平成18年度第4回京都府公共事業評価審査委員会の開催概要
1 日時
平成18年12月21日(木曜)午後0時30分から午後3時30分まで
2 場所
平安会館「平安の間」
3 出席者
「京都府公共事業評価審査委員会」委員
吉川和広委員長、青山咸康委員、佐藤紀子委員、佐藤博之委員、芝池義一委員、中西たえ子委員、深町加津枝委員
事務局
(土木建築部)部長、技監、理事、担当室長ほか
(宮津市)建設室長ほか
(城陽市)都市管理部長ほか
【傍聴者】1名
4 議事内容
(1)公共事業事前評価の個別審査
事業種別 |
事業主体 |
対象事業 |
事業箇所 |
道路新設 |
京都府 |
一般府道 八幡インター線(都市計画道路 内里高野道線) |
八幡市 |
ア 審査の結果
今回審査した事業の事前評価は、委員会に提出された資料、説明の範囲において、新規着手の必要性が認められることから、府から提出された対応方針案のとおりでよいと判断される。
イ 審査の状況
道路事業の新規着手箇所選定の考え方及び事業概要について説明した上で、新規着手の是非について審査された。
(2)公共事業再評価の個別審査
事業種別 |
事業主体 |
対象事業 |
事業箇所 |
街路 |
京都府 |
都市計画道路 大久保宇治川(おおくぼうじがわ)線 街路事業 |
宇治市 |
港湾 |
京都府 |
宮津港 海岸環境整備事業 |
宮津市 |
港湾 |
京都府 |
久美浜(くみはま)港 港湾侵食対策事業 |
京丹後市 |
公園 |
宮津市 |
日置(ひおき)ふれあい公園 都市公園施設整備事業 |
宮津市 |
街路 |
城陽市 |
都市計画道路 長池駅スタジアム公園線ほか1線 街路事業 |
城陽市 |
ア 審査の結果
今回審査した府の3事業、宮津市の1事業、城陽市の1事業の再評価は、いずれも、委員会に提出された資料、説明の範囲において、その手続きがおおむね適切に進められており、各事業主体から提出された対応方針案(大久保宇治川線は「継続」、他の4件は「見直し継続」)のとおりでよいと判断される。
なお、宮津港海岸環境整備事業について、全体延長が長いことから、早期完成に努め、事業の一層の効率的な進ちょくを図られたい、との意見が付帯された。
イ 審査の状況
各事業について、必要性や進ちょく状況、事業を巡る社会情勢の変化、費用対効果分析の結果、コスト縮減施策、良好な環境形成・保全の検討等をもとに、事業主体の対応方針案について審査された。
5 主な意見
(1)一般府道 八幡インター線(都市計画道路 内里高野道線)
- (委員)(資料の航空写真を見ながら)説明中に工業団地の話があったが、写真の下の方(第二京阪道路(以下「第二京阪」と表記。)と山手幹線の交差部付近の広い更地)に工場が建つ予定になっているのか。
(道路総括室)その場所は宅地であり、2年ほど前のこの写真では荒造成となっているが、現在宅地開発が進み住宅も建っている。また、工業団地は写真では右上の方になる。
(委員)その隣の少し道路の形が見えるような更地は住宅地になっているのか。また、八幡インター線(以下「インター線」と表記。)と表示のあるところの土地利用状況はどうか。
(道路総括室)山手幹線周辺は基本的に住居系の土地利用であり、インター線と表示のある横のあたりは農地が残っている。緑の部分は竹林等である。
- (委員)会社の物流関係で伏見から枚方方面へ毎日通行するが、久御山から八幡を通る途中で頻繁に渋滞に遭い、定時性が確保できない。渋滞緩和の観点から、この事業は賛成である。
- (委員)地元住民の利用や商業面から見たこの道路について、意見はどのように聞いているか。
(道路総括室)平成7年に第二名神とインター線はともに都市計画決定しており、その手続の中で説明会や意見聴取を行っている。 また、地元としても、八幡インターチェンジ付近が開発における潜在能力が高いため、区画整理をしようという話があり、平成10年にはインターチェンジを前提としたまちづくり協議会が地元区で発足、平成14年にはインターチェンジを使ったまちづくりの基本構想が公表、その後区画整理組合の準備会発足と進んでおり、インター線の計画が織り込まれたまちづくりが検討されてきた経過がある。
- (委員)写真を見ると計画地周辺には竹林以外の植生が多く、この地域に残された数少ない樹林地と思われるが、植生や野生生物の状況はどうか。 また、環の公共事業構想ガイドライン評価シートにおける、「環境配慮・環境創造のための措置内容」欄に記載されている、「環境アセスの結果、周辺の生活環境や自然環境について環境保全目標が達成されており」という表現について具体的な説明をお願いしたい。
(道路総括室)今細かくは把握していないが、平成7年の環境アセスメントによると、八幡から城陽間の調査対象地域では、貴重な植物として、トキワイカリソウ、キクガラナクサ、オオバノハチジョウシダなどがあり、動物ではカワセミ、ケリ、ダルマガエルなどが生息していると報告されている。 ただし、この事業実施に関して、これらの植物が計画地周辺に生育する可能性は少なく、動物の生活環境の改変も小さいという評価になっている。 また、評価シートの記載内容に関しては、都市計画決定と同時に実施された環境アセスメントで設定された環境保全目標が達成されているという意味である。
- (委員)貴重種以外の一般的な植生や特徴はどうか。
(道路総括室)環境アセスメントの資料によれば、第二名神を挟んで基本的には竹林、その先の部分は水田、雑草ということで、それ以上細かい資料は今持ち合わせていない。第二京阪から西側のインター線との間の緑の部分については、竹林を主体とした植生と理解している。
(委員)写真では、計画地付近に竹林は見られるが、それだけではなく、落葉広葉樹などもあるように見える。道路の必要性は理解できるが、開発が進んだ中でこの地域を代表するような樹林地がここに残っている、という環境的な意味を把握した上で、最終的にはこのルートしかないという判断に至ったのかどうか。その上で、保全に配慮した場合、どのようなことが大事かということを考え、それをここに記述し、説明して欲しい。
(道路総括室)ルートについては、第二名神の計画に際しての環境アセスメントにより動植物の状況を把握した資料があり、確かに竹林以外の他の樹林もあると思われるが、貴重な動植物についてはルート上には無い、または改変が少ないということで選定した。 また、八幡市のマスタープランにおいて、インターチェンジ周辺は都市的な土地利用を行う計画になっており、植生については、道路を含めたまちづくり全体の実施の中で調査をした上で、残していくべきものは残していくことを検討し、進めていきたい。
- (委員)審査表の費用対便益の欄にある総費用79億円とは2車線整備に対するものか。
(道路総括室)総費用は4車線整備に対する総事業費110億円から用地取得費用を除いた額に40年間の維持管理費用を加えたものを現在価値換算したものである。
- (委員)第二名神の完成時期がずれたとしても、という説明があったが、どういうことか。
(道路総括室)八幡から城陽間はすでに着工され、平成28年までの供用を目途に事業が進められているが、他の区間は着工時期が意志決定されていないため、区分して説明した。
(委員長)国土開発幹線自動車道建設会議において、城陽から八幡間は京奈和自動車道と第二京阪を連絡する高速道路がないため着工が認められ、八幡から西の区間は着工が決まらなかった。
- (委員)資料によると、今回2車線整備で将来的には土地の高さをあわせるということだが、用地は25メートル幅を確保するのか。
(道路総括室)道路を築造する場合、一般に道路用地は盛土や切土により実際の路面幅より広く必要となり、その幅で買収する必要がある。しかし、今回の場合は、将来の4車線の路面幅25メートルで用地を買い、その幅の中で盛土により将来的にも変わらない路面高さの2車線道路を造る。今後、路面高さにあわせた土地区画整理事業が実施される時に4車線化拡幅事業を行えば、用地は必要な路面幅で過不足無く確保できているので、間を埋めるだけで円滑に工事ができる。そのために、将来必要な路面幅の25メートルで買うものである。
- (委員)第二名神からインター線に出入りする道路は西日本高速道路株式会社が実施を決めているのか。
(道路総括室)第二名神とインター線を含めて一体で都市計画決定しており、その中でランプ形状については決めている。また、ランプ部分における概ねの施工区分を図中、赤(府)と青(高速)で表現している。
- (委員長)計画路線は、山手幹線や国道1号などとのネットワークの中で、この地域を東西に横断する幹線であり、道路を利用する側からは非常に重要だという意見が委員から出された。 一方、第二名神の計画の際の環境アセスメントでは、植生は竹林で、あまり貴重な動植物がないとして道路計画を進めたものの、八幡市が周辺を都市的土地利用に変えていくと考えていることも含めて、このままで良いのかという意見も出された。これに関しては、この道路事業によって緑がすべて消失するわけではなく、後に区画整理事業を行う時には、環境への配慮をしっかり行うように、府からも八幡市に伝えていただくということとすればどうか。当委員会ではこの道路事業についての評価を行うこととなっており、地元でも東西方向の道路がなく困っているところでもある。委員の指摘を伝えていただくことを含めて事業化を妥当とするという意見にしたい。
(2)都市計画道路 大久保宇治川線 街路事業
- (委員)クロガネモチを植栽しているとの説明であったが、7ページの写真には見え、8ページの写真には見えない。一部の区間に植栽しているのか。
(道路総括室)写真では見えにくい部分があるが、全区間10メートル間隔で植えている。
- (委員)審査表の費用対効果の説明で、費用便益比に反映されない効果として防災機能の効果とあるが、どのようなものか。
(道路総括室)広幅の道路には火災の延焼を防ぐ効果があり、16メートル幅のこの計画であれば防火帯としての機能が期待できる。世界遺産である平等院を守るという意味でも、大きな効果と考えている。
- (委員)事業区間はお茶屋や土産物屋を移転させ、土地を買収しなければいけない地域か。
(道路総括室)お茶屋や土産物屋は少し離れた宇治橋付近で多く営業されており、この事業の残事業区域内では、茶団子屋が1軒あるのみである。
- (委員)この地域が、宇治市役所や太陽が丘付近の発展から少し遅れているように感じられるのは、こういった主要な道路が整備されていないことが一因ではないかと思う。
- (委員)歴史的景観に配慮するという姿勢は良いと思うが、景観を考える地域での枠組のようなものはあるか。
(道路総括室)府として地元に景観検討委員会等を設置したわけではないが、歴史街道事業というものの位置づけで行っている。この周辺では宇治橋なども同様に、景観に配慮して整備を進めてきた。
- (委員)クロガネモチを選定した理由は。
(道路総括室)一般的に街路樹として使用されている樹種の中で、平等院にも植えられている木ということで採用した。
- (委員)平等院に来る観光客の流れと、ここに至るまでの道路の状況はどうか。
(道路総括室)京滋バイパス宇治東インターチェンジや、京阪宇治駅からの観光客は、宇治橋を渡り南に進み、この事業区間を通って平等院に至るのが一般的なルートである。宇治橋から本事業区間までの間の道路は、車道は大型車がすれ違える程度の2車線で、歩道は側溝に蓋をした程度のものである。十分な幅員が確保出来ているとは言えない状況だが、沿道には歴史ある建築物もあり、すぐに事業化できる状況ではないため、本事業区間の整備を優先している。
(3)宮津港 海岸環境整備事業
- (委員)砂浜と藻場を保全するのは、この方法で充分なのか。
(港湾課)天橋立より外海に近く、砂が飛散しやすいのでレキで養浜をする。
- (委員)漁業が盛んな地区のようだが、この工法の選定にあたり配慮しているのか。
(港湾課)船揚場の堆積土砂の浚渫等の日常管理や、魚の生息地である藻場への影響を極力抑えた工法の採用など、観光地としての利用と調和を図りながら進めている。
- (委員)遊歩道の有効利用について検討をされたい。
(港湾課)案内等により対応したい。
- (委員)完成年度が平成29年とは長いのではないか。
(港湾課)補助事業費の削減により、1年あたりの整備延長が短くなってしまっており、完成が少し先の年次となってしまっている。進め方としては護岸から整備し防災機能を高め、その後で遊歩道などの環境整備を行っていく。
- (委員)高潮被害は見受けられるのか。
(港湾課)台風時等、高潮と波浪が重なる時に被害はあるが、高潮のみによる被害は見受けられない。
- (委員)緩傾斜護岸には消波効果があるのか。
(港湾課)完成区間において効果が確認されている。
- (委員長)現地調査を行ったが、人家が連担しており、被害等も実際に見られるなど、防災事業にしては事業期間が長いと思われる。早期完成を図られたいとの意見を付帯させていただく。
(4)久美浜港 港湾侵食対策事業
- (委員)久美浜湾内の潮の流れはどうなっているのか。
(港湾課)閉鎖水域であり、潮の流れは弱い。
- (委員)波浪による侵食はあるのか。
(港湾課)外海に比べ波は弱いが、台風時等には被害が見受けられる。
- (委員)護岸の耐用年数はどれくらいか。
(港湾課)50年とされている。
- (委員)資料中の施工後写真に見られるような親水性に配慮した整備は、観光地と関係あるのか。
(港湾課)近隣にホテルや民宿が多くあり、散策等の利用を想定している。
- (委員)見直し区間について地元住民からの意見はあるか。
(港湾課)特には聞いていない。
(5)日置ふれあい公園 都市公園施設整備事業
- (委員)この公園はほぼ供用されていて、残りは多目的広場のみと考えてよいのか。また、残事業費はいくらか。
(宮津市)そのとおりで、残事業費は、5000万円である。
- (委員)当初の事業費が42パーセント縮減されているようだが、要因は何か。
(宮津市)市内運動施設の利用状況及び近年の住民ニーズの変化をふまえ、屋根付きゲートボール場及びフィットネスセンターの整備をやめ、替わりに多目的広場を整備するよう計画変更を行ったため、事業費が減少した。屋根付きゲートボール場については、近年、競技人口の減少が見られることに加え、平成13年度に市内南部地域において屋根付きゲートボール場が建設されたことにより、利用者が当初計画時より少なくなる見込みとなり、フィットネスセンターについては、隣接の特養施設の中にリハビリ器具が設置され、同様に利用者が少なくなる見込みとなったこと、さらに、市内の運動施設の利用状況を考えると、施設完成後の維持管理費に莫大な費用がかかることから、整備が得策でないと判断した。
(委員)縮減した費用で当初の目的が実現出来るのか。
(宮津市)見直した計画で、当初目的は実現できると考えている。
- (委員)周辺にも公園があるが、他公園との役割の違いは何か。
(宮津市)この公園は、地区住民及び福祉施設利用者を対象に健康づくりと交流を目的とした地区公園であり、近くの(府立)丹後海と星の見える丘公園は、自然との共生文化の学び場、また、丹後地域とも連携しながら体験型観光等の振興に寄与する広域公園である。さらに、少し離れたところにある府中公園は、テニスコートや野球のできる運動場を備えた運動公園である。
(委員)周辺の子供達はどの公園に行きたがるのか。
(宮津市)地元の子供達は、放課後には近くにある日置ふれあい公園を利用している。丹後海と星の見える丘公園は、日置からは3キロ程度離れており、また名前のとおり少し高い所にあるため、子供だけで遊びに行くというのはあまりないようである。
(6)都市計画道路長池駅スタジアム公園線外1線 街路事業について
- (委員)路線名のスタジアム公園とは資料の中にある(仮称)木津川右岸運動公園のことか。
(城陽市)同じ施設を指し、長池駅スタジアム公園線(以下、公園線と表記。)は都市計画道路の名称、木津川右岸運動公園は、現在京都府が整備中の公園の名称である。
- (委員)図面を見ると、公園が上下で切れているような形状となっているが、全て公園か。また、この公園事業の現状はどうなっているのか。 (京都府公園緑地課)公園の中央部に第二名神予定地が通っており、このような形状となっているが、地図中の着色部分はすべて公園の区域であり、第二名神を境に北区域、南区域としている。平成7年度に木津川右岸スタジアム公園として都市計画決定したが、平成8年度ワールドカップサッカーの候補地より落選し、平成15年度に設置した計画見直しの検討委員会による提言を受けて再出発した。平成16年度再評価審査委員会にて見直した計画にて継続妥当のご意見をいただき、現在南区域の防災施設整備から着手している。
(京都府道路総括室)くびれているように見えるところが、公園へのアクセス道路である。
- (委員)進捗84パーセントということだが、事業進ちょく図を見ると工事が完了している箇所が非常に小さい。実際の状況を説明して欲しい。
(城陽市)金額で進ちょく率を計算しているため、84パーセントとなるが、全体事業費28億円に対して用地費が23億円を占めており、現在用地買収がほぼ完了し、工事実施段階になったという状況である。詳しく言えば、用地は2件約75平方メートルを残して、98パーセント完了、工事は平成17年度から着手し、公園線では擁壁工事、東城陽線では交差点北側と南側の歩道工事を行っている。
(委員)残事業費4億円で完了できるか。
(城陽市)完了できる見通しである。
- (委員)費用便益比が1.2とは他の案件と比べ、低くないか。
(城陽市)費用と効果の同値を表す1.0を上回っていることから、費用対便益は低くないと考える。
(委員長)事業の種類によって、費用便益比に対する指標の取り方が変わるため、値の高低は一概には言えない。
- (委員)城陽市東部からJR方面への道路はどのようなものなのか。
(城陽市)市道3001号線があり、2車線片側歩道の生活道路である。当該事業区域北側の東城陽線が府道山城総合運動公園城陽線まで開通したことで、車の流れが新しい道に変わり、市道3001号線の交通量は大幅に減少した。
- (委員)公園計画が変更となった今でも、公園線として広い道路が必要なのか。
(城陽市)公園へのアクセス道路のうち、車は第二名神沿いがメインとなるが、歩行者はこの公園線となり、イベント開催時には多くの通行者が見込まれる。また、生活道路としての側面から見れば、駅に至る道路の整備で、現在計画中の長池駅南北自由通路とあわせて、近隣地区及び段階的に整備を行う計画の東部丘陵地の山砂利採取跡地に対し、大きな効果が得られると考えている。以上の二つの側面より必要性は高いと考えている。
6 その他
次回委員会は3月13日(火曜)午後1時30分より平安会館において開催することとなった。