第4回生活部会の開催結果
日時
平成30年11月27日(火曜日)午前10時00分から午前12時00分まで
場所
出席者
委員
松井部会長、伊豆田委員、伊藤委員、櫛田委員、佐竹委員
松本企画理事、石澤計画推進課長
松村健康福祉部長、中本こども・少子化対策監、青木健康福祉部副部長、吉田健康福祉総務課長、松村健康福祉総務課参事、丸毛医療保険政策課長、今里こども総合対策課長、西田少子化戦略担当課長、浅山婚活支援担当課長、髙尾母子保健担当課長、青木子育てピアサポート担当課長、髙野家庭支援課長、野木ひとり親家庭担当課長、井尻医療課長
木村男女共同参画課長
配布資料
議事内容
ゲストスピーチ
- 出生率低下の問題、子育て支援、少子化対策は、個人・カップルが自分たちの決定として子ども産み、育て、それを支えられるという仕組みを作ることだと思います。今の日本の出生率の低さは、日本社会の様々な矛盾や問題が反映された数値だと思います。京都府は子育て環境日本一を掲げ、以前から色々な形で多角的に議論しています。子育てしづらいと思っている若い世代がいる日本の構造を、京都から変えていこうという姿勢が必要です。
- まず、家族の捉え方ですが、シングルや法律に基づかないカップルが子どもを産んでも育てられるような体制が必要です。色々な施策を実施してきたのに出生率が上昇していないのは、日本社会の構造の問題があるからです。その一つは、結婚、出産、子育てが若者にとって大きな負担となっていることです。例えば、保育でスムーズに保育園に入れない「保活」の問題があります。また、結婚や住宅の費用など結婚後の生活にお金がかかることもあります。もう一つは、特に女性にとって個人のキャリア形成の中で、出産や子育てが究極の選択であり、二人目、三人目を産むことは、自分の仕事、キャリアをきちんとつなげていけるのかという労働環境の問題もあります。これらを変えていき、若い世代が安心して産み育てられる実感がもてる施策を打ち出すことが重要です。
- 社会のどこを問い直す必要があるかというと、一つは日本の生活様式があります。貨幣依存度が非常に高く、個人の負担度合いが高い生活様式になっていることが大きなネックなので、例えば、地域の中で子育てを助け合うような協同が基本になり、自治体も、子育て支援の立場から住宅施策、居住の施策を明確に打ち出していく必要があると思います。
- もう一つは「働かせ方」をどう変えるかです。生活様式を変えていくのは個人の意識の問題だけではなく、日本の職場を変えていく、自分の働き方を変えていく、社員の働かせ方を変えていくという必要があります。一般的には、経営者層や管理者層が、子育てをしている世代が働きやすいように労働環境を整えたり仕事のあり方を変えたりする発想は強くはないと思います。出生率の低下は日本の社会にとって克服すべき課題なので、経営者層が自らの職場の文化を変え、子育てしやすい職場にし、ひいては社会的な貢献になるという立場で考えていく必要があると思います。
- もう一つ、ライフデザインが実現できる社会的な条件、基盤、制度、社会的な規制が必要で、ライフスタイルを問い直して選択、共有できる必要があります。個人がライフスタイルを変えようとしたときに、企業の経営者、管理職層がそのライフスタイルを容認し、誰もが働けるような職場をつくることや、日本の労働行政がそういう観点で規制をつくることが必要です。また、家庭の中での男性のあり方、子育てや家事への関わりの意識を変えるために、会社のあり方などを変える必要があります。私たちが本当に少子化対策や子育て支援といったときに、府民も経営者も行政も、生活のあり方自体を問い直す観点が必要だと思います。
- 最後に地域の子育て支援です。京都府は、地域全体で子育てを支える環境の確保、地域で支える仕組みの構築、保育、幼児教育を含めた地域の子育ての充実を図っています。子育ての社会基盤を地域でつくる、地域で支えるような場合に、「誰が」という主体を明確にし、どんな役割で機能を果たすのか、それぞれの持ち味を生かしてどうつくっていくのかということが大事です。支えるとは、子育てで支え合ったり支えてもらったりしていくような協働を強化すること、「つながる子育て」です。また、連携について、つながりのことなのか、調整、協調のことなのか、統合なのかを十分に考えながら施策を進める必要があります。継続的、包括的に子ども中心に連携した施策、思いやりや協働のある施策が必要です。
- 子育てをしようとしている若い世代や子育てをしている世代が、確かにこれで子育てをしていけると実感できる計画をつくる必要があると思います。
各委員からの主な意見
【結婚・婚活・妊娠・出産・子育て支援関係】
- 働き方について、子どもを産む前でも地域で仕事ができるとか、地域でどういう仕事をつくっていくかというような考え方が必要だと思います。また、企業と連携してコミュニティを開発していくような親の立場の環境づくり、親のあり方も入れてほしいと思います。資料には支援ばかりが書いてあり、保護される人たちばかりが育つのではないかという懸念があります。
- 以前は、結婚して子どもを産むことが女性の人生の目的の一つであったり、男性はその生活を支えていくことが目的であったり、究極は、まず家庭を持つことが目的だったと思います。しかし、今はそうではなく、結婚が経済的、精神的な負担にしかならないと思います。このような中で、子どもを産んだら支援しますという施策をたくさんつくっても、実質的に子どもが増えることにつながっていないのが現状で、20年後をイメージしたときに、制度は充実したがそれを利用する人が増えない、子どもは生まれていないとなると、施策の空回りになります。
- 子育てなどのグループはたくさんありますが低年齢化しているので、コミュニティのコーディネートをする人が必要だと思います。子育てにも色々なパターンがあることも考えなければなりません。
- 結婚するのが当然だった世代は、結婚しないときにその理由を見出していましたが、今の若者は、結婚する理由がないと踏み切れない世代です。その結婚する理由というときに、人と関わることや子育ては「大変だけど面白い」ということをどこまで普及させるかに尽きると思います。地域で楽しそうに暮らしているというようなことを、どのようにPRするかだと思います。
- 支援だけではなく、子育てそのものが楽しいと思う文化をつくることが大事だと思います。例えば、保育園に来る保護者に、忙しくても家で親子で朝御飯を食べましょうという教育をする必要があります。また、可愛い我が子が苦しんでいるときに、親が家で看病してあげたいという心が育つことが子育てで、その心をきちんと醸成しながら、バランスのとれた子育て施策が必要だと思います。親子関係をより良い状態にしていくということが最優先、そのための支援であるということを見失ってはいけないと思います。
- 地域と団体とが分断されているところに問題があると思います。例えば、企業が地域コミュニティにビジネスを見出せるものに関しては、行政がマッチングして応援するような仕組みがあれば、地域の高齢者やアクティブ支援の方々が子育てに参画するようになるのではないかと思います。
- 社会の仕組みや高齢者も大きな課題で、一人で一人の高齢者を支えながら子どもを産み育てるというのはとても無理だと思います。社会的な仕組みとして、高齢者の面倒を見ながら子どもも育てるとしていかないと立ち行かないと思います。しかし、施策を突き詰めていくと、子どもを産んで、産んだらあとは社会のシステムで育てるとなると、全く親子関係がなくなってしまい、違和感があります。ライフスタイルの見直しや意識が変わった結果、子どもを産むことが負担になってきているので、そうならないようにするために、コミュニティよりも交流やコミュニケーションがとれる場所が必要だと思います。
- 高校までは抑圧感がある生活なので、大学生になっても、指示が必要だったり、自由にどうぞ言われると困ってしまったりします。若者のコミュニケーション能力が低いわけではなく、地域に入ると柔軟に対応できると思いますが、その機会や場がないと思います。
- 男性は特定の家族像に縛られています。家族像は確実に変わっていくので、ある家族像に縛られずに考え、選択し、生きていくということもあると伝えていくと、変わっていくのではないかと思います。
- お見合い婚や婚活婚は5%ぐらいという状況の中で婚活の予算を立てているので、人と関わることや子育てが面白いということを強調したほうが良いと思います。
- 「誰もが安心」という表現ですが、子育ては、未婚、母子、定住外国人とパターンを定めてきめ細かい対応をしなければうまくいかないと思います。初めて子どもを産んだときに、どのように子どもを抱くのかというところから出発するお母さんが大半なので、保育園の子育て機能は非常に助かり、ぜひこれからも充実してほしいです。また、いざとなったらこの人に頼れるという「バディ制度」、一対一対応の登録制度くらいの細かな対応が必要だと思います。
- 地域のNPOや地域の子育て団体が、子どもが生まれたときに母親のところに訪問することはあっても、対面でサポートすることはあまりありません。地域での動きが始まると、母親が感じるストレスが軽減されるような情報が得られると思います。
- 高齢者支援も子どもの支援も、少しのお節介が必要だと思います。昔はお年寄りもおばさんもおじさんも、子どもを怒ってくれたり、結婚の適齢期の若者がいると誰かを紹介したりというお節介があったと思います。今は、個人情報や他人の家のことは構わないようにということが言われ、コミュニケーションができなくなっています。京都にあった門掃きという文化のようなことができたら良いと思います。居場所事業を利用する子どもの母親に対し、子どもは自分が育てていかないといけないということを教えることや、母親同士の交流、子育て関係の情報交換ができるようにすることが大事だと感じています。
- 懇話会のときからコミュニティが重要だという話が出ています。行動力のある人たちが集まっているコミュニティができると活力が出てくると思いますが、全く動かない地域もあるので、それを施策としてどう広げていくかが重要だと思います。子育て環境日本一の実現というのは、色々な価値観を持っている人がいる中で、子どもを産むことには負担があるので、それに対して様々な支援をしていくというレベルで、20年後に京都をどうしていくかということがこの会議で話し合っていくことだと思います。例えば「街で子どもの声がいつも聞こえる」ことが20年後のありたい姿という方が、イメージしやすいように思います。その部分が政策的な文言になってしまうと、どこに主役の子どもがいるのかと思ってしまいます。
- 児童虐待のところですが、コミュニティの中に、できる限り専門的な知識を持った人がいるようにすることを要請していくべきだと思います。子ども食堂を行う団体には、必ずしも子どもの虐待などに知識があるわけではありません。そこに来る子どもが暴れる場合もあり、周りの人やみんなに迷惑かかるからといってルールを決めると、その子が居づらい場になって来なくなりますが、その子は一番サポートが必要な子で、本末転倒なことが起きてしまいます。子ども食堂が増えても、本当に支援が必要な子どもを排除してしまう状況になると意味がないと思います。居場所に市町村の知識のある方が巡回するなど、必ず専門的な知識を持った人に相談できる環境が必要だと思います。
- ソーシャルワークというと福祉的なイメージがあります。子ども食堂でソーシャルワークの資格が必要になったり、特区で地域限定保育士の制度をつくるような動きをされたりしていますが、コミュニティディベロッパーやアドバイザーのような、地域に根ざしたコミュニティをつくる係のような人を配置しコーディネートすると、より円滑にできると思います。
- 本日のお話しで、人の孤立化を何とかするために地域の力で解決していこうと思うと、文化を変えることやその文化をつくっていかないといけないと思いました。文化は、個人が必要だと思うと同時に、企業、地域、家庭など、みんなが納得しないと変わらず、行政の後押しで社会が変わって初めて文化が動き出すと思います。だから、子育てに関して行政が「街角で子どもの声が聞こえる20年後」のようなキャッチフレーズを言ってほしいと思います。
- 移住支援について、移住してきた方をどう地域のコミュニティにつないでいくかが本当の移住支援だと思いますが、最近は移住者だけのコミュニティをつくってしまうことがあるので、ローカルと移住者をつなぐ移住支援に取り組んでほしいと思います。
- 京都は個々のエリアで活動される団体が多いです。北部の地域コミュニティは、情報の発信をされることで再びそこへ行きたくなるという仕組みをつくっていますが、街中のほうが無関心の人がたくさんいるので、個々の団体が横につながる場が必要です。地元の企業が活動を応援する、福祉と経済を分けない関係づくりというのが、今後の地域コミュニティのつくり方だと思います。京都には、間違いなくその仕組みの土壌があると思います。
- 子育ては、子育てだけではなく色々な情報を持ってつないでくれる人が地域にいると連携ができると思います。地域の誰か、自治会でも良いので、ほかの地域のことも知って紹介してくれることができていけば、わざわざ色々な制度をつくって資格を持った人を配置するということを行わなくても良いように思います。
- 病児保育はとても大事です。子どもが熱を出して病児保育に預けていると仕事を一生懸命できるかというと、そうでなくて、早く仕事を終わって帰りたいと思うのが親の心情だと思います。そうすると企業側、職場側の理解が必要です。しかし、それで母親の負担は少し軽減されても、逆に企業側、職場側の負担は増えます。それをどのようにバランスをとるかとなると、経営者や職場の仲間の理解が必要になってきます。子どもが一番大事だという文化が必要で、世の中みんなで、地域で、会社で子どもを一緒に育てる、あるいは会社側も子どもを産んでくれたらお祝いが出る、子育てをしたらキャリアになるなどになっていくと良いと思います。
- 理解している人はみんなでコミュニティをつくっていくと思いますが、リーダーがいない場合に行政が主導してコミュニティをつくっていく必要があるでしょうか。地域コミュニティはすごく難しいので、もっと自然にコミュニケーションができるまちづくりをしたほうが良いのではないかと思います。
- 地域、エリア的なコミュニティもありますが、趣味嗜好、気が合う人たちや思想が一緒の人たちのエリアではない部分のコミュニティもあるので、公共施設を開放的に使いやすくすることも必要です。その中でお互いの支え合いが生まれていくと思います。
- 日本の企業の経営者は遅れていると思います。例えば、企業で人材確保をしたいときには横断的な経済団体があるのに、なぜ子育て支援の仕組みはコンソーシアムのようなものをつくろうとしないのかと思います。職場のあり方を変えていくと、生活様式やライフスタイルを主体的に考える人が生まれると思います。また、地域で社会的企業、ソーシャルエンタープライズのようなものを起こしていくことや、子育てなどに資金が流れていくような仕組みをつくることが必要だと思います。
- 妊娠・出産、子育てに関する文化を育むこと、楽しいとか、おもしろいということを伝えるのは、行政ではなくて地域の団体やNPOなどの当事者だと思います。