんなで支えることが大切です。

条例のポイント

1 障害についての理解の促進

障害の有無にかかわらない共生社会をつくっていくには、府民の皆さんに、この条例の内容や障害のことを知っていただくことが大切です。

そして、障害に対する誤解や偏見などをなくしていくことが求められます。

そのため、これまで以上に啓発活動や障害のある人とない人の交流の機会をつくるなどの取組を進めていきます。

 2 不利益取扱いの禁止等

この条例では、府と事業者に対し、法律(注)で禁止された不利益取扱いをすることにより、障害のある人の権利利益を侵害することを禁止しています。

また、障害のある人にとって毎日の生活を送る上で支障となるバリアをなくしていくための配慮(この条例では「合理的な配慮」といいます。)を求めています。

(注)障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)と障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)のことです。

 3 相談体制と助言、あっせんの仕組み

相談員を設置し、「不利益取扱い」や「合理的な配慮」などについて、身近な地域で相談に応じる体制をつくります。また、調整委員会を設置し、より専門性の高い「不利益取扱い」の事案などについて助言、あっせんによる解決を図ります。

 4 障害のある人の社会活動の推進

障害のある人一人ひとりの個性と能力を活かして、生きがいを持っていきいきと暮らせるよう、障害のある人に対する就労の支援、スポーツ・文化芸術活動をはじめとする社会活動の推進に取り組みます。

5 協議会の設置

「京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり推進協議会」を設置し、みんなで協力して取組を進めていきます。

この条例は、平成27年4月1日に全面施行されます。

 社会的障壁(バリア)をなくしていくための取組

障害を理由とした不利益取扱いの禁止

京都府では、この条例の制定を検討するに先立ち、「障害を理由とした差別と思われる事例等」を募集しました。また、条例の制定過程において、条例検討会議や府民参加型のタウンミーティング、パブリックコメントなどで、多くの事例の報告や意見をいただきました。

こうした事例や意見は、京都府においても、残念ながら、障害のある人が、障害を理由として不利益な取扱いを受けたり、障害のある人に対する配慮が十分でないことにより、地域における安心した生活を妨げられたりしている状況が存在していることを示しています。

この条例では、府民一人ひとりが障害に対する正しい理解・認識を深めていただくための啓発活動等に、これまで以上に取り組んでいくこととしていますが、加えて、障害のある人に対する不利益取扱いとなる行為として、障害のある人の生活に関わる8つの分野について「してはならないこと」を定めています。

この条例は、障害を理由とした不利益取扱いをしたことに対して罰則を課すものではありません。どのような行為が不利益取扱いに該当するかを可能な限り示していき、府民みんなで共有していくことが、障害のある人への理解を深め、不利益取扱いをなくしていくことにつながります。

この条例では、京都府及び事業者に対し障害を理由とした不利益取扱いにより、障害のある人の権利利益を侵害することを禁止しています。

京都府、事業者とも不利益取扱いが禁止されます。

この条例では、障害を理由とした不利益取扱いとなる行為として、障害のある人の生活に関わる次の8つの分野について「してはならないこと」として定めています。

1福祉

2医療

3商品販売・サービス提供

4教育

5施設・公共交通機関

6住宅

7情報・コミュニケーション

8労働・雇用

 条例に定める不利益取扱い(分野別)

条例では、合理的な理由なく、障害を理由として、サービスの提供などを拒否・制限する、障害のない人には付さない条件を付けるなど、障害のある人を、合理的な理由なく、障害のない人より不利に扱うことにより、障害のある人の権利利益を侵害することを禁止しています。

なお、合理的な理由の有無については、個別の事案ごとに、障害のある人、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等)の判断要素を踏まえ、具体的場面や状況に応じて判断することが必要です。

一見不利益取扱いに該当すると思われる行為であったとしても、その行為について合理的な理由が存在する場合、この条例による不利益取扱いには該当しません。

ただし、合理的な理由があると判断した場合、その理由を十分に説明することが望まれます。

1福祉

障害のある人に社会福祉法に規定する福祉サービスを提供する場合

障害を理由として、福祉サービスの提供を拒んだり、制限したり、これに条件を付けるなど不利益な取扱いをすること。

障害のある人の生命や身体の保護のためやむを得ないと認められる場合などの合理的な理由がある場合を除く。

障害のある人に障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを提供する場合

障害を理由として、障害のある人の意に反して障害者支援施設などへの入所・入居を強制すること。

障害者総合支援法に規定する相談支援が行われた場合などの合理的な理由がある場合を除く。

 不利益取扱いに該当する可能性がある事例

親に障害があることを理由に、その子どもの保育所の入所を認めない。

障害のある人本人の意思を確認せず、親族と行政のみで施設入所を決める。

障害のある人本人の意見を聞かず、介護支援専門員(ケアマネジャー)が家族のみと相談してケアプランを作成する。

 合理的な理由があると考えられる事例

事業所の利用定員を超過するなど、サービスの提供に関する国の事業運営基準を遵守するために、利用申込みを断らざるを得なかった。

福祉サービスを提供中に障害のある人の体調が悪化し、医療機関への受診を促すために、サービスの提供を中止せざる得なかった。

障害のある人の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められるためです。

重度障害等により障害のある人本人の意思が確認できず、かつ、家族等本人の代わりに意思の表明をすることができる者がいない場合に、地域の支援体制等を踏まえ、本人にとっての最善の選択として、障害者支援施設に入所させる。

障害のある人自身の不利益となる行為ではないためです。ただし、できる限り障害のある人本人の意思を確認する努力をすることが望まれます。

2 医療

障害のある人に医療を提供する場合

障害を理由として、医療の提供を拒んだり、制限したり、これに条件を付けるなど不利益な取扱いをすること。

障害のある人の生命や身体の保護のためやむを得ないと認められる場合などの合理的な理由がある場合を除く。

障害を理由として、障害のある人の意に反して長期間の入院による医療を受けることを強制したり、隔離すること。

法令に特別の定めがある場合を除く。

不利益取扱いに該当する可能性がある事例

聴覚障害のある人からの求めがあったにもかかわらず、筆談による対応や手話通訳者の同席を認めず、病状や治療についての説明をしない。

障害のある人の障害の状態や求められる配慮等を聞こうとせず、障害があることを理由に、診療を断る。

入院治療の必要性が低く、精神障害のある人が退院を希望しているのに、強制的に任意入院を継続する。

合理的な理由があると考えられる事例

歯の治療の際、障害のある人がパニックを起こしてしまい、治療を継続すると口腔内を傷つけてしまうおそれがあるため、診療を中断せざるを得なかった。

障害のある人の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められるためです。

人命救助のための救急医療(交通事故等に伴い重篤な状態にある患者など)の提供を最優先するため、障害のある人への診療順番を変更せざるを得なかった。

救急患者が搬送されて来た場合には、障害の有無にかかわらず、順番が変わることがあるためです。

医師の病気により診療が不可能な場合など、医師法第19条又は歯科医師法第19条(応召義務)の「正当な事由」に該当する場合

精神保健福祉法に基づく「措置入院」(自傷他害のおそれ)の場合

治療上の必要性から専門的医療機関等へ紹介する行為

他の医療機関への紹介は、より適切な医療を患者に提供するため行うものであり、診療の拒否等には当たらないためです。

 3 商品販売・サービス提供

障害のある人に商品を販売したり、サービスを提供する場合

障害を理由として、商品の販売やサービスの提供を拒んだり、制限したり、これに条件を付けるなど不利益な取扱いをすること。

その障害の特性により他の者に提供するサービスの質が著しく損なわれるおそれがあると認められる場合などの合理的な理由がある場合を除く。

不利益取扱いに該当する可能性がある事例

構造上車いすで入場できる施設に、車いすを利用する人と同行したら、「障害のある人は対応できない」という理由で、事情の説明もなく、入場を一方的に断る。

障害のある人がスポーツクラブに入会しようとする際、障害の状態や求められる配慮等を聞こうとせず、障害があることを理由に、事情説明もなく、入会を一律に断る。

知的障害のある人が食堂で食券機に並んでいる際、特に混雑しているわけでもないのに、保護者が早く決めるよう督促し、本人の選択を制限する。

旅行ツアーの申込みにおいて、障害のある人の障害の状態や求められる配慮等を聞こうとせず、障害があることを理由に、事情説明もなく、付き添いを一律に求める。

商業施設、ホテルなどに盲導犬と一緒に入場しようとしたら、「障害のある人は対応できない」という理由で、事情説明もなく、入場を断る。

合理的な理由があると考えられる事例

映画館、劇場、コンサートホール等において、障害の特性により大声をあげてしまう人の入場を断らざるを得なかった。

当該サービスの提供に不可欠な静寂が保てず、他の観客に対して本来のサービス提供が困難になると認められるためです。

飲食店の繁忙時間帯に、視覚障害や聴覚障害のある人が来店し、当該来店客に障害があることをスタッフが認識できず、結果として丁寧な接客ができなかった。

建物の構造上、介助なしでは車いす利用者が入店できない店舗において、飲食店の繁忙時間帯に車いす利用者が来店したが、スタッフ数が十分でないため、入店を待ってもらう等の対応をとらざるを得なかった。

障害のある人が遊園地の遊具に乗車中に体調が急変し、サービスの提供を中止せざるを得なかった。

障害のある人の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められるためです。

障害のある人がスポーツクラブに入会しようとする際、事業者側が障害のある人本人の障害の状態を確認し、できる範囲の配慮の内容を示したが、障害のある人の求める配慮の内容に到らず、入会を断らざるを得なかった。

障害のある人が安心して入会できるよう、できる範囲での配慮の提供に努めようとしているためです。

目印となるハーネス(胴輪)をつけていない盲導犬について、盲導犬使用者に使用者証の提示を求めたが提示されなかったため、入店を断らざるを得なかった。

盲導犬かどうかの確認ができないためです。

4 教育

障害のある人に教育を行う場合

障害のある児童・生徒の年齢及び能力に応じ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするために必要な指導や支援を講じないこと。

障害のある児童・生徒やその保護者への意見聴取や必要な説明を行わないで、又はこれらの者の意見を十分に尊重せずに、就学すべき学校を指定すること。

不利益取扱いに該当する可能性がある事例

教育委員会の一方的な判断で、就学先を決めること。

障害のある児童・生徒について、その障害の状態や求められる配慮等を聞こうとせず、障害があることを理由に、遠足、水泳授業、校外学習、地域行事等への参加を一律に認めない。

教育委員会の一方的な判断で、保護者の付添い・介助を入学の条件とすること。

教育委員会・学校等が、特別支援学校への入学(転学)又は特別支援学級等への入級(転級)を強要すること。

できないと決め付けて、授業中に障害のある児童・生徒を無視すること。

合理的な理由があると考えられる事例

障害のある児童・生徒及びその保護者の意見を可能な限り尊重して対応したものの、一部の内容についてその意向が反映できなかった。

合意を図るための過程を十分尽くした場合でも、全てのことについて合意形成できるわけではないためです。なお、対応日時、内容等を記録し、その過程が説明できるような状態にしておくことが望まれます。

保護者が話し合い等を拒否したため、その意向が十分に把握できず、就学先の判断を行った。

意思を尊重する場を設けるものの、保護者が拒否しているためです。ただし、保護者の仕事の都合などを踏まえて日程を調整するなど、話し合いの機会を設けるための柔軟な対応を行うことが望まれます。

教育委員会・学校等が把握している情報を提供しても、必要な情報提供をしていないと指摘される場合。

必要な情報提供を拒否しているわけではないためです。

心臓に障害のある児童・生徒が学校登山への参加を希望したが、医師の意見を聞いた上で登山は困難と判断し、不参加とせざるを得なかった。

障害のある児童本人の生命、身体の保護のためにやむを得ないと認められるためです。

5 建物・公共交通

障害のある人が多数の者が利用する建物などの施設や公共交通機関を利用する場合

障害を理由として、建物その他の施設や公共交通機関の利用を拒んだり、制限したり、これに条件を付けるなど不利益な取扱いをすること。

建物などの施設や公共交通機関の車両などの構造上やむを得ないと認められる場合、障害のある人の生命や身体の保護のためやむを得ないと認められる場合などの合理的な理由がある場合を除く。

不利益取扱いに該当する可能性がある事例

構造上車いすで入場できる施設に、車いすを利用する人と同行したら、「障害のある人は対応できない」という理由で、事情の説明もなく、入場を一方的に断る。

公共交通機関(電車、バス、タクシーなど)に盲導犬と一緒に乗車しようとしたら、「障害のある人は対応できない」という理由で、事情説明もなく、乗車を断る。

施設への入場や宿泊の申込みにおいて、障害のある人の障害の状態や求められる配慮等を聞こうとせず、障害があることを理由に、事情説明もなく、入場や申込みを一律に断る。

合理的な理由があると考えられる事例

施設等の老朽化により、障害のある人の安全を確保できないため、入場を制限せざるを得なかった。

障害のある人の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められるためです。

目印となるハーネス(胴輪)をつけていない盲導犬について、盲導犬使用者に使用者証の提示を求めたが提示されなかったため、タクシー等への乗車を断らざるを得なかった。

盲導犬かどうかの確認ができないためです。

施設の構造を変更すると代替不可能な文化的な価値を損ねてしまう等の理由により、段差解消やエレベーターの設置等ができないため、車いすでの入場を制限せざるを得なかった。

施設の構造上やむを得ないと認められるためです。ただし、入場希望者の意向を確認して可能な範囲での入場は認めるなどの配慮が望まれます。

6 住宅

不動産の取引を行う場合

障害のある人や障害のある人と同居する者に対して、障害を理由として、不動産の売却や賃貸、賃借権の譲渡・賃借物の転貸を拒んだり、制限したり、これに条件を付けるなど不利益な取扱いをすること。

建物の構造上やむを得ないと認められる場合などの合理的な理由がある場合を除く。

不利益取扱いに該当する可能性がある事例

障害のある人の障害の状態や求められる配慮等を聞こうとせず、障害があることを理由に、賃貸借契約を一律に断る。

障害があることのみを理由に、障害のある人が入居すると他の入居者が退去してしまうと決めつけ、賃貸借契約を断る。

合理的な理由があると考えられる事例

アパートの構造上、車いすでは中に入ることができないため、賃貸契約の申込みに応じられなかった。

建物の構造上やむを得ないと認められるためです。ただし、原状回復義務を前提に建物の改修について承認することができないか検討することなどが望まれます。

建物の構造上、エレベーター等の設置が困難なため、車いす利用者の賃貸物件を1階の部屋に限定せざるを得なかった。

障害のある人からの申し出により、原状回復義務を前提に賃貸住宅の改造を認めたが、当該入居者から住宅所有者に対して改造工事の費用負担を求められたため、その負担を断った。

障害のある人の希望に基づき改造を許容したものであるためです。

7 情報・コミュニケーション

障害のある人から情報の提供を求められた場合

障害を理由として、情報の提供を拒んだり、制限したり、これに条件を付けるなど不利益な取扱いをすること。

その情報を提供することにより他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められる場合などの合理的な理由がある場合を除く。

障害のある人が意思を表示する場合

障害を理由として、意思の表示を受けることを拒んだり、制限したり、これに条件を付けるなど不利益な取扱いをすること。

障害のある人が選択した意思表示の方法では障害のある人の表示しようとする意思を確認することに著しい支障がある場合などの合理的な理由がある場合を除く。

不利益取扱いに該当する可能性がある事例

聴覚障害のある人が筆談での情報提供を申し出たが、それを一律に断り、手話通訳者の付き添いを要求する。

自治会の回覧板について、知的障害のある人は分からないだろうと勝手に判断し、知的障害のある人に限って回覧しない。

盲ろう者が触手話によりコミュニケーションを行うために通訳・介助者の同席を求めたが、それを断る。

合理的な理由があると考えられる事例>

障害のある人の求める情報の内容が第三者のプライバシーを侵害する個人情報に該当するため、情報の提供に応じなかった。

他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められるためです。

聴覚障害のある人が手話によるコミュニケーションを求めたが、手話を理解することができないため、代替手段として筆談などの他の方法を求めざるを得なかった。

お互いに可能な方法でコミュニケーションをとれるよう配慮しているものであり、コミュニケーションを拒否しているものではないためです。

障害のある人が電話で意思表示をしようとする際に、当該障害のある人の障害特性により電話では十分にその内容を汲み取ることができないため、代替手段としてFAXやメールでの意思表示を求める。

8 労働・雇用

労働者の募集や採用を行う場合

障害のある人とない人との間で均等な機会を与えないこと。

障害のある人を雇用する場合

賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用などの待遇について、障害を理由として、障害のない人と不当な差別的取扱いをすること

不利益取扱いに該当する可能性がある事例

障害のある人の障害の状態や求められる配慮等を聞こうとせず、障害があることを理由に、採用面接を一律に拒否する。

障害があることのみを理由に、正当な評価をせず昇進させない。

労働者の募集に当たり、業務遂行上特に必要でないにもかかわらず、障害のある人のみが排除される条件を付けている。

障害のある人が、状態が悪くなり仕事を思い通りに進められないときに、配置転換等の検討を何らすることなく退職を勧奨する。

一定の業務への配置に当たり、特別な事情がないにもかかわらず、障害のある人だけその対象から除外する。

合理的な理由があると考えられる事例

事業遂行上必要とされる業務(大型車両の運転、危険性の高い機械の操作等)ができないため、採用を断わらざるを得なかった。

障害のある人に可能な配慮を行った上で、職務能力を適正に評価したが、その結果、賃金等に差が生じざるを得なかった。

労働者の採用選考に当たり、障害のある人への可能な配慮を行うことも検討し、適性や能力を公平に比較した結果、障害のある人の採用を断わらざるを得なかった。

中国市場への事業展開を進めている企業が、中国語の通訳を募集するに当たり、業務遂行上必要となるビジネスレベルの中国語能力を有することを条件とした。

その条件が当該企業において業務遂行上特に必要なものと認められるためです。

雇用している障害のある労働者に可能な配慮を行うことを検討しても、事業遂行上必要とされる業務ができなくなったため、配置転換等をせざるを得なかった。

社会的障壁(バリア)をなくしていくための合理的配慮の提供

社会には、障害のある人にとって毎日の生活を送る上で支障となるバリアがあります。今はバリアを感じない人も、歳をとったり、病気や事故により、いろいろなバリアを感じることがあります。

みんなが障害のことを知って、それぞれの立場でできる配慮や工夫をすることにより、バリアがなくなっていけば、障害のある人だけでなく、誰にとっても暮らしやすい社会になっていきます。

周りの人の理解や障害に応じたちょっとした配慮があれば、障害のある人も地域で安心して生活

を送り、障害のない人と同じように働いたり、スポーツ・芸術活動などを楽しむことができます。

筆談や読み上げなど、ちょっとした配慮で助かる人がいます。

また、歩道に車を止めたり、必要でない人がおもいやり駐車場(車いすマークの駐車場等)を利用したり、一般トイレを利用できる方が多機能トイレを長い間利用することなどは、マナー違反です。

誰もが暮らしやすい社会をつくっていくためには、私たち一人ひとりが、マナーを守り、それぞれの立場で、協力し合い、いろいろなバリアをなくしていく配慮や工夫をするなどの取組を進めていくことが望まれます。

この条例では、こうした認識を府民みんなが共通のものとし、共生社会をつくっていくために、府民一人ひとりが障害に対する正しい理解・認識を深めていただくための啓発活動等に、これまで以上に取り組んでいくこととしていますが、京都府及び事業者に対しては、具体的な取組として社会に存在する様々なバリアをなくしていくための配慮(この条例では「合理的配慮」といいます。)を提供することを求めています。

この条例では、京都府及び事業者に対し社会的障壁(バリア)をなくしていくための配慮について、それを行うための負担が重すぎることにならない範囲で、提供することを求めています。

京都府は合理的配慮を行わなければなりません。

事業者は合理的配慮を行うよう努めなければなりません。

合理的配慮の提供の手続き

合理的配慮は、社会的障壁(バリア)の除去を必要とする障害のある人に対する個別の対応であり、障害のある人から意思の表明がある場合に、双方の建設的対話を通じて相互理解の中で提供されるべきものです。

意思の表明は、障害のある人本人が自ら行いますが、障害の特性などから本人が自ら意思表明することが困難な場合には、障害のある人の保護者やコミュニケーションを支援する者が本人を代理又は補佐して行うことができます。

なお、障害のある人から意思の表明がない場合にあっても、必要とされている配慮が明らかな場合などには、意思の表明がなくても必要な配慮を行うことが望まれます。

「過重な負担」の考え方

この条例では、社会的障壁(バリア)をなくしていくための合理的配慮について、その実施に伴う負担が重すぎることにならない範囲で、提供することを求めています。

従って、障害のある人から合理的配慮の提供を求められた場合には、その配慮の内容が「過重な負担」を及ぼすことになるかどうか、個別の事例ごとに検討が必要となります。

「過重な負担」を判断する要素としては、例えば、以下の要素があると考えられます。

事業活動等への影響の程度

その配慮を提供することによって、事業所における生産活動やサービス提供に及ぼす影響など、事業活動への影響の程度が過重な負担の判断要素となります。

実現困難度

事業所等の立地状況や施設の所有形態等により、その配慮を提供するための機器や人材の確保、施設の整備等の困難度が過重な負担の判断要素となります。

費用・負担の程度

その配慮を提供することによる費用・負担の程度が過重な負担の判断要素になります。なお、複数の障害のある人から合理的配慮に関する申し出があった場合、それらの複数の配慮に要する費用・負担も勘案して判断することになります。

企業等の規模・財政状況

その配慮を提供する企業等の規模や財政状況が過重な負担の判断要素になります。

公的支援の有無

その配慮の提供について、公的な支援を利用出来る場合はその利用を前提とした上での判断になります。

以上の判断要素等を総合的に勘案しながら、「過重な負担」を及ぼすことになるかどうかを個別に検討し、判断することとなります。

社会的障壁(バリア)をなくしていくための配慮の例(障害別)

合理的配慮は障害のある人一人ひとりの障害の状態や事業者等の負担の程度、規模、財政状況などに応じて提供されるものであり、多様かつ個別性が高いものです。

ここに記載された事例はあくまでも例示であり、全ての事業者等が必ずしも実施すべきものではありません。また、ここでは、障害のある人からの申し出のないものについても、望ましいと思われる配慮は事例として紹介しています。

ここで紹介している内容が全ての障害のある人に当てはまるわけではありません。一人ひとりについての理解は、障害のあるなしにかかわらず、お互いに一人の人間として尊重し合う中で育まれるものです。

視覚障害

一言で視覚障害といっても、まったく見えない、文字がぼやけて読めない、物が半分しか見えない、望遠鏡を通しているように一部分しか見えないなど、さまざまな見え方があります。

このため、文字を読むことができても、歩いているときに障害物にぶつかったり、つまずいてしまう人、障害物を避けてぶつからずに歩くことはできるが、文字は読めない人など、個人差があります。

合理的配慮の提供は、障害のある人からの申し出を受けて行うものではありますが、視覚障害のある人は、困っていても自ら配慮等を求めることが難しいことがあります。

視覚障害のある人が戸惑っているのを見かけたときは、まず、声をかけ、そして、何らかの配慮等が必要かどうか確認することが望まれます。

配慮の例

共通的な配慮

視覚障害のある人に話しかけるときに、まず自らの名前を名乗ってから話しかけること。

声をかけられても誰からの声かけかわからず困ることがあります。まず名乗ってから話しかけると安心できます。

視覚障害のある人に話しかけるときは、そばに行って、前から声をかけること。

背後から突然体に触れたりすると不安に感じたりします。できるだけ前方から声をかけることが望まれます。

方向や位置を説明するときは、視覚障害のある人の向きを中心にすること。

向かい合っていると説明者とは左右が反対になります。

代名詞や指さし表現ではなく、「あなたの右」「携帯電話くらいの大きさ」などと具体的に説明すること。

「あそこに」「むこうに」といった表現では正確に伝わりません。

誘導の際、どのように誘導すればよいか聞いてから誘導すること。

誘導の受け方は人によって違います。決めつけた対応をするのではなく、まず障害のある人本人の意向を確認することが望まれます。また、短い距離でも腕や白杖をつかんだり、肩や背中を押さないでください。動きを拘束されると安心して歩くことや杖などで前方を確認することができなくなります。

なお、誘導する人が半歩先に立ち、肩やひじにつかまってもらうことが基本です。

盲導犬に触ったり、声をかけたりしないこと。

盲導犬は視覚障害のある人の生活を支えるために特別な訓練を受けています。盲導犬を見かけたときは、仕事中だということを忘れず、邪魔にならないよう温かく見守ってください。

サービス窓口、店舗、病院、事業所などでの配慮

書類などを手渡すだけでなく、読み上げるなどの配慮をすること。

読み上げる際は、読み手の判断で省略せず、正確な情報を伝えます。また、拡大文字の書類を希望された場合、拡大コピーして渡すことが望まれます。

レストラン等において、店員がメニュー説明を行って注文を受けるなどの配慮をすること。

自筆のサイン等が困難な場合に、障害のある人本人の意向を確認して代筆をすること。

代筆した場合には、その内容を読み上げ、確認してもらいます。なお、その際は周りの人に住所や電話番号などプライバシーを知られないよう配慮が望まれます。また、代筆ができない書類にサインする際は、厚紙や定規などを記入欄の下部に当てるとサインがしやすくなります。

窓口などに拡大鏡、老眼鏡を設置すること。

点字、拡大文字、音声等により建物内を案内すること。

視覚障害のある人に商品代金のおつりを渡す際などに、紙幣や硬貨の種別を声に出して確認しながら手渡すこと。

商品を選ぶときなどに、言葉だけの説明でなく、触れられるものには触ってもらうこと。

物の材質、形や大きさなどは、言葉だけの説明よりも触った方がよくわかります。

通路や誘導用ブロックなどに通行を妨げる物を置かないこと。

取り除くことができない障害物がある場合、障害のある人本人に障害物の存在を伝えて注意を促したり、安全な場所まで誘導することが望まれます。また、雨天時には、濡れた床で滑らないよう早めに拭き取ります。

応対中に席をはずすときや戻ってきたときには、一声かけること。

いなくなった相手に気づかず話しかけることがあります。また、新たに話に加わる人があるときはその旨を伝えます。

入口や受付付近で困っていそうな人があれば「何かお手伝いすることがありますか?」と声をかけること。

初めて行く場所などでは周囲の状況が分からず不安でいっぱいです。積極的に声をかけることが望まれます。

トイレの入口ではなく、奥の個室まで案内すること。

初めてのトイレは様子がわからなくて困ります。水の流し方、便器の向き、トイレットペーパーの位置などを伝えると助かります。(異性の場合、同性の方に依頼します。)

順番を待つ必要があるときには、おおよその待ち時間を伝えていす等に案内すること。

どこで待っていいのかわからないことがあります。なお、順番が来たら「次の方」といった言葉ではなく、名前で声をかけます。

店舗などに盲導犬を使用する人が入る際、必要に応じ、周りの人に「盲導犬は適切な健康と予防対策がされており、使用する人が行動管理をしているので、迷惑をかけないこと」や「盲導犬は外出時はいつでも仕事中なので、触ったり声をかけたりせず見守ってほしいこと」を説明すること。

その際、周りに犬が苦手な人やアレルギーのある人がいないか確認することも望まれます。

入口、エレベーター、階段の手すりなどに音声案内や点字表示等を整備すること。

金融機関において、視覚障害のある人に対応したATMを設置すること。

郵送用の封筒に点字シールを貼ったり、郵送する文書を点字で作成すること。

歩道から店舗入口までの誘導、入口から窓口への誘導などのため点字ブロックを設置すること。

点字ブロックの設置は「京都府福祉のまちづくり条例」などで一定の設置が義務付けられていますが、義務付け以外の場所にも必要に応じて設置することが望まれます。

労働者の募集・採用、採用後の配慮

募集内容について、音声等で提供すること。

音声読み上げ対応のホームページ等による案内のほか、必要に応じ、募集内容の拡大コピーでの提供などが望まれます。

採用試験について、点字や音声等による実施や、試験時間の延長を行うこと。

本人のプライバシーや意向にも十分配慮し、業務指導や各種相談に関する担当者を定めること。

障害のある人の相談等に適切に対応するため、あらかじめ担当者を定めておくことが望まれます。

拡大文字、音声ソフト等の活用により業務が遂行できるようにすること。

職場内の机の配置、危険箇所等を事前に確認すること。

初めての場所では周りの様子がわかりません。あらかじめ職場内の様子を伝えることが望まれます。

移動の妨げとなるものを通路に置かないほか、机の配置や打ち合わせ場所を工夫するなど、職場内での移動の負担を軽減すること。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

一言で視覚障害と言っても様々な見え方があります。他の労働者と共に適切に業務を遂行するため、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

学校での配慮

障害特性に応じた教材・教具(点字、音声、拡大文字、拡大読書器、音声読み上げ器、近用ルーペなど)を用意すること。

「物が落ちた」「体があたった」などの状況を知らせることにより、適切なコミュニケーションがとれるようにすること。

見えないことにより適切なコミュニケーションを欠いてしまうことがあります。

視覚障害のある児童・生徒が移動したり使用する空間に不要な物を置いたり、知らせることなく物の配置を変えたりしないこと。

児童・生徒の動線を考え、交錯しないようロッカーや棚を配置すること等も望まれます。

非常口に緊急音声付きの点滅灯を設置すること。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の児童・生徒に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

一言で視覚障害と言っても様々な見え方があります。他の児童・生徒と共に学校生活を送るため、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

住宅の賃貸などでの配慮

契約に当たり、障害のある人にとって信頼できる第三者が立ち会うことを認めること。

居住スペース・共用スペース内の配置、危険箇所等を事前に確認すること。

初めての場所では周りの様子がわかりません。あらかじめトイレの様子(水の流し方、便器の向き、トイレットペーパーの位置など)やキッチン・風呂の様子などの室内の状況、階段・エレベーターなどの共用スペースの状況を伝えることが望まれます。

聴覚障害

一言で聴覚障害と言っても、聞こえ方は一つではありません。補聴器がなくてもなんとか会話が聞き取れる人、補聴器をつければ会話が聞き取れる人、両耳とも聞こえない人、片耳はよく聞こえて、片耳が聞こえない人など、さまざまな聞こえ方があります。

聴覚障害のある人には、言語障害を伴う人とほとんど伴わない人がいます。また、言語障害のある人は、その原因によって聴覚障害を伴う場合があります。

聴覚障害のある人は、聞こえ方やこれまでの生活によって、それぞれにコミュニケーションの方法を身につけてきています。コミュニケーションには、音声での会話、手話、筆談、読話(相手の口の形や動きで話を読み取る)など、さまざまな方法があります。多くの人は、どれか一つの方法だけを使うのではなく、いくつかの方法を相手や場面に応じて組み合わせて使っています。

聴覚障害のある人と出会ったら、まず、どのような方法(音声、手話、筆談など)でコミュニケーションをとればよいか本人に確認することが望まれます。

配慮の例

共通的な配慮

コミュニケーションをとるときに、まず、どのような方法(音声、手話、筆談等)がいいのか、聴覚障害のある人本人に確認すること。

聞こえ方によってさまざまなコミュニケーションの方法があります。お互いに可能な方法を確認することが望まれます。

聴覚障害のある人がコミュニケーションの方法について希望を申し出た場合に、できる範囲で希望に添った方法で会話すること。

「ゆっくり話してください」「筆談でお願いします」「手話通訳者と一緒に来ました」などが考えられます。

音声で会話する際に、顔の見える位置で、ことばのまとまりで区切るなどゆっくり話すこと。

口元の形や表情は、ことばを聞き取るための大切な情報になります。また、性能の良い補聴器をつけていても、早口は聞き取りにくいものです。

後ろから話しかけられたり、急に話しかけられても気づかなかったり、ことばが届かないことがあります。話しかける際、聞く準備ができてから話すことが望まれます。

音声で会話している際、聞こえにくいことばなどは、筆談や身ぶりなども使って伝えること。

聞こえにくいことばは、何回繰り返しても聞こえにくいものです。他の方法もあわせて使うと伝わりやすくなります。

補聴器を使用している人に話しかける際、近づいて普通の大きさの声で話すこと。

補聴器はマイクで音を拾うため、3メートル以上離れるとことばがマイクに届きにくくなります。また、補聴器を通して大きな声を聞くと、ことばが響いて聞き取りにくくなります。

大事な内容を伝える際、内容をメモ用紙等に書いて渡したり、復唱してもらうこと。

補聴器をつけていても聞き違いはよくあることです。きちんと伝わっているかどうか、確認することが望まれます。

手話通訳者や要約筆記者がいても、できるだけ聴覚障害のある人本人に話しかけること。

主体は障害のある人本人です。できるだけ本人に話しかけてください。

手話ができない場合は、聴覚障害のある人の口形や表情を手がかりに内容を読み取ったり、筆談、身ぶりなど、他の方法で会話すること。

手話は聴覚障害のある人の大切なことばです。手話を学んでコミュニケーションの方法を広げることも大切ですが、手話をしらなくても会話をすることは可能です。

聴覚障害のある人の多くは、相手に応じてコミュニケーションの方法を使い分けていますので、お互いに可能な方法を確認しながらコミュニケーションをとることが望まれます。

筆談をする場合は、短い文で簡潔に書くこと。また、図や記号を用いて表現を明確にすること。

長い文は前後の関係などが複雑になり、理解しにくくなります。また、視覚的に図式化された表現のほうが、必要な情報が伝わりやすくなります。

サービス窓口、店舗、病院、事業所などでの配慮

窓口に筆談をするための筆記用具やメモ用紙、筆談ボードなどを用意すること。

聴覚障害のある人が筆談等を申し出やすいように、窓口に耳マークを設置すること。

わかりやすい案内サインなど、音声での会話ができない人でも目的の場所が見つけやすく工夫すること。

呼び出しの音声が聞こえない人に待ってもらう際、どのような方法で順番をしらせるか、あらかじめ説明すること。

音声が聞こえないため、きちんと案内してもらえるか不安に感じます。

店のカードや診察券などに、できるだけファックス番号、メールアドレスをのせること。

電話での問い合わせや申込みができない人には、できる範囲でファックスやメールで対応することが望まれます。

複数の人で話すときに、できるだけ一人ずつ発言すること。

1対1では音声での会話ができる人でも、複数の人が一度に話すと聞き取りが非常に難しくなります。

書類の記入方法について、記入例も含めて文書で大きくわかりやすく表示すること。

音声での会話ができない人など、書類の記入方法がわかりにくくても質問しづらく、困られる人がいます。

聴覚障害のある人に商品の金額を伝える際、メモや電卓などで示して伝えること。

聴覚障害のある人が診察を受ける際、手話通訳者や要約筆記者などの同席を認めること。

講習会やイベントなどに、必要に応じて手話通訳者や要約筆記者などを配置すること。

聴覚障害のある人の通帳や店のカードなどに「耳マーク」シールを貼り、適切な配慮ができるようにすること。

聴覚障害のある人は外見上からは障害があるかどうかがわかりにくいため、「声をかけても無視した」などと誤解を受けたり、適切な配慮を受けられないことがあります。

駅や車内での配慮

電車やバスの発着、遅れ、緊急情報などをアナウンスするだけでなく、張り紙や電光掲示板などで知らせること。

聴覚障害のある人には、駅やホームなどでのアナウンスは聞き取りにくいものです。事故などの緊急時に状況がわからず困っている際には、声をかけたり筆談でお知らせすることが望まれます。

労働者の募集・採用、採用後の配慮

面接時に就労支援機関の職員等の同席を認めたり、面接を筆談で行うこと。

本人のプライバシーや意向にも十分配慮し、業務指導や各種相談に関する担当者を定めること。

障害のある人の相談等に適切に対応するため、あらかじめ担当者を定めておくことが望まれます。

業務指示・連絡に際して、筆談やメール、張り紙などを利用し、きちんと内容を伝えること。

職場での危険箇所や危険の発生等を視覚で確認できるようにすること。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

外見からは聞こえないことなどがわかりにくいため、挨拶をしたのに返事をしないなどと誤解されることがあります。また、一言で聴覚障害と言っても、様々な聞こえ方があります。他の労働者と共に適切に業務を遂行するため、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

学校での配慮

わかりやすい板書、教科書の音読箇所の位置の明示などにより視覚的な情報の提供を行うこと。

座席の位置の配慮、使用済みテニスボールの利用等による机・イスの脚のノイズ軽減対策をすることなどにより聞こえにくさに配慮した環境の提供を図ること。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の児童・生徒に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

外見からは聞こえないことなどがわかりにくいため、話しかけたのに返事をしないなどと誤解されることがあります。また、一言で聴覚障害と言っても、様々な聞こえ方があります。他の児童・生徒と共に学校生活を送るため、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

住宅の賃貸などでの配慮

契約時の重要事項などを筆記等により丁寧に説明すること。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の入居者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

外見からは聞こえないことなどがわかりにくいため、挨拶をしたのに返事をしないなどと誤解されることがあります。他の入居者や自治会などの連絡が適切に伝わるよう、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

肢体不自由

上肢、下肢等に障害のある人は、日常生活や社会生活の中で様々な制約を受けたり、不自由を感じることが多くあります。例えば、杖をついていたり、車いすに乗っていると、階段や少しの段差が通行の妨げになります。

手指や手・腕に障害がある人は、文字を書いたり、お金の扱いなど、細かな手先の動作には大変苦労します。

また、口や舌の動きが麻痺していると、ことばを使って自身の思いを十分に伝えることができないことがあります。

このように、機能障害のない人であればなんでもない生活の中で、不便がたくさんありますが、適切な配慮がなされることによって、楽に外出ができるようになり、様々な社会活動に参加できるようになります。

配慮の例

共通的な配慮

車いすを利用している人と会話するときには、いすに座ったり、かがんだりし、できるだけ同じ高さの目線で話すなどの配慮をすること。

立った姿勢で話されると上から見下ろされているように感じる人があります。身体的・心理的な負担にならないよう同じ高さの目線で話すことが望まれます。

ことばを使って自身の思いを十分に伝えることができない人と会話する際、聞き取りにくいことばを文字で書くなど、内容を確認すること。

聞き取りにくいときはわかったふりをせずに、内容を確認してください。大事な内容は文字で書いて確認することなどが望まれます。

車いすを利用している人や杖をついている人に対し、一声かけて意向を確認してから援助すること。

階段や段差などで困っていても、背後から突然車いすを押したりすると不安に感じたりします。声をかけてから援助することが望まれます。

多機能トイレを障害のない人が長時間利用しないよう呼びかけること。

機能障害のある人の中には、多機能トイレしか利用できない人がいます。トイレの設置者などが、マナーを守るよう呼びかけることが望まれます。

サービス窓口、店舗、病院、事業所などでの配慮

車いすでの利用がしやすいよう、カウンターや机の一部を低くしたり、車いすのまま机の下に足が入るように空けておくこと。

カウンターなどが高いと話しづらく、上の書類が見えないことがあります。また、文字を書くことも難しいです。

声を出すのが困難な人のため、窓口などに呼び鈴やブザーを設置すること。

要件を口頭で伝えることも難しいため、筆談するための筆記用具やメモ用紙、筆談ボード、コミュニケーションボードなどを用意することも望まれます。

文字を書くことに時間を要する人に対し、急がすことがないよう、空いている机等に案内すること。

手が不自由な人の場合、急いで書こうとすると筋肉の緊張が高まって、普段なら書けるものも書けなくなってしまうことがあります。

代筆をしてもよい書類に、障害のある人本人の意思を確認して代筆すること。

自筆のサインが必要な場合、署名欄の部分だけを切り取った枠(サインガイド)があると署名しやすい人がいます。

手が不自由な人が文字を書く際、紙が動かないよう文鎮などで紙を押さえること。

足の不自由な人に着席をする方がよいかどうか確認し、その上で、スタッフが出向いて要件を伺うこと。

座ってから立ち上がることが困難な人の中には、立ったままのほうが楽な人もいます。

手指の不自由な人に商品購入代金のお釣りなどでお金を渡す際、直接手のひらの上にのせて渡したり、コインマット(滑り止めのついたつり銭をのせる皿)の上にのせて渡すこと。

障害のある人本人から要望があれば、本人から見える位置で、本人に確認してもらいながら財布からのお金の出し入れを手伝うことなども考えられます。

車いすを利用している人のために、手動のドアを開閉すること。

出入り口を引き戸や吊り戸にし、開閉しやすくすることなども考えられます。

通路などの歩行空間に通行を妨げる物を置かないこと。

取り除くことができない障害物がある場合、注意を促したり、安全な場所まで誘導することが望まれます。また、雨天時には、濡れた床で滑らないよう早めに拭き取ります。

店舗等の駐車場に、おもいやり駐車場(車いすマークの駐車場等)を設けること。

車いすを利用する人などのための駐車場であることを大きく表示し、目的外の使用がされないよう注意を促すことも望まれます。

来客用の車いすを備えること。

店舗入口の段差を解消したり、スロープ・手すりなどを設置すること。

金融機関などで車いす対応のATMを設置すること。

車いすやオストメイトに対応した多機能トイレを設置すること。

労働者の募集・採用、採用後の配慮

声を出すのが困難な人の面接を筆談により行うこと。

面接の際にできるだけ移動が少なくてすむようにすること。

採用試験を、車いすで容易に移動でき、多機能トイレが設置された会場で行うこと。

移動の妨げとなるものを通路に置かない、机の配置や打ち合わせ場所を工夫するなど、職場内での移動の負担を軽減すること。

机の高さを調節するなど、作業をしやすい工夫を行うこと。

エレベーターのない建物内にある職場では、車いすを利用している労働者を1階の部屋に配置できるよう配慮すること。

段差を解消するスロープや手すりなどを設置すること。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

障害の程度により求められる配慮などは一人ひとり違うことがあります。他の労働者と共に適切に業務を遂行するため、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

駅や車内での配慮

電車、バス等への乗車に当たり職員などが手助けすること。

電車とホームの隙間を解消するため、渡し板を提供すること。

学校での配慮

校外学習等において、多機能トイレがある場所を選定するなど、障害のある児童・生徒が活動しやすい環境を整えること。

上肢の不自由により書字や計算が困難な児童生徒に対し、上肢の機能に応じた教材やICT機器を活用すること。

話すことが不自由な児童・生徒に対し、コミュニケーションを支援する機器を活用すること。

学校内の段差を解消するスロープや手すりなどを設置すること。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の児童・生徒に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

障害の程度により求められる配慮などは一人ひとり違うことがあります。他の児童・生徒と共に学校生活を送るため、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

住宅の賃貸などでの配慮

車いす用のスロープの設置など、障害のある人による住宅改修に理解を示すこと。

退去時の原状回復義務を免除することまで求めるものではありません。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の入居者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

他の入居者などが通路や共用スペースなどに通行の妨げとなるものを置いたりすることがないよう、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

内部障害

内部障害には、心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害、ぼうこう・直腸機能障害、小腸機能障害、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能障害、肝臓機能障害があります。外見からはわかりにくいため、周りの人に理解されにくい障害です。

進行性の疾患を患っている人もおり、症状の変化で不安を抱えたり、継続的な医療や介護が必要な人もおられます。定期的な通院、本人による自己管理、周囲の理解ある配慮などにより生活のリズムを守り、体調を維持することが大切です。

また、内部障害のある人が仕事に就くためには、体調に配慮した出退勤時刻や休暇・休憩、通院等とともに、障害のある人本人の負担の程度に応じて、業務量や配置する職場などに配慮することが望まれます。

参考

心臓機能障害

不整脈、狭心症、心筋症等のために心臓機能が低下してしまう障害で、ペースメーカー(胸部に埋め込み、心臓に刺激を与えて脈拍を正常に調整する医療器具)等を使用している人もいます。

じん臓機能障害

じん臓の機能が低下した障害で、定期的な人工透析(じん臓の機能を人工的に代替する医療行為)に通院している人もいます。

呼吸器機能障害

呼吸器系の病気により呼吸機能が低下した障害で、酸素ボンベを携帯したり、人工呼吸器(ベンチレーター)をしている人もいます。

ぼうこう・直腸機能障害

ぼうこう疾患や腸管の通過障害で、排泄物を体外に排泄するための人工肛門・人工膀胱を付けている人(オストメイト)もいます。

小腸機能障害

小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている人もいます。

ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能障害

HIVによって免疫機能が低下した障害で、抗ウィルス剤を服薬します。

肝臓機能障害

からだに有害な物質の解毒など、肝臓は生命維持に欠かせない大切な役割を担っています。肝臓機能障害は、いろいろな原因によって肝臓の機能が低下している障害です。

配慮の例

共通的な配慮

内部障害のある人に風邪をうつさないよう、特に配慮すること。

内部障害による体力低下のため感染しやすいことがあります。また、障害や障害の原因となっている病気が悪化することがあります。このため、特に感染しないよう配慮することが望まれます。

長時間立ってもらうことがないよう、着席を勧めるなどの配慮をすること。

内部障害のある人は、臓器だけでなく全身の状態が低下していることから、体力がなく疲れやすい状態にあります。重い荷物を持ったり、長時間立つなどの身体的負担を伴う行動が制限されます。

多機能トイレを障害のない人が長時間利用しないよう呼びかけること。

内部障害のある人の中には、オストメイト対応の多機能トイレでないと利用しにくい人がいます。トイレの設置者などが、マナーを守るよう呼びかけることが望まれます。

サービス窓口、店舗、病院、事業所などでの配慮

オストメイト対応の多機能トイレや、休憩スペースなどをわかりやすく案内表示すること。

一定の費用やスペースが必要ですが、負担が過重にならない範囲で配慮が望まれます。

労働者の募集・採用、採用後の配慮

採用試験や面接の時間について、通院や体調に配慮すること。

内部障害のある人は疲れやすい状態にあります。また、人工透析などのため定期的に通院が必要な人がいます。

出退勤時刻や休暇、休憩などに関して通院や体調に配慮すること。

障害のある人本人の負担の程度に応じて、業務量や配置する職場などにも配慮することが望まれます。

本人のプライバシーや意向にも十分配慮し、業務指導や各種相談に関する担当者を定めること。

内部障害のある人には、オストメイトなど特にプライバシーに配慮が必要な人がいます。

障害の状態によっては、安心して話をすることができるように同性の担当者が望まれます。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

内部障害のある人には、定期的に通院が必要な人や、体調に配慮した勤務時間の調整などを必要とする人がいます。他の労働者と共に適切に業務を遂行するため、必要な範囲で、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

駅や車内での配慮

電車、バス等の車内での携帯電話使用マナーについて、混雑時には電源を切るよう呼びかけること。

携帯電話の電波は、ペースメーカー等の医療機器に誤作動を生じさせるおそれがあります。電車、バスの車内など人が接近・密着するような場面では、携帯電話の電源を切るなどの配慮が望まれます。

知的障害

知的障害のある人は、知的な能力の障害のために、生活をする上で様々な支障が生じます。そのため、それぞれの障害の状態に応じた様々な支援を必要とします。

就職し、自活している人など一人で行動できる人もたくさんいますが、苦手な分野や障害の状態は人によって違い、理解や判断を助ける支援者と行動を共にしている人もいます。

障害の状態によって、複雑な事柄の理解や判断、こみいった文章や会話の理解が不得手であること、おつりのやりとりのような日常生活の中での計算も苦手であることなどがあります。

一見しただけでは障害がわかりにくく、少し話しただけでは障害があることを感じさせない人もいますが、自分の置かれている状況や抽象的な表現を理解することが苦手であったり、未経験の出来事や状況の急な変化への対応が困難な人が多くいます。

障害の程度には個人差が大きく、支援のしかたは一人ひとり異なるため、それぞれの障害の特性や求められる配慮などへの理解が望まれます。

配慮の例

共通的な配慮

知的障害のある人に話しかけるときには、障害のある人本人に話しかけること。

知的障害のある人の中には、理解や判断を助ける支援者と行動を共にしている人もいますが、行動を決めていくのは本人です。本人の自主性・意思を尊重してください。

知的障害のある人と話す際には、「わかりやすく」「ゆっくりと」「簡潔に」「具体的なことばで」話すこと。

その際、内容を理解しているかどうかを確認しながら、できるだけ短い言葉でわかりやすくゆっくり繰り返し説明することや、絵や図、メモなどを用いて、障害のある人本人がどのように理解しているか確認しながら話すことが望まれます。また、知的障害があるからといって、幼い子どもに接するように話しかけるのではなく、その人の年齢に応じた対応を心がけます。

知的障害のある人に話しかけるときには、穏やかな口調で話しかけること。

知的障害のある人の中には、社会的なルールを理解することが困難なため、ともすると想定外の行動をとる人がいますが、強い調子で声をかけたり、相手をとがめるような話し方は避けることが望まれます。強い聞き方をされると、おびえたり話をあきらめてしまうことがあります。

サービス窓口、店舗、病院、事業所などでの配慮

入口や受付付近などでどうしていいかわからずにいる様子のとき、やさしく声をかけること。

知的障害のある人は、誰にどのように尋ねたらいいのかわからずに、何となくその場で動けないでいることがあります。このようなとき、不安や緊張感をほぐし、気軽に話ができるようやさしい声かけが望まれます。

知的障害のある人と話す際に、相手がゆっくり考えてことばを返すことができるよう、あせらずに待つこと。

知的障害のある人は、ことばの意味を考え、理解し、ことばを探してから表現するまで時間がかかることがあります。安心して話ができるよう、せかさず、余裕を持ってよく話を聞くことが望まれます。

用件を確認するときには、わかりやすく具体的なことばで尋ねたり、コミュニケーション支援ボードを用いること。

「何をしたいか」という聞き方は、具体的な内容を答えなければなりません。「○○ですか」「△△をしたいか」といった聞き方なら「はい」や「いいえ」で答えられます。

相手が理解しているか確認しながら、よりわかりやすいことばに言いかえる工夫をすること。

専門用語や略語など本人にとってなじみのないことばを使うと理解しにくいことがあります。例えば「この用紙に書いてください」を「名前と住所を書いてください」に言いかえるなどの工夫が望まれます。

商品やサービスなどの説明をする際、口頭での説明に加え、大切なことをメモに書いたり、絵や図を用いたりして、わかりやすい説明ができるよう工夫すること。

口頭の説明だけでは要点をつかみきれないことがあります。要点となることばや地名、氏名、日時、持ち物などをメモに書いたり、絵や図を用いることにより要点や手続の順序などがわかりやすくなります。

知的障害のある人が用件や説明を理解したかどうか、ていねいに確認すること。

知的障害のある人の中には、話を十分に理解しないままあいづちを打ってしまう人がいます。説明にうなづいたりしていても内容が十分に伝わっていないことがあるため、大切な用件などは、要点を繰り返し言ってもらうなど、ていねいに確認することが望まれます。

わかりやすいサイン表示(絵や図の併記など)により、目的の場所を見つけやすくすること。

知的障害のある人への説明などを行う書類をできる限り平易な文章にし、難しい漢字には「ふりがな」をふること。

会計の際に、必要な代金やお釣りをわかりやすく伝えること。

代金やお釣りの計算が苦手でも「100円玉が○枚、10円玉が○枚」と聞けば、そのとおりに支払いができる人もいます。

家族や支援者等に連絡する際には、本人に確認してから連絡を取ること。

各種サービス窓口等において、家族や支援者等の支援が必要になる場合は、プライバシーの保護などのため本人の同意を得、本人の前で連絡を取るなどの配慮が望まれます。

知的障害のある人が品物などを選ぶ際に、あせらずに決められるよう配慮すること。

知的障害のある人の中には、品物などを選ぶのに時間がかかる人がいますが、同行の支援者等に早く決めるよう働きかけたりせず、本人の意思で決められるよう配慮が望まれます。

待てない、落ち着かないなどの特性がある人に対し、順番を繰り上げることや、落ち着いて待てるスペースを提供するなど、その特性に配慮して対応すること。

労働者の募集・採用、採用後の配慮

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。

本人のプライバシーや意向にも十分配慮し、業務指導や各種相談に関する担当者を定めること。

知的障害のある人の相談等に適切に対応するため、あらかじめ担当者を定めておくことが望まれます。

知的障害のある人本人の習熟度に応じて、業務量を徐々に増やしていくこと。

知的障害のある人の中には、仕事を覚えても、翌週になると仕事の仕方を忘れていたり、学習に時間がかかる人がいます。「わかりました」と返事をしていても、細かい点まですぐに覚えることは難しいことがあります。何度か体験を重ねることで、少しずつ理解が深まります。

仕事の手順等をことばで説明するだけでなく、図や絵を活用したわかりやすい業務マニュアルを作成すること。また、業務指示の内容を明確にし、作業の手順を一つずつ区切って書き出した表を作成するなど、作業手順をわかりやすく示すこと。

一つひとつ区切って手順を確認することができれば、仕事を覚えやすくなります。

また、本人の前で実際にゆっくりやってみたり、実際に本人にやってもらって十分に理解できたか確認することが望まれます。ことばで説明するだけではわからなくても、実際に身体を動かして手順を示すと覚えやすくなります。

はかりやものさしに目印をつけるなど、目で見て確かめられる工夫をすること。

はかりやものさしの目盛りが読めなくても、色や形、印で区別することにより作業が可能になることがあります。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

知的障害のあらわれ方は人によって様々です。他の労働者と共に適切に業務を遂行するため、必要な範囲で、どんなことで困るのかや必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

学校での配慮

話し方の工夫、文章の長さの調整、絵カードや文字カードの活用など、わかりやすい指示や教材・教具を提供すること。

話すことが不自由な児童・生徒に対し、コミュニケーションを支援する機器を活用すること。

児童・生徒の理解の状態に即した指導や対応ができるように、座席の配置に配慮すること。

教材に体験的、具体的な内容を盛り込むこと。

自主的な移動を促せるよう、動線や目的の場所が視覚的に理解できるようにすること。

本人のプライバシーに配慮した上で、他の児童・生徒に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

知的障害のあらわれ方は人によって様々です。他の児童・生徒と共に学校生活を送るため、どんなことで困るのかや必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

精神障害

精神障害のある人は、総合失調症、気分障害(そううつ病、うつ病)、てんかん、アルコール・薬物の依存などの様々な精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさを抱えています。

苦手な分野、障害の状態は人によって違いますが、適切な治療・服薬と周囲の配慮を得ることなどにより、就職し、地域で安定した生活を送っている人もたくさんいます。

精神障害のある人は、ストレスに弱く疲れやすい、対人関係やコミュニケーションが苦手、緊張が強く周囲の環境になじみにくいなどの状態にあることが比較的多いです。

一見しただけでは障害がわかりにくく、少し話しただけでは障害があることを感じさせない人もいますが、自分の気持ちをうまく伝えることや長い時間集中することが苦手であったり、状況変化への対応が苦手で、臨機応変に対応しづらい人も多くいます。

精神障害といっても、種類も症状も様々で、同じ病名でも人によって異なります。精神障害のある人とのコミュニケーションに当たっては、まず、その人自身を知ろうとすることが望まれます。

参考

統合失調症

主な症状として、幻聴や妄想、思考の混乱、判断力の低下、これらに伴う不安感、睡眠障害、行動や感情の変化などがあります。

幻聴や妄想などの症状は、薬物治療で比較的早く治まります。

周囲の人は、対人関係に敏感であることを理解し、陰口や批判的な言い方は避けるなどの工夫が望まれます。

気分障害

文字通り気分が極端に沈んだり、ハイになったりする病気です。気分が落ち込み、意欲が低下する「うつ病」や、極端にハイな時とうつの時を繰り返す「そううつ病」が代表的です。

投薬治療をしながら十分な休養をとり、がんばりすぎないことが大切です。

周囲の人は、できる範囲で話をじっくり聞き、アドバイスは専門家に任せることが大切です。

神経症・ストレス関連性障害

突然、動悸、息苦しさ、死への恐怖感などに襲われたり、また起こったらどうしようという不安感につつまれる「パニック障害」、身のまわりのいろいろなことが慢性的に心配になる「全般性不安障害」、不合理でイヤな考えが頭に何度も浮かんだり、強迫行為で何度も戸締まりを確認せずにはいられないなど日常生活に支障をきたす「強迫性障害」などがあります。

周囲の人は、治療を励まし、焦らずに見守ることが大切です。

てんかん

脳の一部の神経細胞が突然一時的に異常な電気発射を起こすことにより「てんかん発作」を起こす病気です。急に動きがとまってボンヤリしたり、倒れて全身を痙攣させるなど、脳のどの範囲で電気発射が起こるかにより、様々な発作症状を示します。

多くの場合は、適切な服薬で発作は抑制され、社会生活に問題はありません。

周囲の人は、病気の特性を理解し、過剰に活動を制限せず能力を発揮する機会を与えることが望まれます。

発達障害

発達のアンバランスによって生活に支障が出る状態です。対人関係や社会性、コミュニケーションが苦手、パターン化した行動やこだわりがみられるなどの「自閉症スペクトラム障害」、単純ミスが多い、じっとしていられないなどの特徴がみられる「注意欠如・多動性障害(ADHD)」、読む、書く、計算するなど特定の作業が極端に苦手な「学習障害(LD)」などがあります。

周囲の人は、特性であることを理解して、自尊心を低下させないことが、仕事や社会生活への意欲を高めることにつながります。

高次脳機能障害

脳卒中等の病気や交通事故などで脳の一部が損傷を受けたことによって起こる障害です。忘れっぽく何度も同じことを聞いたりする「記憶障害」、集中力がなくミスが多くなる「注意障害」、計画を立てることが苦手で要領が悪い「遂行機能障害」、感情のコントロールが苦手、無気力・無関心といった特徴のある「社会的行動障害」があります。

周囲の人は、一つの行動ごとに声を掛けたり、急な予定変更を避けるなどの工夫が望まれます。

配慮の例

共通的な配慮

不安を感じることのないように、できるだけ穏やかな応対をすること。

精神障害のある人の中には、ストレスに弱かったり、対人関係やコミュニケーションが苦手な人が多くいます。また、何かの拍子に興奮したりパニックになったりする人もいます。できるだけゆっくり穏やかに話すことが望まれます。

また、もしも興奮して周りに迷惑をかけるようなことがあっても、責めたりせず、ゆっくりやさしい口調で話しかけ落ち着かせるように心がけることが望まれます。

精神障害のある人と話す際に、「わかりやすく」「ゆっくりと」「簡潔に」「具体的なことばで」話すこと。

長いことばや説明はよく理解できなかったり、ことばの一部分に注意が向いて要点を理解することに困難を来すことがあります。できるだけ短いことばでゆっくり繰り返し説明することが望まれます。

また、「もう少し後で」といったあいまいな内容ではなく、「○○分後で」と具体的なことばで話すことが望まれます。

否定的なことばではなく、肯定的なことばで話しかけること。

精神障害のある人の中には、否定的な言動に過敏な人や、具体的にどうすればよいかを伝えると理解しやすい人が多くいます。そのため「○○してはだめ」ではなく「○○しましょう」と肯定的なことばで話しかけることが望まれます。

サービス窓口、店舗、病院、事業所などでの配慮

入口や受付付近などでどうしていいかわからずにいる様子のとき、やさしく声をかけること。

初めての場所や、初対面の人と話す際、精神障害のある人は非常に緊張してしまうことがあります。また、いつも人に見られているように感じることもあり、自分から声をかけることは苦手な人がいます。

声をかけず様子だけみていると、じろじろ見られていることを意識し、一層戸惑うことがあります。不安や緊張感をほぐし、気軽に話ができるようやさしい声かけが望まれます。

精神障害のある人と話す際に、相手がゆっくり考えてことばを返すことができるよう、あせらずに待つこと。

精神障害のある人は、用件の切り出し方がよくわからない、あるいは苦手で、質問に対しても答えが返ってくるのに時間がかかることがあります。安心して話ができるよう、せかさず、余裕を持ってよく話を聞くことが望まれます。

相手が理解しているか確認しながら、よりわかりやすいことばに言いかえる工夫をすること。

専門用語や略語など本人にとってなじみのないことばを使うと、さらに緊張したり混乱し、来所・来店等の目的や用件が話せなくなってしまうことがあります。

商品やサービスなどの説明をする際、ことばだけでなく、具体的な物や絵、メモなどを用いるなど、本人にわかりやすい方法で説明すること。

精神障害のある人の中には、耳で聞いて理解するより、目で見て理解する方が得意な人が多くいます。また、口頭の説明だけでは要点をつかみきれないことがあります。要点となることばや地名、氏名、日時、持ち物などをメモに書いたり、具体的な物や絵を用いることにより要点や手続の順序などがわかりやすくなります。

書類の記入に時間がかかる場合に、ゆっくり書けるように、人目の少ない場所などに案内すること。

単純な○×ではなく、文章を考えて書いたりするときは非常に時間がかかることがあります。落ち着いてゆっくり書けるよう配慮が必要です。

また、書類の記入に困っているようであれば、できる範囲で代筆などの手伝いを申し出たり、記入例を示すなどの配慮も望まれます。

家族や支援者等に連絡する際には、本人に確認してから連絡を取ること。

各種サービス窓口等において、家族や支援者等の支援が必要になる場合は、プライバシーの保護などのため本人の同意を得、本人の前で連絡を取るなどの配慮が望まれます。

労働者の募集・採用、採用後の配慮

面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。

仕事の手順等をことばで説明するだけでなく、図や絵を活用して作業手順をわかりやすく示した業務マニュアルを作成すること。また、業務の優先順位や目標、スケジュールを明確にし、指示を一つずつ出すなどの工夫を行うこと。

一つひとつ区切って指示を受けることができれば、仕事を覚えやすくなります。その際、「何時までに」「何を」するのかや優先順位などを具体的に伝えます。

また、本人を前にゆっくりやってみたり、実際に本人にやってもらって十分に理解できたか確認することが望まれます。ことばで説明するだけではわからなくても、実際に身体を動かして手順を示したり、見本を示すと覚えやすくなります。

体調に配慮した出退勤時刻や休暇・休憩、通院等とともに、障害のある人本人の負担の程度や能力に応じて、業務内容や業務量、配置する職場などに配慮すること。

単に業務量や勤務時間を調節するだけではなく、能力に応じた仕事内容とし、できるだけ本人のペースに任せることや、良い面をみつけて努力を評価し「できるはずだ」と信じて見守るなど、信頼関係を構築していける配慮が望まれます。

必要以上に「がんばれ」などと励まさないようにすること。

励まされることが本人のストレスになることがあります。

本人の体調を気づかい、「少し休みましょう」「体調はどうですか」などの声をかけること。

精神障害のある人の中には、まじめで責任感が強く、周囲に気を遣いすぎてしまう人が多くいます。小さな配慮が心の安定につながります。

本人のプライバシーや意向にも十分配慮し、業務指導や各種相談に関する担当者を定めること。

精神障害のある人には、病気のことを他人に知られたくないと思っている人も多くいます。安心して相談することができるようにあらかじめ担当者を定めておくことが望まれます。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

精神障害のある人には、体調や能力に応じて業務内容や業務量等の調整などが必要な人がいます。他の労働者と共に適切に業務を遂行するため、必要な範囲で、障害の内容や必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

学校での配慮

写真や図面の活用など、視覚を活用した情報提供をすること。

読み書きに困難がある場合、拡大文字を用いた資料、コンピュータの読み上げなど、障害のある人本人の障害の状態に合わせた方法で情報を提供するとともに、書く時間の確保や、パソコンなどの機器を利用して文章を書くなどの手だてを講じること。

掲示物の整理整頓、メモ等の視覚情報の活用など、伝達する情報を整理して提供すること。

教室において、余分なものを覆うカーテンを設置して必要な情報だけが届くように工夫したり、視覚的にわかりやすく表示したりすること。

黒板に1日の予定を書いて、いつでも確認できるようにすること。

発達障害のある児童・生徒など、次に何をするのかわからないと不安になる児童・生徒がいます。また、予定の変更など急な変化が苦手な児童・生徒もいます。できるだけ前もって見通しが持てるよう示すことが望まれます。

本人のプライバシーや意向に配慮した上で、他の児童・生徒に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

障害のあらわれ方は人によって様々です。他の児童・生徒と共に学校生活を送るため、どんなことで困るのかや必要な配慮等を知ってもらうことが望まれます。

相談体制と助言、あっせんの仕組み

この条例では、実際に障害を理由とした不利益取扱い等の個別の事案が生じた場合、罰則を設けて対処するのではなく、まずは第三者的立場の相談員が相談を受け、その相談員を交えた話し合いを通じて、事案の当事者同士が相互に理解を深める中で解決を図っていくことを目指しています。

そこで、条例では、こうした事案について、身近な地域で相談出来る体制を整備するため、地域の身近な相談役である「地域相談員」を配置するとともに、より広域的・専門的に相談に応じる「広域専門相談員」を配置することとしています。

これらの相談員は、公平・客観的な立場で相談を受けながら、その内容によっては、必要な事実確認を行い、当事者それぞれの意見を十分に聴き、事案解決のための助言をする中で解決策を検討します。

また、「不利益取扱い」に関して、相談員による解決が困難な場合は、障害のある人などからの求めにより、「京都府障害者相談等調整委員会」が当事者それぞれの意見を十分に聴きながら、助言・あっせんによる解決を図ります。

条例では、特定相談や助言・あっせんの申立をすることができる方について、「障害者及びその家族その他の関係者」と定めていますが、個別の対象事案の当事者である事業者からの相談を除き、その相談内容は不利益取扱い等を受けた障害のある人本人の意向に沿ったものでなければなりません。そのため、できる限り不利益取扱い等を受けた障害のある人本人から相談を受けることが望まれます。

特定相談、助言・あっせんの申立をすることができる方

不利益取扱い等を受けた障害のある人本人

不利益取扱い等を受けた障害のある児童・生徒の保護者

家族、成年後見人等、意思疎通が困難な不利益取扱い等を受けた障害のある人の法定の代理人

障害のある人本人に同行し、意思疎通が困難な不利益取扱い等を受けた障害のある人の意思疎通を支援する者(手話通訳者、要約筆記者等)

不利益取扱い等をしたとされる事業者等

条例の逐条解説

前文

全ての者が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される社会が実現されることは、我が国だけでなく、全ての人類の共通の思いである。

私たちの住む京都においても、府民一人ひとりが、このような思いを持って、その尊厳が重んじられるとともに、その基本的人権が尊重され、相互に思いやりの心でつながり、支え合う地域社会を築くために、先人たちによりたゆまぬ努力が重ねられてきた。

しかしながら、障害者が、障害を理由として不当な差別的取扱いを受けたり、障害者に対する性別、年齢や障害の状態に応じた配慮が十分でないことなどにより、地域における安心した生活を妨げられたりしている状況が、私たちの社会には今なお存在する。

そして、こうした状況の背景には、障害者の社会参加を制約する物理的な障壁や障害に関する理解の不足から生じる誤解、偏見等の意識上の障壁など、様々な社会的障壁がある。

こうした状況において、全ての府民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら、共に安心していきいきと暮らしやすい共生社会を実現するためには、共生社会の推進に取り組むそれぞれの主体が連携及び協働をして、障害を理由として差別することその他の障害者の権利利益を侵害する行為をなくすとともに、社会的障壁を取り除き、全ての府民の障害への理解を十分に深めて、障害者の社会参加を支援する取組を推進することが必要である。

このような認識の下に、私たちは、共生社会の実現を強く念願し、障害者の権利に関する条約、障害者基本法、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律等の趣旨を踏まえ、共生社会の推進に関し基本理念等を定め、その取組を府、府民、事業者及び市町村、国その他の関係機関が一体となって総合的かつ計画的に推進するため、この条例を制定する。

趣旨

前文では、府民へのメッセージとして、全ての府民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら、共に安心していきいきと暮らせる共生社会を実現することを目的として制定された本条例の趣旨を明らかにしています。

ここでは、障害者が毎日の生活を送る上で支障となる様々なバリア(この条例では「社会的障壁」といいます。)があることによって、障害者が地域で安心して生活することや、社会活動に参加することが十分にできていない現状に触れ、全ての府民が共に安心していきいきと暮らせる共生社会をつくるためには、府民一人ひとりがそれぞれの立場で、協力し合い、社会的障壁をなくしていくなどの取組を進めていく必要があることを述べています。

そして、このような認識を全ての府民が共通のものとし、共生社会を実現するために、府、府民、事業者、市町村など、みんなが協力してその取組を進めていく決意を述べています。

解説

前文は、規範性を持つものではありませんが、条例の一部をなすものであり、各条文は、前文の趣旨に沿って運用される必要があります。

「共生社会」とは、全ての府民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会をいいます。

第1章 総則

定義

第1条この条例において「障害者」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

2 この条例において「社会的障壁」とは、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

趣旨
第1項で、この条例の対象となる「障害者」の範囲を明らかにするとともに、第2項では、「障害者」の定義中に用いられている「社会的障壁」を定義しています。
解説

第1条全般

これまで、障害者が日常生活等において受ける制限は、本人が有する心身の機能の障害に起因するものとしてとらえる考え方が一般的でしたが、近年では、障害者が受ける制限は機能障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるとするいわゆる「社会モデル」の考え方が浸透しつつあります。

この条例では、「障害者」の定義をはじめ、条例全体にわたって「社会モデル」の視点を取り入れています。

第1項関係

この条例において「障害者」とは、1心身の機能の障害があること、2障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあることのいずれにも該当する者と定義しています。

1の「心身の機能の障害」には、条文中に明示されている「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)」に限らず、高次脳機能障害、難病や慢性疾患による心身の機能の障害などを幅広く含みます。

また、「障害者」の定義には、年齢等による制限は設けておらず、障害児もこの条例の対象となります。

2の「継続的に」には、症状が連続している場合のほか、断続的な場合、周期的な場合も含みます。ただし、治癒することが見込まれる一時的な怪我等は除きます。

例えば、骨折等で一時的に「心身の機能の障害があること」に該当した場合であっても、「継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態」には該当しないため、この条例の障害者の定義には含まれません。

第2項関係

「社会的障壁」とは、障害のある者の日常生活又は社会生活に制限をもたらす原因となる一切のものであり、条文中に明示されている「事物、制度、慣行、観念」のほか、これらのいずれに該当するか判然としないものやこれら以外のものも含みます。

なお、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念の具体的な例は次のとおりです。

「事物」道路や建築物の段差(肢体不自由がある者にとっての物理的な障壁)など

「制度、慣行」 申込み方法を電話のみに限った通信販売(聴覚障害者にとって障壁となる制度、慣行)、契約書類等の代筆を認めず自署を求めること(視覚障害者にとって障壁となる制度、慣行)など

「観念」障害に関する理解の不足から生じる誤解、偏見(障害者にとっての意識上の障壁)など

参考

「障害者」「社会的障壁」の定義については、法との整合を図るため、「障害者基本法」「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成28年4月1日施行)に準じた規定としています。

障害者基本法(昭和45年法律第84号)

定義

第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1)障害者身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(2)社会的障壁障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

基本理念

第2条 共生社会(全ての府民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会をいう。以下同じ。)の推進は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。

全て障害者は、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。

全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。

全て障害者は、障害のある女性が障害及び性別による複合的な原因により特に困難な状況に置かれる場合等、その性別、年齢等による複合的な原因により特に困難な状況に置かれる場合においては、その状況に応じた適切な配慮がなされること。

障害及び社会的障壁に係る問題は、障害の有無にかかわらず、全ての府民の問題として認識され、その理解が深められること。

共生社会を推進するための取組は、府、府民、事業者及び市町村、国その他の関係機関(以下「市町村等」という。)の適切な役割分担並びに相互の連携及び協働の下に行われること。

趣旨

この条例に基づき共生社会を推進していく上での、基本的な考え方を規定しています。

解説

第2条全般

基本理念は、直接に実体的な効力を生じさせるものではありませんが、この条例を運用する上での指針となる重要な規定です。

柱書き部分で、全ての障害者が、障害者でない者と等しく権利の主体であることを確認した上で、第1号から第6号に、具体的な事項を規定しています。

第1号・第2号関係

全ての障害者が、障害者でない者と等しく、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるべきこと、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保されるべきこと等を規定しています。

上記の機会を確保するために、関係者には、単に「排除しない」という不作為(不利益取扱いをしないこと)のみならず、機会の確保が実質的に担保されるよう、「機会を確保するに当たっての障壁を排除する積極的な行為」(合理的配慮の提供)が求められることもあります。

このことについては、第2章第1節「不利益取扱いの禁止等」で、具体的に規定しています。

第3号関係

意思疎通は、日常生活及び社会生活を営む上での基本であり、第1号及び第2号の機会が確保されるためには、障害者が必要な情報を取得でき、自らの意思を関係者に伝えられることが前提となります。

その際に必要とされる意思疎通のための手段は、障害の特性により様々であるため、その手段の確保及び選択の機会の拡大が図られるべきことを規定しています。

また、「意思疎通のための手段」の例示として、「言語(手話を含む。)」と規定し、手話は言語であることを明示しています。

なお、第6条第8号で、障害者に情報を提供し、又は障害者から情報を受ける場合における不利益取扱いについて具体的に規定しています。

第4号関係

障害のある女性への性的嫌がらせ等をはじめ、障害者は、障害があること及びその他の原因が複合して、特に困難な状況に置かれる場合があります。

このような場合には、障害があることのみならず、対象者の置かれた状況を総合的に考慮して、その状況に応じた適切な配慮がなされるべきことを規定しています。

なお、この号に規定する配慮に関することは、第9条に規定する特定相談の対象としています。

第5号関係

障害者の社会参加を制約する様々な障壁は、障害に関する理解の不足に起因している場合が多くあると考えられます。

また、今は障害のない人も、誰もが病気になり、怪我をする可能性があり、年をとり身体機能が衰えることを考えると、障害者が暮らしやすい共生社会は、全ての府民にとって暮らしやすい社会であると考えられます。

そのような認識の下、障害及び社会的障壁に係る問題は、障害の有無にかかわらず、全ての府民の問題として認識され、その理解が深められるべきことを規定しています。

なお、第20条で、障害への理解の促進のために、府が啓発活動を行う旨を規定しています。

第6号関係

共生社会の推進は、府民一人ひとりの意識に働きかけ、社会の在り方を変えようとする取組であることから、府内の全ての主体が適切な役割分担並びに相互の連携及び協働の下に行われるべきことを規定しています。

参考

第1号から第3号までは、法との整合を図るため、「障害者基本法」に準じた規定としています。第4号から第6号までは、この条例独自の規定です。

障害者基本法(昭和45年法律第84号)

地域社会における共生等

第3条 第1条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。

(1)全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

(2)全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。

(3)全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。

府の責務

第3条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、共生社会を推進するための施策(以下「共生社会推進施策」という。)を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。

2 府は、共生社会推進施策の策定及び実施に当たっては、府民、事業者及び市町村等と連携し、及び協働して取り組むものとする。

趣旨

府の基本的な責務として、共生社会を推進するための施策の策定及び実施について規定しています。

解説

第1項関係

共生社会を推進するための施策は、福祉分野だけでなく、日常生活及び社会生活の様々な分野に関係します。府は、これらの各分野の幅広い施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施することとしています。

第2項関係

共生社会を推進するための施策の策定及び実施に当たって、府が他の主体と連携し、及び協働する旨を規定し、前文、基本理念(第2条第6号)の具体化を図っています。

府民の責務

第4条 府民は、基本理念に関する関心と理解を深めるとともに、府が実施する共生社会推進施策に協力するよう努めるものとする。

趣旨

府民の責務として、基本理念に関する関心と理解を深めること及び府が実施する共生社会を推進するための施策に協力することについての努力義務を規定しています。

解説

障害者の社会参加を制約する様々な障壁は、障害に関する理解の不足に起因している場合が多くあると考えられることから、これらの障壁を解消するため、全ての府民に、この条例の基本理念に関する関心と理解を深める努力義務がある旨を規定しています。

また、前条第2項の規定に対応して、全ての府民に、府が実施する共生社会を推進するための施策に協力すること(それぞれの立場でできる配慮を行うことなど)を求めています。

社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備

第5条 府及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自らの設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。

趣旨

府及び事業者の責務として、不特定の障害者を対象に行われる改善措置(環境の整備)を行うことについての一般的な努力義務を規定しています。

解説

第8条第1項に規定する配慮(合理的配慮)は、障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて個別的に提供されるものであるのに対し、ここでは、不特定の障害者を対象に行われる事前的な改善措置を「環境の整備」として規定しています。

「環境の整備」には、不特定の障害者を対象に行われる改善措置であれば、施設のバリアフリー化などハード面に関することに限らず、障害に関する理解の促進を図るための職員研修などソフト面に関することも含みます。

なお、第5条は、合理的配慮を的確に行うための環境整備に努めることについて、府及び事業者の一般的な責務として規定するものであり、既存の法や条例による規制等に影響を及ぼすものではありません。

参考

第5条は、法との整合を図るため、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に準じた規定としています。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)※平成28年4月1日施行

社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備

第5条 行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自らの設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。

第2章 障害者の権利利益の擁護のための施策

第1節 不利益取扱いの禁止等

不利益取扱いによる障害者の権利利益の侵害の禁止

第6条 府及び事業者は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第7条 第1項又は第8条第1項の不当な差別的取扱いに該当する、次に掲げる取扱いをはじめとする障害を理由とした不利益な取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

趣旨

第1節は、不利益取扱いによる障害者の権利利益の侵害の禁止(第6条、第7条)及び社会的障壁の除去のための合理的な配慮(第8条)について規定しています。

第6条は、府及び事業者に対して、障害を理由とした不利益な取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。

解説

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)は、第7条第1項で行政機関等に対して、第8条第1項で事業者に対して、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害することを、それぞれ禁止しています。

しかし、障害者差別解消法においては、具体的にどのような行為が不当な差別的取扱いに該当するかは規定されていません。

そのため、意図せずにこのような行為を行ってしまっていることも多いと考えられ、共生社会の実現に向けて、具体的にどのような行為がこれに当たるのかについて、府民が共通の認識を持つことができるようにすることが必要です。

この条例では、日常生活及び社会生活の様々な場面を、次に掲げる8分野に分類した上で、不利益取扱いに該当する行為を具体的に示しています。

なお、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)に関連の深い「労働分野」については、他の分野と条を分け、第7条として規定しています。

ただし、その行為について合理的な理由が存在する場合、この条例による不利益取扱いには該当しません。

8分野

1福祉(第6条第1号、第2号)

2医療(第6条第3号)

3商品販売・サービス提供(第6条第4号)

4教育(第6条第5号)

5建物・公共交通(第6条第6号)

6住宅(第6条第7号)

7情報・コミュニケーション(第6条第8号)

8労働(第7条)

また、第6条柱書き部分については、障害者差別解消法施行までの間(平成28年3月31日まで)は、附則第2項の経過規定により、「府及び事業者は、次に掲げる不利益な取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」と読み替えられます。

なお、第6条及び第7条に違反する取扱いに関することは、第9条において特定相談の対象としているほか、第14条の規定により助言又はあっせんを求めることができます。

参考

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)

行政機関等における障害を理由とする差別の禁止

第7条 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

2(略)

事業者における障害を理由とする差別の禁止

第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

2(略)

第6条第1号・第2号:福祉分野における不利益取扱い

1 障害者に社会福祉法(昭和26年法律第45号)第2条第1項に規定する社会福祉事業に係る福祉サービス(以下「福祉サービス」という。)を提供する場合において、当該障害者に対して、その生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、福祉サービスの提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。

2 障害者に障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条第1項に規定する障害福祉サービスを提供する場合において、当該障害者に対して、同条第16項に規定する相談支援が行われた場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、当該障害者の意に反して同条第1項に規定する厚生労働省令で定める施設若しくは同条第11項に規定する障害者支援施設に入所させ、又は同条第15項に規定する共同生活援助を行う住居に入居させること

趣旨

福祉分野における不利益取扱いについて規定しています。

解説

第1号関係

障害者に福祉サービスを提供する場合において、障害を理由とした不利益取扱いに該当する行為を規定しています。

不利益取扱いに当たらない合理的な理由の例として、「その生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合」を挙げていますが、その具体的な例としては、福祉サービスの提供中に本人の体調が急変し、福祉サービスの提供を中止して医療を受けさせる必要がある場合などが考えられます。

なお、この号の規定は、障害福祉サービスに限らず、社会福祉法第2条第1項に規定する社会福祉事業に係る福祉サービスを広く対象とするものですが、例えば、障害福祉サービスについては、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業の人員等の基準等に関する基準について」等で、サービス提供を拒むことができる「正当な理由がある場合」が規定されています。

第2号関係

どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことは、この条例の基本理念として第2条第2号に掲げる重要な事項であり、この号では、本人の意に反して特定の施設等で生活させることを、不利益取扱いに該当する行為として規定しています。

不利益取扱いに当たらない合理的な理由の例として、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第5条第16項に規定する相談支援が行われた場合」を挙げていますが、この場合においても、また、その他の合理的な理由がある場合においても、可能な限り本人の意思を尊重するよう努めることが求められます。

なお、「障害者総合支援法第5条第15項に規定する共同生活援助を行う住居」(いわゆるグループホーム)は、地域における住まいの場として位置付けられるものですが、本人の自己決定を尊重する観点から、当該障害者の意に反してこれに入居させることも、不利益取扱いに該当する行為として規定しています。

参考

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成18年12月6日障発第1206001号)

第三 居宅介護、重度訪問介護、同行援護及び行動援護

3運営に関する基準

(3)提供拒否の禁止(基準第11条)

指定居宅介護事業者は、原則として、利用申込みに対して応じなければならないことを規定したものであり、特に、障害支援区分や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することを禁止するものである。提供を拒むことのできる正当な理由がある場合とは、

1当該事業所の現員からは利用申込みに応じきれない場合

2利用申込者の居住地が当該事業所の通常の事業の実施地域外である場合

3 当該事業所の運営規程において主たる対象とする障害の種類を定めている場合であって、これに該当しない者から利用申込みがあった場合、その他利用申込者に対し自ら適切な指定居宅介護を提供することが困難な場合

4 入院治療が必要な場合

である。(※他の障害福祉サービスについても準用により同様に規定)

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準について(平成19年1月26日障発第0126001号)

第三指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準

3 運営に関する基準

(3)提供拒否の禁止(基準第9条)

指定障害者支援施設等は、原則として、利用申込みに対して応じなければならないことを規定したものであり、特に、障害支援区分や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することを禁止するものである。提供を拒むことのできる正当な理由がある場合とは、

1 当該指定障害者支援施設等の利用定員を超える利用申込みがあった場合

2 入院治療の必要がある場合

3 当該指定障害者支援施設等が提供する施設障害福祉サービスの主たる対象とする障害の種類を定めている場合、その他利用者に対し自ら適切な施設障害福祉サービスを提供することが困難な場合である。

第6条第3号:医療分野における不利益取扱い

3 障害者に医療を提供する場合において、当該障害者に対して、次に掲げる取扱いをすること。

ア 当該障害者の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、医療の提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。

イ 法令に特別の定めがある場合を除き、その障害を理由として、当該障害者の意に反して長期間の入院による医療を受けることを強制し、又は隔離すること。

趣旨

医療分野における不利益取扱いについて規定しています。

解説

ア関係

障害者に医療を提供する場合において、障害を理由とした不利益取扱いに該当する行為を規定しています。

不利益取扱いに当たらない合理的な理由の例として、「当該障害者の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合」を挙げていますが、その具体的な例としては、歯の治療を行う際に、障害のある人本人がパニックを起こしてしまい、治療を継続すると口腔内を傷つけてしまう場合などが考えられます。

なお、医師及び歯科医師には、医師法第19条第1項及び歯科医師法第19条第1項で、「診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」とする、いわゆる応召義務が課されていますが、各法にいう「正当な事由」がある場合には、「その障害を理由として、医療の提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること」には該当しません。

イ関係

障害を理由として、障害者の意に反して長期間の入院による医療を受けることを強制すること等は、第6条第2号に規定する場合と同様に、第2条第2号の基本理念に反する行為であると考えられるため、これらを不利益取扱いに該当する行為としています。

なお、不利益取扱いに当たらない「法令に特別の定めがある場合」には、

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第29条の規定による「措置入院」

同法第29条の2の規定による「緊急措置入院」

同法第33条の規定による「医療保護入院」

同法第33条の7の規定による「応急入院」

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律第43条の規定による「入院医療」が該当します。

また、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第20条の規定による「任意入院」は、「法令に特別の定めがある場合」には該当しませんが、同法第21条第3項又は第4項の規定により一時的に退院させない場合は、「法令に特別の定めがある場合」に該当することとなります。

参考

医師法(昭和23年法律第201号)

第19条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

2 略

歯科医師法(昭和23年法律第202号)

第19条 診療に従事する歯科医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

2略

医療法・医師法解(厚生省健康政策局編1994年)

「正当な事由」がある場合とは、医師の病気により診療が不可能な場合、休日・夜間診療所などによる急患診療が確保されている地域で休日、夜間など通常の診療時間以外の時間に来院した患者(症状が重篤である等直ちに必要な応急の措置を施さねば生命、身体に重大な影響が及ぶおそれがある患者を除く。)に対して休日・夜間診療等で診療を受けるよう指示する場合等社会通念上妥当と認められる場合に限られる。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号)

第20条 精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。

第21条 略

2 精神科病院の管理者は、自ら入院した精神障害者(以下「任意入院者」という。)から退院の申出があつた場合においては、その者を退院させなければならない。

3 前項に規定する場合において、精神科病院の管理者は、指定医による診察の結果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは、同項の規定にかかわらず、72時間を限り、その者を退院させないことができる。

4 前項に規定する場合において、精神科病院(厚生労働省令で定める基準に適合すると都道府県知事が認めるものに限る。)の管理者は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、指定医に代えて指定医以外の医師(医師法(昭和23年法律第201号)第16条の4第1項の規定による登録を受けていることその他厚生労働省令で定める基準に該当する者に限る。以下「特定医師」という。)に任意入院者の診察を行わせることができる。この場合において、診察の結果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは、前2項の規定にかかわらず、12時間を限り、その者を退院させないことができる。

都道府県知事による入院措置

第29条 都道府県知事は、第27条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは、その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

2~4 略

第29条の2 都道府県知事は、前条第1項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について、急速を要し、第27条、第28条及び前条の規定による手続を採ることができない場合において、その指定する指定医をして診察をさせた結果、その者が精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは、その者を前条第1項に規定する精神科病院又は指定病院に入院させることができる。

2 都道府県知事は、前項の措置をとつたときは、すみやかに、その者につき、前条第1項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。

3 第1項の規定による入院の期間は、72時間を超えることができない。

4 略

医療保護入院

第33条 精神科病院の管理者は、次に掲げる者について、その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。

(1)指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの

(2)第34条第1項の規定により移送された者

2~7 略

応急入院

第33条の7 厚生労働大臣の定める基準に適合するものとして都道府県知事が指定する精神科病院の管理者は、医療及び保護の依頼があつた者について、急速を要し、その家族等の同意を得ることができない場合において、その者が、次に該当する者であるときは、本人の同意がなくても、72時間を限り、その者を入院させることができる。

(1)指定医の診察の結果、精神障害者であり、かつ、直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの

(2)第34条第3項の規定により移送された者

2~7略

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号)

入院等の決定

第42条 裁判所は、第33条第1項の申立てがあった場合は、第37条第1項に規定する鑑定を基礎とし、かつ、同条第3項に規定する意見及び対象者の生活環境を考慮し、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める決定をしなければならない。

(1)対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせてこの法律による医療を受けさせる必要があると認める場合医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定

(2)(3) 略

2 略

入院等

第43条 前条第1項第1号の決定を受けた者は、厚生労働大臣が定める指定入院医療機関において、入院による医療を受けなければならない。

2~4略

第6条第4号:商品販売・サービス提供分野における不利益取扱い

(4) 障害者に商品を販売し、又はサービスを提供する場合において、当該障害者に対して、その障害の特性により他の者に対し提供するサービスの質が著しく損なわれるおそれがあると認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、商品の販売若しくはサービスの提供を拒み、若しくは制限し、又はこれらに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。

趣旨

商品販売・サービス提供分野における不利益取扱いについて規定しています。

解説

障害者に商品を販売し、又はサービスを提供する場合において、障害を理由とした不利益取扱いに該当する行為を規定しています。

ここでいう「サービス」には、有償無償を問わず、あらゆる商業サービス又は公共サービスを含みます。

不利益取扱いに当たらない合理的な理由の例として、「その障害の特性により他の者に対し提供するサービスの質が著しく損なわれるおそれがあると認められる場合」を挙げていますが、その具体的な例としては、コンサートや映画等の観客が静かにすることが必要な場所で、障害の特性により大声をあげてしまうため、他の観客に対し提供するサービスの質が著しく損なわれる場合などが考えられます。

第6条第5号:教育分野における不利益取扱い

(5)障害者に教育を行う場合において、当該障害者に対して、次に掲げる取扱いをすること。

ア 当該障害者の年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするために必要な指導又は支援を講じないこと。

イ 当該障害者及びその保護者(学校教育法(昭和22年法律第26号)第16条に規定する保護者をいう。以下同じ。)への意見聴取及び必要な説明を行わないで、又はこれらの者の意見を十分に尊重せずに、当該障害者が就学すべき学校(同法第1条に規定する小学校、中学校、中等教育学校(前期課程に限る。)又は特別支援学校(小学部及び中学部に限る。)をいう。)を決定すること。

趣旨

教育分野における不利益取扱いについて規定しています。

解説

ア関係

障害者基本法は、第16条第1項で「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。」と規定し、教育基本法は、第4条第2項で「国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。」と規定しています。

この条例では、これらの法令等の趣旨を受け、障害者の年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするために必要な指導又は支援を講じないことを、不利益取扱いに該当する行為として規定しています。

イ関係

障害者基本法は、第16条第2項で「国及び地方公共団体は、前項の目的(障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにすること)を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。」と規定しています。

また、法定代理人制度の趣旨からは、当該障害者が未成年の場合には、「その保護者」への意見聴取及び必要な説明を行えば足りるとも考えられますが、上記の障害者基本法の規定の他、児童の権利に関する条約は、第12条第1項で「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。」と規定しています。

この条例では、これらの法令等の趣旨を受け、当該障害者及びその保護者への意見聴取及び必要な説明を行わないで、又はこれらの者の意見を十分に尊重せずに、当該障害者が就学すべき学校を決定することを不利益取扱いに該当する行為として規定しています。

参考

学校教育法(昭和22年法律第26号)

第16条保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう。以下同じ。)は、次条に定めるところにより、子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う。

障害者基本法

教育

第16条 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、前項の目的を達成するため、障害者である児童及び生徒並びにその保護者に対し十分な情報の提供を行うとともに、可能な限りその意向を尊重しなければならない。

3・4 略

教育基本法(平成18年法律第120号)

教育の機会均等

第4条 略

2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。

3 略

児童の権利に関する条約(1990年発効・1994年批准)

第12条

1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。

2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

第6条第6号:建物・公共交通分野における不利益取扱い

(6)多数の者が利用する建物その他の施設又は公共交通機関を障害者の利用に供する場合において、当該障害者に対して、建物その他の施設の構造上又は公共交通機関の車両等の構造上やむを得ないと認められる場合、当該障害者の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、建物その他の施設若しくは公共交通機関の利用を拒み、若しくは制限し、又はこれらに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。

趣旨

建物・公共交通分野における不利益取扱いについて規定しています。

解説

多数の者が利用する建物その他の施設又は公共交通機関を障害者の利用に供する場合において、当該障害者の障害を理由とした不利益な取扱いに該当する行為を規定しています。

不利益取扱いに当たらない合理的な理由の例として、「1建物その他の施設の構造上又は公共交通機関の車両等の構造上やむを得ないと認められる場合」「2.当該障害者の生命又は身体の保護のためやむを得ないと認められる場合」を挙げていますが、1の具体的な例としては、施設や公共交通機関の物理的な構造上、車いすで中に入ろうとした場合に、施設等を損傷させてしまう場合など、2.の具体的な例としては、気圧の変化、酸素濃度の低下等により身体に悪影響を及ぼす機能障害のある者について、飛行機への搭乗を断る場合などが考えられます。

「多数の者が利用する建物その他の施設」とは、公的施設・民間施設を問わず、学校、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、ホテル、事務所、共同住宅、老人ホームその他の多数の者が利用する施設をいいます。

なお、この条例で対象となる施設について、規模の要件はありません。

「公共交通機関」とは、公営・民営を問わず、鉄道、路面電車、バス、船舶、航空機などをいいます。

第6条第7号:住宅分野における不利益取扱い

(7)不動産の取引を行う場合において、障害者又は障害者と同居する者に対して、建物の構造上やむを得ないと認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、不動産の売却若しくは賃貸、賃借権の譲渡若しくは賃借物の転貸を拒み、若しくは制限し、又はこれらに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。

趣旨

住宅分野における不利益取扱いについて規定しています。

解説

不動産の取引を行う場合において、障害者又は障害者と同居する者に対して、その障害を理由とした不利益な取扱いに該当する行為を規定しています。

第6条 各号の規定は、基本的には、障害者に対してその障害を理由として不利益な取扱いをすることを禁止するものですが、障害者と同居する者が不動産取引の主体(契約者)である場合でも、実質的に障害者本人が不利益を受けることとなるため、この号では、「障害者と同居する者」を対象に含めています。

不利益取扱いに当たらない合理的な理由の例として、「建物の構造上やむを得ないと認められる場合」を挙げていますが、その具体的な例としては、アパートの構造上、車いすでは中に入ることができないため、賃貸契約の申込みに応じられなかった場合などが考えられます。

第6条第8号:情報・コミュニケーション分野における不利益取扱い

(8)障害者に情報を提供し、又は障害者から情報の提供を受ける場合において、当該障害者に対して、次に掲げる取扱いをすること。

ア 当該障害者から情報の提供を求められた場合において、当該障害者に対して、当該情報を提供することにより他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められる場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、情報の提供を拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。

イ 当該障害者が意思を表示する場合において、当該障害者に対して、当該障害者が選択した意思表示の方法によっては当該障害者の表示しようとする意思を確認することに著しい支障がある場合その他の合理的な理由がある場合を除き、その障害を理由として、意思の表示を受けることを拒み、若しくは制限し、又はこれに条件を付し、その他不利益な取扱いをすること。

趣旨

情報・コミュニケーション分野における不利益取扱いについて規定しています。

解説

第8号全般

必要な情報を取得でき、また、自らの意思を関係者に伝えられることは、障害者が円滑に生活を営む上で非常に重要な要素であり、第8号の規定は、第6条の他の号に掲げる各分野をはじめ、日常生活及び社会生活のあらゆる場面において、常に留意されるべきものです。

求められる意思疎通の手段によっては、第8条に規定する合理的な配慮の提供が必要となる場合も考えられますが、その場合にも、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、合理的な配慮の提供について検討する必要があります。

ア関係

障害者から情報の提供を求められた場合において、その障害を理由とした不利益な取扱いに該当する行為を規定しています。

不利益取扱いに当たらない合理的な理由の例として、「当該情報を提供することにより他の者の権利利益を侵害するおそれがあると認められる場合」を挙げていますが、その具体的な例としては、障害者の求める情報の内容が第三者のプライバシーを侵害するような個人情報に該当するため、情報の提供に応じられなかった場合などが考えられます。

イ関係

障害者が意思を表示する場合において、その障害を理由とした不利益な取扱いに該当する行為を規定しています。

不利益取扱いに当たらない合理的な理由の例として、「当該障害者が選択した意思表示の方法によっては当該障害者の表示しようとする意思を確認することに著しい支障がある場合」を挙げていますが、その具体的な例としては、聴覚障害者が手話によるコミュニケーションを求めたが、手話を理解することができないため、筆談などの他の方法とするよう求めたものの、当該障害者が手話を用いることに固執した場合などが考えられます。

第7条 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。

2事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。

趣旨

労働分野における事業主の義務について規定しています。

解説

第7条全般

第6条は「府及び事業者」を対象とした規定としていますが、第7条については、法との整合を図るため、平成28年4月1日改正後の「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号)第34条及び第35条に準じた内容としており、「事業主」を対象とした規定としています。

「事業主」については、一般的には、会社などの法人組織の場合にはその法人そのものをいい、個人事業の場合はその事業主個人をいうとされていますが、「事業者」との法令上の明確な相違はありません。

第1項関係

労働者の募集及び採用の段階で、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならないことを規定しています。

第2項関係

採用後の労働者の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならないことを規定しています。

参考

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第69号)

事業主による措置に関する特例

第13条 行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによる。

障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)※平成28年4月1日改正後

障害者に対する差別の禁止

第34条 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。

第35条 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。

社会的障壁の除去のための合理的な配慮

第8条 府は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害者の保護者、後見人その他の関係者が当該障害者の代理人として行ったもの及びこれらの者が当該障害者の補佐人として行った補佐に係るものを含む。次項において同じ。)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

2事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、前項に規定する配慮をするように努めなければならない。

趣旨

社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮について規定しています。

解説

「社会的障壁」とは、第2条第2項で定義しているとおり、「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」をいいます。

「社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮」(合理的配慮)とは、社会的障壁を取り除くため、特定の障害者に対して個別の状況に応じて講じられるべき措置のことをいいます。

この合理的配慮を行うことについて、第1項では府の義務であることを、第2項では事業者の努力義務であることを、それぞれ規定しています。

いずれの項においても「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において」としているのは、合理的配慮は障害者の個別の状況に応じて講じられるべきものであり、配慮を求められる側から見て、当該者が障害者なのか、また、どのような配慮が必要とされているのかが分からない場合にまで、条例上の義務を発生させることは不合理であるためです。

ただし、障害の特性などから、障害者が自ら意思の表明を行うことが困難な場合も想定されるため、意思の表明には「障害者の保護者、後見人その他の関係者が当該障害者の代理人として行ったもの及びこれらの者が当該障害者の補佐人として行った補佐に係るものを含む」こととし、法定代理人以外の関係者が当該障害者の意思の表明を補佐する場合にも、障害者からの意思の表明として取り扱うこととしています。

なお、障害者からの意思の表明がない場合には条例上の義務は発生しませんが、必要とされている配慮が明らかな場合などは、自主的に必要な配慮を行うことが望ましいことは言うまでもありません。

また、合理的配慮の提供に当たっては、当該障害者が第2条第4号の「複合的な原因により特に困難な状況に置かれる場合」に該当しないかにも留意して、状況に応じた適切な配慮を検討する必要があります。

いずれの項においても「その実施に伴う負担が過重でないときは」としているのは、求められる配慮は多種多様であり、大きな金銭的負担や人的負担を要する場合も想定されるため、配慮を提供する側にとって過度の負担となる場合を除外しているものです。

「その実施に伴う負担が過重でないとき」の判断に当たっての考慮すべき要素としては、例えば、事業等の規模やその規模からみた負担の程度、財政状況、業務遂行に及ぼす影響などが考えられますが、様々な要素を総合的に勘案して、個々の事案に即して判断される必要があります。

なお、第8条の府及び事業者の合理的配慮に関することは、第9条において特定相談の対象としています。

参考

第8条は、法との整合を図るため、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」に準じた規定としています。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)

行政機関等における障害を理由とする差別の禁止

第7条 略

2行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

事業者における障害を理由とする差別の禁止

第8条 略

2事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

第2節 特定相談等

特定相談

第9条 障害者及びその家族その他の関係者は、知事に対し、障害者に関する次に掲げる相談(以下「特定相談」という。)をすることができる。

(1)第6条に規定する不利益な取扱いに関すること。

(2)第7条第1項の均等な機会及び同条第2項の不当な差別的取扱いに関すること。

(3)前条第1項に規定する配慮に関すること。

(4)第2条第4号に規定する配慮に関すること。

(5)当該障害者の障害を理由とする言動であって当該障害者に不快の念を起こさせるものに関すること。

(6)障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号)第3条の虐待に関すること。

2 知事は、特定相談があったときは、次に掲げる措置を講じるものとする。

(1)特定相談に応じ、関係者に必要な助言、情報の提供その他必要な援助を行うこと。

(2)特定相談に係る関係者の調整を行うこと。

(3)関係行政機関への通告、通報その他の通知を行うこと。

趣旨

第2節は、不利益取扱い等に関する相談について規定しています。

第9条では、相談の対象となる事項を明らかにするとともに、相談があった場合に知事が講じる措置について規定しています。

解説

第1項全般

知事に対して特定相談をすることができる「障害者及びその家族その他の関係者」とは、障害者本人のほか、保護者や後見人に限らない当該障害者の家族を含む、当該障害者の意思表示の補佐等を行う関係者を指します。

なお、「知事に対し」とは、特定相談に関して府を代表する機関が知事であることを示すものであり、実際の相談業務は、第10条に規定する地域相談員や第11条に規定する広域専門相談員が行うこととなります。

第1項第1号・第2号関係

第1号及び第2号は、不利益取扱いによる障害者の権利利益の侵害に関することが相談対象であることを示しています。

なお、「第6条に規定する不利益な取扱い」とは、附則第2項の経過規定により、

障害者差別解消法施行までの間(平成28年3月31日まで)においては、「次に掲げる不利益な取扱い(第6条各号に規定する不利益な取扱い)」を指し、

平成28年4月1日以降は、「障害者差別解消法第7条第1項又は第8条第1項の不当な差別的取扱いに該当する、次に掲げる取扱い(第6条各号に規定する不利益な取扱い)をはじめとする障害を理由とした不利益な取扱い」を指します。

第1項第3号関係

第3号は、合理的配慮に関することが相談対象であることを示しています。

なお、「前条(第8条)第1項に規定する配慮」とは、「社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮」を指し、第8条第2項の「前項に規定する配慮」も同じ語句を指しているため、合理的配慮を求められる者が府の場合も、事業者の場合も、この号に該当し、相談対象となります。

第1項第4号関係

第4号は、性別、年齢等による複合的な原因により特に困難な状況に置かれる場合における、その状況に応じた適切な配慮に関することが相談対象であることを示しています。

この配慮は、第8条第1項に規定する配慮(合理的配慮)として行われる場合が多いと考えられますが、基本理念に掲げる重要な事項であるため、相談対象となることを明示しているものです。

第1項第5号関係

第5号は、障害者に不快の念を起こさせる、当該障害者の障害を理由とする言動が相談対象であることを示しています。

第1号・第2号では、不利益取扱いによる障害者の権利利益の侵害に関することを相談対象としていますが、第5号では、具体的な権利利益の侵害に当たらないものであっても、障害者に不快の念を起こさせる言動が、障害者が日常生活や社会生活を営む上での障壁となっていることを考慮して、これを相談対象としています。

第1項第6号関係

第6号は、虐待に関することが相談対象であることを示しています。

障害者に対する虐待は、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(障害者虐待防止法)第3条で禁止されていますが、障害者虐待防止法の主な対象は、養護者による虐待、障害者福祉施設従事者等による虐待、使用者による虐待に限定されていることも踏まえ、これら以外も含めた虐待について、幅広く相談対象としているものです。

第2項全般

第1項各号に関する相談(特定相談)があった場合に、知事が講じる措置について規定しています。

第2項第1号関係

第2号の関係者の調整に先だって、相談内容の解決に必要な事実確認を行いながら、特定相談を行った者に対して、相談内容の解決のために助言及び情報提供を行うことを規定しています。

相談内容によっては、関係行政機関等、より適切な相談先に関する情報提供を行うことも含まれます。

第2項第2号関係

不利益取扱い等を受けたとする者と、行ったとされる者をはじめとする関係者との間に入り、個別にそれぞれの事情や意見を聞き、問題解決のための調整を行うことを規定しています。

また、「関係者の調整」には、他の相談機関等と連携して対応に当たる必要がある場合の当該機関など、両当事者以外の関係者との調整も含まれます。

第2項第3号関係

障害者虐待防止法第7条に基づいて養護者による障害者虐待に該当する事案を市町村に通報する場合や、犯罪行為と考えられる事案を警察に通報する場合をはじめ、第2号に規定する調整によって解決を図ることが適当でない内容のものについて、関係行政機関に通告、通報その他の通知を行うことを規定しています。

参考

障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号)

障害者に対する虐待の禁止

第3条 何人も、障害者に対し、虐待をしてはならない。

養護者による障害者虐待に係る通報等

第7条 養護者による障害者虐待(18歳未満の障害者について行われるものを除く。以下この章において同じ。)を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。

2 刑法(明治40年法律第45号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前項の規定による通報をすることを妨げるものと解釈してはならない。

地域相談員

第10条 知事は、次に掲げる者に、前条第2項に規定する措置に係る業務(以下「特定相談業務」という。)の全部又は一部を委託することができる。

(1)身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第12条の3第3項に規定する身体障害者相談員

(2)知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第15条の2第3項に規定する知的障害者相談員

(3)前2号に掲げる者のほか、障害者の福祉の増進に関し熱意と識見を持っている者であって知事が適当と認めるもの

2知事は、前項の規定による委託をしようとするときは、あらかじめ、京都府障害者相談等調整委員会の意見を聴かなければならない。

3 第1項の規定により委託を受けた者(以下「地域相談員」という。)は、中立かつ公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。

4地域相談員又は地域相談員であった者は、正当な理由なく、その委託を受けた業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

趣旨

特定相談業務等を行う地域相談員、広域専門相談員のうち、地域相談員について規定しています。

解説

第1項関係

第9条に規定する特定相談を行うに当たっては、障害のある人に関する相談及び人権擁護について一定の知識及び経験を有する者が、身近な地域で相談に応じることが求められます。

そのため、第1号及び第2号では、現に地域の身近な相談窓口として活動されている身体障害者相談員、知的障害者相談員に特定相談業務を委託できる旨を規定しています。

また、身体障害又は知的障害以外の障害のある方以外からの相談にも適切に対応するため、第3号では、「障害者の福祉の増進に関し熱意と識見を持っている者であって知事が適当と認めるもの」にも特定相談業務を委託できることとしています。

第2項関係

地域相談員は、一方の当事者の立場に偏ることなく、中立・公平な立場で対応できる者である必要があるため、第1項の委託をしようとするときは、あらかじめ「京都府障害者相談等調整委員会」の意見を聴くこととしています。

第3項関係

地域相談員が、実際に特定相談業務を遂行するに当たり、中立かつ公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない旨を規定しています。

第4項関係

地域相談員は、特定相談業務を行う中で、個人のプライバシーに深く関わることになりますが、相談員が知り得た秘密を守ることは、安心して相談できる体制を確保する上で不可欠です。

そのため、地域相談員に、特定相談業務の委託を受けている期間中だけではなく、その期間が終了した後についても、守秘義務を課しているものです。

参考

身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)

身体障害者相談員

第12条の3 市町村は、身体に障害のある者の福祉の増進を図るため、身体に障害のある者の相談に応じ、及び身体に障害のある者の更生のために必要な援助を行うこと(次項において「相談援助」という。)を、社会的信望があり、かつ、身体に障害のある者の更生援護に熱意と識見を持つている者に委託することができる。

2前項の規定にかかわらず、都道府県は、障害の特性その他の事情に応じた相談援助を委託することが困難であると認められる市町村がある場合にあつては、当該市町村の区域における当該相談援助を、社会的信望があり、かつ、身体に障害のある者の更生援護に熱意と識見を持つている者に委託することができる。

3 前2項の規定により委託を受けた者は、身体障害者相談員と称する。

4身体障害者相談員は、その委託を受けた業務を行うに当たつては、身体に障害のある者が、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第1項に規定する障害福祉サービス事業(第18条の2において「障害福祉サービス事業」という。)、同法第5条第17項に規定する一般相談支援事業その他の身体障害者の福祉に関する事業に係るサービスを円滑に利用することができるように配慮し、これらのサービスを提供する者その他の関係者等との連携を保つよう努めなければならない。

5身体障害者相談員は、その委託を受けた業務を行うに当たつては、個人の人格を尊重し、その身上に関する秘密を守らなければならない。

知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)

知的障害者相談員

第15条の2 市町村は、知的障害者の福祉の増進を図るため、知的障害者又はその保護者(配偶者、親権を行う者、後見人その他の者で、知的障害者を現に保護するものをいう。以下同じ。)の相談に応じ、及び知的障害者の更生のために必要な援助を行うこと(次項において「相談援助」という。)を、社会的信望があり、かつ、知的障害者に対する更生援護に熱意と識見を持つている者に委託することができる。

2前項の規定にかかわらず、都道府県は、障害の特性その他の事情に応じた相談援助を委託することが困難であると認められる市町村がある場合にあつては、当該市町村の区域における当該相談援助を、社会的信望があり、かつ、知的障害者に対する更生援護に熱意と識見を持つている者に委託することができる。

3 前2項の規定により委託を受けた者は、知的障害者相談員と称する。

4 知的障害者相談員は、その委託を受けた業務を行うに当たつては、知的障害者又はその保護者が、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第1項に規定する障害福祉サービス事業(第21条において「障害福祉サービス事業」という。)、同法第5条第17項に規定する一般相談支援事業その他の知的障害者の福祉に関する事業に係るサービスを円滑に利用することができるように配慮し、これらのサービスを提供する者その他の関係者等との連携を保つよう努めなければならない。

5知的障害者相談員は、その委託を受けた業務を行うに当たつては、個人の人格を尊重し、その身上に関する秘密を守らなければならない。

広域専門相談員

第11条 知事は、次に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができる者を、広域専門相談員として委嘱することができる。

(1)地域相談員に対する指導及び助言

(2)特定相談のあった事例の調査研究

(3)特定相談業務

2知事は、前項の規定による委嘱をしようとするときは、あらかじめ、京都府障害者相談等調整委員会の意見を聴かなければならない。

3広域専門相談員は、中立かつ公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。

4広域専門相談員は、正当な理由なく、業務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

趣旨

特定相談業務等を行う地域相談員、広域専門相談員のうち、広域専門相談員について規定しています。

解説

第1項関係

この条例では、身近な地域で相談に応じる地域相談員のほかに、専門的な見地から事案解決のために広域的に活動する広域専門相談員を置くこととしています。

広域専門相談員は、地域相談員に対して特定相談業務を行う上で必要な相談技術や専門的知識についての指導や助言を行う業務(第1号)、相談事例を集積し今後の相談活動の質の向上や制度改善に役立てるための調査研究を行う業務(第2号)を行うほか、解決が困難な事案等に直接対応することができるよう、特定相談業務(第3号)も行うこととしています。

なお、広域専門相談員は、地方公務員法第3条第3項第3号の特別職の地方公務員として、知事が委嘱します。

第2項関係

広域専門相談員は、その職務の重要性から、業務を行うための適性や中立性・公平性が確保される必要があるため、第1項の委嘱をしようとするときは、あらかじめ「京都府障害者相談等調整委員会」の意見を聴くこととしています。

第3項関係

広域専門相談員が、実際に特定相談業務を遂行するに当たり、中立かつ公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない旨を規定しています。

第4項関係

広域専門相談員は、その業務を行う中で、個人のプライバシーに深く関わることになりますが、相談員が知り得た秘密を守ることは、安心して相談できる体制を確保する上で不可欠です。

しかしながら、広域専門相談員は特別職の地方公務員であるため、一般職の地方公務員と異なり、地方公務員法上の守秘義務は適用されません。

そのため、広域専門相談員に、その職にある期間中だけではなく、職を退いた後についても、守秘義務を課しているものです。

また、広域専門相談員は相談事例の調査研究等の業務を行う中で、地域相談員と比して非常に多くの個人情報に接することになるため、守秘義務違反が起こらないよう担保する仕組みが必要です。

そのため、広域専門相談員の守秘義務違反については、第28条に罰則規定を置いています。

参考

地方公務員法(昭和25年法律第261号)

一般職に属する地方公務員及び特別職に属する地方公務員

第3条 略

2 略

3 特別職は、次に掲げる職とする。

(1)~(2)の2 略

(3)臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職

(4)~(6) 略

この法律の適用を受ける地方公務員

第4条 この法律の規定は、一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用する。

2この法律の規定は、法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない。

秘密を守る義務

第34条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。

2・3 略

指導及び助言

第12条 地域相談員は、特定相談業務について、必要に応じ、広域専門相談員に対し、指導及び助言を求めることができる。

2 広域専門相談員は、前項の規定による求めがあったときは、適切な指導及び助言を行うものとする。

趣旨

地域相談員と広域専門相談員の関係について規定しています。

解説

地域相談員に対する指導及び助言は、前条第1項第1号で、広域専門相談員が行う業務として想定していますが、この条では、第1項で地域相談員が広域専門相談員に指導及び助言を求めることができる旨を、第2項で広域専門相談員は地域相談員からの求めに応じて適正な指導及び助言を行う旨を明示し、地域相談員と広域専門相談員が事案解決のために密接に連携して活動することを規定しています。

連携及び協力

第13条 専門的知識をもって障害者に関する相談を受ける者は、府並びに地域相談員及び広域専門相談員と連携し、共生社会推進施策の実施に協力するよう努めるものとする。

趣旨

地域における連携・協力について規定しています。

解説

府内には、障害者総合支援法に規定する相談支援事業所をはじめとする相談機関や、民生委員・児童委員など、さまざまな機関や相談の仕組みがあります。

これらの機関等が特定相談に該当する相談を受けた場合には、必要に応じて地域相談員や広域専門相談員と連携・協力して、円滑に事案解決を図ることが望まれます。

また、共生社会を推進する上で、これらの機関等の協力は不可欠であると考えられることから、共生社会推進施策の実施全般において、府及び府が設置する相談員との連携・協力が図られることを期待しています。

第3節 不利益取扱いに関する助言又はあっせん等

助言又はあっせん

第14条 障害者は、第6条又は第7条の規定に違反する取扱い(以下「不利益取扱い」という。)を受けたと認めるときは、京都府障害者相談等調整委員会に対し、当該不利益取扱いに該当する事案(以下「対象事案」という。)の解決のために必要な助言又はあっせんを行うよう求めることができる。

2対象事案に係る障害者の保護者、後見人その他の関係者は、当該障害者が不利益取扱いを受けたと認めるときは、京都府障害者相談等調整委員会に対し、前項に規定する助言又はあっせんを行うよう求めることができる。ただし、当該求めをすることが明らかに当該障害者の意に反すると認められるときは、この限りでない。

趣旨

第3節は、不利益取扱いに該当する事案を解決するための助言又はあっせんの仕組み等について規定しています。

第14条では、助言又はあっせんの求めについて規定しています。

解説

第14条全般

助言又はあっせんの対象となるのは、第6条又は第7条の規定に違反する取扱い(不利益取扱い)に限定しています。

助言又はあっせんの手続きにおいては、知事による勧告(第17条)・公表(第18条)が行われる場合を定めています。勧告・公表は処分性を有するものではありませんが、特に公表は、社会的制裁としての効果が大きいため、何度促しても勧告に従わないなど、特に悪質な場合に限って公表することとしています。

不利益取扱いについては、第6条及び第7条に行ってはいけない行為を具体的に規定していますが、第8条の合理的配慮については、実施に伴う負担が過重でない場合に限り求められるものであり、必要とされる合理的配慮は多種多様であると考えられること、また、特に事業者に関しては努力義務にとどまることから、合理的配慮に関することを助言又はあっせんの対象とすることは適当でないと考えられるため、不利益取扱いのみを対象としているものです。

申立てを行うに当たっては、特定相談を経ることを条件とはしていませんが、事案の迅速かつ円滑な解決のため、まずは相談の仕組みを活用することが望まれます。

「助言」とは、事案の内容を十分に把握した上で、関係当事者による自主的な解決を促進するために、公正・中立な立場から行う助言をいいます。

「あっせん」とは、事案の内容を十分に把握した上で、具体的な解決策の案(あっせん案)を関係当事者に提示することにより双方の合意を形成し、事案の解決を図ることをいいます。

なお、この条の見出し「(助言又はあっせん)」は、第14条及び第15条共通の見出しです。

第2項関係

不利益取扱いを受けたと認める障害者が、自ら助言又はあっせんを求めることが困難な場合を想定し、当該障害者の関係者も、助言又はあっせんを求めることができることとしています。

「関係者」とは、保護者や後見人に該当しない、当該障害者の家族や親族などのことをいいます。

「当該障害者の意に反すると認められるとき」とは、不利益取扱いを受けたと認める障害者本人に、助言又はあっせんを求める意思がない場合をいいます。

第15条 京都府障害者相談等調整委員会は、前条の規定による求めがあったときは、助言又はあっせんを行うものとする。ただし、助言若しくはあっせんの必要がないと認めるとき又は対象事案の性質上助言若しくはあっせんを行うことが適当でないと認めるときは、この限りでない。

2 京都府障害者相談等調整委員会は、前項の規定による助言又はあっせんを行うに当たり、対象事案の当事者(以下「関係当事者」という。)その他の関係者に対し、必要な資料の提出又は説明を求めることその他の必要な調査を行うことができる。

3 京都府障害者相談等調整委員会は、第1項の規定による助言又はあっせんのため必要があると認めるときは、関係当事者の出席を求め、その意見を聴くことができる。

4 京都府障害者相談等調整委員会は、対象事案の解決に必要なあっせん案を作成し、これを関係当事者に提示することができる。

趣旨

第14条の規定による求めがあった場合に京都府障害者相談等調整委員会(調整委員会)が行う、助言又はあっせんについて規定しています。

解説

第1項関係

「助言若しくはあっせんの必要がないと認めるとき」とは、例えば、次のような場合をいいます。

助言又はあっせんの求めが行われた後に和解が成立し、対象事案が解決した場合

虚偽に基づく助言又はあっせんの求めがあった場合など、対象事案が発生していないことが明白である場合

「対象事案の性質上助言若しくはあっせんを行うことが適当でないと認めるとき」とは、例えば、次のような場合をいいます。

行政不服審査法の規定による審査請求ができる事案など、他の手段で解決することが適当である場合

裁判所で係争中の事案である場合

現に犯罪捜査の対象となっている事案である場合

事案の発生した日(継続性のある事案の場合は、その終了日)から3年を経過している場合(民法第724条を援用)

第2項関係

「対象事案の当事者(関係当事者)」には、不利益取扱いを受けたと認める障害者、不利益取扱いをしたとされる者のほか、第14条第2項の規定により助言又はあっせんを求めた者を含みます。

「関係者」には、関係当事者のほか、事案の解決のために資料の提出や説明を求める必要がある者を広く含みます。

第3項関係

調整委員会が、「関係当事者」に対して委員会への出席を求め、意見を聴くことができる旨を規定しています。

第4項関係

調整委員会の機能として、あっせん案の作成し、これを関係当事者に提示することができる旨を規定しています。

参考

行政不服審査法(昭和37年法律第160号)

処分についての審査請求

第5条 行政庁の処分についての審査請求は、次の場合にすることができる。

(1)処分庁に上級行政庁があるとき。ただし、処分庁が主任の大臣又は宮内庁長官若しくは外局若しくはこれに置かれる庁の長であるときを除く。

(2)前号に該当しない場合であつて、法律(条例に基づく処分については、条例を含む。)に審査請求をすることができる旨の定めがあるとき。

2 前項の審査請求は、同項第1号の場合にあつては、法律(条例に基づく処分については、条例を含む。)に特別の定めがある場合を除くほか、処分庁の直近上級行政庁に、同項第2号の場合にあつては、当該法律又は条例に定める行政庁に対してするものとする。

民法(明治29年法律第89号)

不法行為による損害賠償請求権の期間の制限

第724条不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

資料提供の要求等

第16条 京都府障害者相談等調整委員会は、前条第1項の規定による助言又はあっせんのため必要があると認めるときは、関係行政機関に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。

趣旨

調整委員会が、関係行政機関に対して、資料の提供のほか、必要な協力を求めることができる旨を規定しています。

解説

第9条に規定する特定相談を経て助言又はあっせんの求めがあった事案については、相談業務を通じて知事(府)が取得した情報が調整委員会に提供されることにより、事案が迅速かつ円滑に解決されることが期待されます。

しかしながら、調整委員会は、知事(府)とは別の機関であり、当該情報を取得するためには、その根拠となる規定が必要です。

そのため、「関係者」を対象とする第15条第2項の規定のほかに、「関係行政機関」を対象とする本条を置き、相互の連携を図ろうとするものです。

なお、上記の場合のほか、他の行政機関が設置する相談窓口での相談を経て第14条の助言又はあっせんの求めがあった際に、本条の規定により当該行政機関に協力依頼を行う場合も想定されますが、いずれの場合にも、情報の取得について事前に本人の同意を得るなど、個人情報の適正な取扱いが確保されるよう運用します。

勧告

第17条 京都府障害者相談等調整委員会は、知事に対し、次の各号のいずれかに該当する者に対して必要な措置を講じるべきことを勧告するよう求めることができる。

(1)正当な理由なく、第15条第2項の規定による調査を拒み、妨げ、又は忌避した関係当事者

(2)第15条第2項の規定による調査に対して虚偽の資料の提出又は説明を行った関係当事者その他の関係者

(3)第15条第4項の規定によるあっせん案が提示された場合において、不利益取扱いをしたと認められる関係当事者が、正当な理由なく、当該あっせん案を受諾しないときにおける当該関係当事者

2知事は、前項の規定による求めがあった場合において、必要があると認めるときは、当該求めに係る者に対し、必要な措置を講じるよう勧告することができる。

趣旨

知事による勧告について規定しています。

解説

第1項全般

調整委員会は、第1号から第3号にいずれかに該当する者について、必要な措置を講じるべきことを勧告するよう知事に求めることができる旨を定めています。

第1項第1号関係

「正当な理由」に該当する例としては、入院治療が必要な場合、天災など調査対象者の責任が問えない事情により調査に応じることができない場合などが挙げられます。

第15条第2項の規定による調査は「対象事案の当事者(関係当事者)その他の関係者」を対象としていますが、「調査を拒み、妨げ、又は忌避した」ことにより勧告・公表の対象となるのは「関係当事者」のみとしています。

関係当事者以外の関係者には、不利益取扱いが発生した現場に偶然居合わせた者なども含まれますが、このような者にまで調査への協力を強いることは適当でないためです。

関係当事者以外の関係者に対しては、調査の趣旨を十分に説明した上で、調査に協力いただくよう働きかけることになります。

第1項第2号関係

第1号の解説のとおり、「調査を拒み、妨げ、又は忌避した」ことより勧告・公表の対象となるのは「関係当事者」のみとしていますが、調査に対して「虚偽の資料の提出又は説明を行った」ことにより勧告・公表の対象となるのは、「関係当事者その他の関係者」としています。

虚偽の資料の提出又は説明は、事案解決の妨げとなる悪質な行為であるため、このような行為が行われないよう、関係当事者以外の関係者が行った場合についても、勧告・公表の対象としているものです。

第1項第3号関係

正当な理由なく、あっせん案を受諾しないことにより勧告・公表の対象となるのは、「不利益取扱いをしたと認められる関係当事者」のみとしています。

不利益取扱いを受けたとして助言又はあっせんを求めた障害者を勧告・公表の対象とすることは、個人情報保護の観点からも、安心して助言又はあっせんを求めることができる体制を整備する観点からも適当でないと考えられるためです。

第2項関係

知事が、前項各号のいずれかに該当するとして調整委員会から求めがあった場合に、勧告をすることができる旨を規定しています。

勧告は処分性を有するものではありませんが、正当な理由なく勧告に従わない場合には、社会的制裁としての効果が大きい公表の対象となることから、真に悪質な場合に限り勧告を行うことになります。

公表

第18条 知事は、前条第2項の規定による勧告を受けた関係当事者が、正当な理由なく、当該勧告に従わないときは、規則で定めるところにより、その旨を公表することができる。

2知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表に係る者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、その者又はその代理人の出席を求め、釈明の機会を与えるための意見の聴取を行わなければならない。

趣旨

知事による公表について規定しています。

解説

第1項関係

事案解決の仕組みは、第2節の特定相談においても、第3節の助言又はあっせんにおいても、当事者間の相互理解を促進し、歩み寄りを図ることによって自主的な解決を図ることを基本としており、公表は、この条例の実効性を担保するための最終的な手段です。

公表は、社会的制裁としての効果が大きいため、知事は、公表を行うに当たっては、関係当事者が勧告に従わなかった理由等を慎重に検討した上で、何度促しても勧告に従わないなど、特に悪質な場合に限って、公表することとしています。

「正当な理由」に該当する例としては、入院治療が必要な場合、天災など調査対象者の責任が問えない事情により勧告に従うことができない場合などが挙げられます。

第2項関係

公表は、京都府行政手続条例第1条第4号に規定する不利益処分には当たらないため、同条例に基づく聴聞手続の対象とはなりません。

しかし、公表は社会的制裁としての効果が大きいため、手続の慎重を期して、公表に係る者にから、あらかじめ意見の聴取を行うこととしています。

参考

京都府行政手続条例(平成7年京都府条例第2号)

定義

第1条この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1)~(3) 略

(4)不利益処分行政庁が、条例等に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。

ア~エ 略

(5)、(6) 略

京都府障害者相談等調整委員会

第19条 第10条第2項、第11条第2項、第14条から第16条まで及び第17条第1項に規定する事項のほか、知事の諮問に応じ障害者の権利利益の擁護のための施策に関する重要事項の調査審議を行わせるため、京都府障害者相談等調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。

2 調整委員会は、委員15人以内で組織する。

3 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。

(1)学識経験を有する者

(2)障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者

(3)事業者を代表する者

(4)前3号に掲げる者のほか、府の職員その他知事が適当と認める者

4委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

5委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

6前各項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

趣旨

助言又はあっせん等を行うために設置する「京都府障害者相談等調整委員会」について規定しています。

解説

第1項関係

調整委員会が所掌する事項は次のとおりです。

1 地域相談員の委託に際して、知事に意見を述べること(第10条第2項)

2 広域専門相談員の委嘱に際して、知事に意見を述べること(第11条第2項)

3 助言又はあっせん及びこれに必要な調査や協力依頼等を行うこと(第14条~第16条)

4 知事に対し、勧告するよう求めること(第17条第1項)

5 知事の諮問に応じ障害者の権利利益の擁護のための施策に関する重要事項の調査審議を行うこと

5の「障害者の権利利益の擁護のための施策に関する重要事項の調査審議」は、特定相談や助言・あっせんを通じて得られた事例の分析や課題抽出を想定しています。

調整委員会は、地方自治法第138条の4第3項の規定に基づく知事の附属機関として設置されます。

第3項関係

調整委員会は、第1項の各事項を公正にかつ中立性を持って行う必要があり、その中立性を担保するために、委員の構成を規定しています。

第5項関係

調整委員会の委員は個人のプライバシーに深く関わることになりますが、委員が知り得た秘密を守ることは、安心して相談や助言・あっせんの求めができる体制を確保する上で不可欠です。

しかしながら、調整委員会の委員は特別職の地方公務員であるため、一般職の地方公務員と異なり、地方公務員法上の守秘義務は適用されません。

そのため、調整委員会の委員に、その職にある期間中だけではなく、職を退いた後についても、守秘義務を課しているものです。

また、調整委員会の委員は非常に多くの個人情報に接することになるため、守秘義務違反が起こらないよう担保する仕組みが必要です。

そのため、調整委員会の委員の守秘義務違反については、第28条に罰則規定を置いています。

参考

地方自治法(昭和22年法律第67号)

第138条の4 略

2 略

3普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。

第3章 共生社会の実現に向けた施策の推進等

啓発活動の実施

第20条 府は、府民の基本理念に関する関心と理解を深めるとともに、特に、障害への理解の不足から生じる社会的障壁を解消するため、必要な啓発活動を行うものとする。

交流の推進

第21条 府は、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習その他の障害者と障害者でない者との交流を積極的に推進することによって、その相互理解を促進するものとする。

雇用及び就労の促進

第22条 府は、障害者の職業選択の自由を尊重しつつ、障害者がその能力に応じて適切な職業に従事することができるようにするため、障害者の多様な就労の機会を確保するよう努めるとともに、個々の障害者の特性に配慮した職業相談、職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他必要な施策を講じるものとする。

2 府は、障害者の雇用及び就労について事業主及び一般府民の理解を深めるとともに、障害者の雇用及び就労を促進するため、障害者の優先雇用その他の必要な施策を講じるものとする。

文化芸術活動等の推進

第23条 府は、障害者がその障害の種類及び程度にかかわらず円滑に文化芸術活動、スポーツ、レクリエーション等(以下「文化芸術活動等」という。)に参加することができる機会を確保することその他の障害者の文化芸術活動等の推進に必要な施策を講じるものとする。

2府は、前項の施策の策定及び実施に当たっては、障害者と障害者でない者が共に文化芸術活動等に参加することができる機会を積極的に提供することによって、その相互理解が促進されるよう必要な措置を講じるものとする。

趣旨

第3章は、共生社会の実現に向けて、府が実施する施策等について規定しています。

第20条から第23条までは、啓発活動の推進及び障害者と障害者でない者との交流を促進する施策について規定しています。

解説

共生社会は、福祉サービスや医療の充実、生活環境の整備をはじめ、様々な分野の施策が総合的に実施されることによりその推進が図られるものですが、府では、障害者施策全般の基本的な方向性を「京都府障害者基本計画」において定め、その総合的な推進を図っています。

そのため、この条例では障害者施策全般を網羅的に規定することはせず、障害に関する理解の不足から生じる誤解や偏見が共生社会の実現を妨げる大きな障壁となっているとの観点から、障害者と障害者でない者の相互理解の促進に資すると考えられる施策を、この条例の施策として位置付けているものです。

第20条では、直接的に理解促進を図るための啓発活動の実施について規定しているほか、第21条から第23条までは、障害者と障害者でない者が交流する機会の増大を通じて理解促進を図るための施策について規定しています。

なお、障害者差別解消法でも、地方公共団体が必要な啓発活動を行う旨を規定しています。

参考

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)

啓発活動

第15条 国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとする。

府民等の活動の促進

第24条 府は、府民、事業者又はこれらの者が組織する民間の団体が自発的に行う共生社会の推進のための活動を促進するため、情報提供その他の必要な措置を講じるものとする。

趣旨

共生社会を推進する民間の活動の促進について規定しています。

解説

この条例の基本理念として、第2条第6号では、「共生社会を推進するための取組は、府、府民、事業者及び市町村、国その他の関係機関の適切な役割分担並びに相互の連携及び協働の下に行われること。」と規定しています。

この基本理念を具体化する規定として、共生社会を推進する民間の活動に関して府が担う役割を定めているものです。

「情報提供その他の必要な措置」の具体例としては、合理的配慮を積極的に行っている好事例についての情報提供や、共生社会の推進に資する民間のイベントへの後援などが考えられます。

京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり推進協議会

第25条 府は、共生社会推進施策を効果的かつ円滑に行うため、府、府民、事業者、市町村等、学識経験を有する者等で構成される京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり推進協議会を組織し、当該協議会が円滑に運営されるよう必要な措置を講じるものとする。

趣旨

「京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり推進協議会」の設置等について規定しています。

解説

第19条の規定により設置される「京都府障害者相談等調整委員会」は、助言又はあっせんによる個別事案の解決等を担うほか、特定相談や助言・あっせんを通じて得られた事例の分析や課題抽出を行うことを想定しています。

しかし、共生社会を推進するための施策の検討に当たっては、助言・あっせん等の個別事案から得られる情報に限らず、広く府民等の意見を聴く必要があると考えられます。

また、共生社会を推進するための施策の実施に当たっては、第2条第6号の基本理念に基づいて、府、府民、事業者及び市町村、国その他の関係機関が、適切な役割分担並びに相互の連携及び協働の下に取り組む必要があります。

そのため、共生社会の推進を担う幅広い主体が参加し、必要な情報交換や協議を行う場として「京都府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり推進協議会」(推進協議会)を設置するものです。

なお、障害者差別解消法では、国と地方公共団体の関係機関等で組織する「障害者差別解消支援地域協議会」を設けることができるとなっており、推進協議会は、この「地域協議会」に該当します。

参考

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)

障害者差別解消支援地域協議会

第17条 国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事するもの(以下この項及び次条第2項において「関係機関」という。)は、当該地方公共団体の区域において関係機関が行う障害を理由とする差別に関する相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)を組織することができる。

2前項の規定により協議会を組織する国及び地方公共団体の機関は、必要があると認めるときは、協議会に次に掲げる者を構成員として加えることができる。

(1)特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する特定非営利活動法人その他の団体

(2)学識経験者

(3)その他当該国及び地方公共団体の機関が必要と認める者

協議会の事務等

第18条 協議会は、前条第1項の目的を達するため、必要な情報を交換するとともに、障害者からの相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関する協議を行うものとする。

2 関係機関及び前条第2項の構成員(次項において「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組を行うものとする。

3 協議会は、第1項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等が行う相談及び当該相談に係る事例を踏まえた障害を理由とする差別を解消するための取組に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、相談を行った障害者及び差別に係る事案関する情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。

4 協議会の庶務は、協議会を構成する地方公共団体において処理する。

5 協議会が組織されたときは、当該地方公共団体は、内閣府令で定めるところにより、その旨を公表しなければならない。

秘密保持義務

第19条 協議会の事務に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由なく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

協議会の定める事項

第20条 前3条に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

第4章 雑則

財政上の措置

第26条 府は、共生社会推進施策を実施するため、必要な財政上の措置を講じるものとする。

趣旨

府が共生社会推進施策を実施するために必要な財政上の措置について規定しています。

規則への委任

第27条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

趣旨

この条例を施行するために必要となる事項について、規則で定める旨を規定しています。

第5章 罰則

罰則

第28条 第11条第4項又は第19条第5項の規定に違反して秘密を漏らした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

趣旨

広域専門相談員及び調整委員会の委員が守秘義務に違反した場合の罰則について規定しています。

附則

施行期日

1 この条例は、平成27年4月1日から施行する。ただし、第1章、第3章及び第4章並びに附則第3項の規定は、平成26年4月1日から施行する。

経過措置

2 平成28年3月31日までの間に限り、第6条中「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第7条第1項又は第8条第1項の不当な差別的取扱いに該当する、次に掲げる取扱いをはじめとする障害を理由とした」とあるのは、「次に掲げる」とする。

3 前項に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な経過措置は、規則で定める。

趣旨

この条例の施行期日及び経過措置について規定しています。

解説

第1項関係

この条例の施行期日は平成27年4月1日とします。ただし、周知期間を設ける必要がない啓発活動の実施等に関する規定については、平成26年4月1日から施行しています。

第2項関係

第6条柱書き部分については、障害者差別解消法との整合を図るため、同法を引用した規定としていますが、障害者差別解消法施行までの間(平成28年3月31日まで)は、経過規定により、「府及び事業者は、次に掲げる不利益な取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」と読み替えています。

読替前(平成28年4月1日から)

不利益取扱いによる障害者の権利利益の侵害の禁止

第6条 府及び事業者は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)

第7条第1項又は第8条第1項の不当な差別的取扱いに該当する、次に掲げる取扱いをはじめとする障害を理由とした不利益な取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

(1)~(8) 略

読替後(平成28年3月31日まで)

不利益取扱いによる障害者の権利利益の侵害の禁止

第6条 府及び事業者は、次に掲げる

不利益な取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

(1)~(8) 略

第3項関係

この条例を施行するために必要となる経過措置について、規則で定める旨を規定しています。

お問い合わせ

健康福祉部障害者支援課

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4597

shogaishien@pref.kyoto.lg.jp