ここから本文です。

第4回経済部会の開催結果

日時

平成30年11月30日(金曜日)午前10時00分から午前12時00分まで

場所

京都府職員福利厚生センター第2・3会議室

出席者

委員

牧部会長、柿迫委員、徳岡委員、中川委員、錦織委員、久本委員
(欠席の斎藤委員からは意見書の提出あり)

ゲストスピーカー

田原剛氏(キララ商店街事業協同組合理事長)
牧野成将氏(株式会社Darma Tech Labs代表取締役)

事務局

松本企画理事、田中政策企画部企画参事、石澤計画推進課長
今井企画調整理事、田淵企画調整理事付参事
鈴木商工労働観光部長、小山雇用政策監、湯瀬学研都市・ものづくり推進監、南本観光政策監、近藤商工労働観光部副部長、村上商工労働観光部理事、河島総合就業支援室長、上林産業労働総務課長、池邉産業労働総務課参事、玉木商業・経営支援課長、西村ものづくり振興課長、井爪産業立地課長
中川労働・雇用政策課長、小瀬人づくり推進課長

配布資料

議事内容

ゲストスピーチ

田原剛氏のスピーチ要旨

  • 商店街の活性化ということで、これまで様々な取組みをしてきていましたが、店主の高齢化が進む中で、私たち若手も危機感を持ち、勉強会を起こす等、商店街の活性化に取り組ませていただいているところです。
  • その中で、一番初めに実施したのが、店主の意識改革です。これまで補助金をいただき、様々な事業をさせていただいていましたが、自己満足で終わっていることが多くありました。商店街の活性化を考えた時に、店主みんなが同じイメージを持ち、戦略的に事業を実施していくことが必要であり、そのためにも自らが前向きに考えて行動を起こす人が必要なことから、店主に意識改革を働きかけました。
  • 二つ目は、マスコットキャラクター作りです。全国公募を行い、ちょっとでも商店街を知ってもらい、キャラクターを通じた啓発ができるよう、広報媒体の一種として、商店街の名前に繋げた、キララちゃんというキャラクターをつくりました。これによりキャラクターを使ったパン作りなどに活用しています。
  • そして三つ目は、地域の子ども達が誇れる商店街作りです。お金をかけない広報戦略ということで、新聞社の方に情報提供して自分たちの思いを載せていただいたり、商店街の記事を書いていただいたりすることで、商店街の活動を広報することができました。
  • そのような中、2010年には、いす-1グランプリといいまして、商店街を2時間耐久する事務椅子レースというのを発案、企画いたしまして、来年の3月で10回目を迎えます。この取組は全国約20都市ぐらいに広がっておりまして、海外では台湾、マレーシア、シンガポール、中国といった商店街に広がっています。
  • 2012年には京都府主催の京の公共人材大賞で奨励賞をいただき、2016年には総務省主催のふるさとイベント大賞で、特別賞をいただきました。
  • その他には、同志社大学の方々と一緒にコラボ企画をさせていただいておりまして、商店街で実施したお化け屋敷については、同志社女子大学の学生さんと、65歳以上の高齢者の方が一緒になり運営することにより、色々な方々に関心を持ってもらうという手法で企画をさせていただいています。
  • ただ、商店街の現状といたしましては、脱退店舗がどんどん増え、存続の危機に立っております。2009年には60店舗程度だったものが現在では10店舗程度まで減ってきているという、かなり末期的な状況になっていることもあり、「キララ商店街」は2018年から法人格を外し任意団体として活動しています。こういった現状も踏まえて、今後の商店街について考えていく必要がある状況です。

牧野成将氏のスピーチ要旨

  • 京都でベンチャーの活動をしてきた中で、京都でベンチャーが立ち上がっても全て東京に行ってしまい、どうすればベンチャーがもっと生まれ、京都に残ってくれるのか、もっと言えば、東京、それから世界から京都に来るような流れがつくれないか、と考えておりました。
  • 今、ものづくりでは非常に大きな環境変化が起こってきており、3Dプリンターやレーザーカッターという非常に安価にものづくりができる環境が揃ってまいりました。また、クラウドファンディングによりインターネットで資金調達もできるようになり、ものづくりのベンチャー企業が非常に増えてきている状況です。ただ、簡単に試作品がつくれても量産化ができないという課題(「死の谷」)が生じており、事業化に繋がらないということがありますので、こういった課題を解消するため、京都試作ネットや、京都の強みであるものづくり企業と連携することが非常に重要になってきております。
  • また、京都をものづくりベンチャーの都にというビジョンのもと、メイク・イット・イン・ジャパンというキーワードを掲げておりますが、まさに日本の中でものをつくるということもメイクでありますが、メイクというのは事業を次に進捗させるという意味もあり、アメリカだけではなく、今後はヨーロッパやアジア、そういったところからもこの日本に来てもらい、そして京都でものづくりをしてもらう、こういった流れを創っていきたいと考えています。
  • そういった中で、京都市内にものづくりスペースを設け、学生からベンチャー企業まで幅広い人たちを対象にしたものづくり教育を実施しています。ここではハッカソン(注)という実際にアイディアを考えて、それを実際ビジネスモデルも考えてものをつくるというようなプログラムも実施しております。
  • 他にも金融機関や京都の企業と連携し、京都をものづくりベンチャーの都にするためのシステムをつくり上げていこうということで活動をしております。

(注)ハッカソン・・・ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を掛け合わせた造語で、与えられたテーマに対しデザイナー等がアイディアを持ち寄り、短期間でサービス等を開発するイベント

各委員からの主な意見

(人材確保・育成関係について)

  • 人材確保・育成という枠組みに不満があります。今、景気が良くて人手不足であるのは間違いありませんが、これが20年間ずっと続くとは、私には思えません。消費税の増税後や東京オリンピックパラリンピックが終わった後など、不況になる可能性が十分あります。そうすると、府民にとっては生活の安定が一番重要なわけなので、そういった景気の変動に応じた雇用の安定を確保することが重要です。景気変動は必ずあり、10年間隔で大きな変動が起こっていますので、20年後を見据えた時、人材確保・育成ではなく雇用・育成というテーマで考えるべきだと思います。
  • 数値目標についてですが、雇用の安定、職業生活の充実、就労環境の改善というのはどう計るのでしょうか。どうなれば到達したとみなせるのかは考える必要があります。例えば不本意非正規の割合を下げること、本当は正規で働きたいのに働けないという人たちが多いというのが問題になるので、この割合を減らすというのは一つの数値目標になると思います。また、労働生産性の向上についても、これを一時間当たりの付加価値生産性で計るとすれば、この20年間、日本は付加価値生産性が上がっておりません。これを例えば5%上げますという大胆なことを言えるのか、1%でも上がったら良いということなのか、掲げている目標に対してしっかりとした検証ができ、かつ府民に分かりやすく伝えられるよう、数値目標を考える必要があります。
  • それから、4年後に到達させたい状態について、人手不足の改善とありますが、それが改善した一方で、大量失業状態ですとあるべき姿ではないと思います。よって、労働需給のバランスがとれているという表現が正しいのではないかと思います。
  • 外国人人材について、京都は大学が多く、外国人の留学生が多いですが、こういう人達に、いかに京都の企業に就職してもらうかというのは重要な課題です。高度人材をいかに京都につなぎとめるかというのは、京都企業にイノベーションを起こす上でも重要なことですので、大学が多くて留学生が多いという京都の強みを生かしたネットワークづくり、そういうもの強化するというようなことを計画に記載する必要があると思います。
  • 欧米では、若年失業者の割合は高く、最初の仕事に就くのはすごく大変です。日本は新卒採用中心主義というのもあり、学校を卒業後は職業能力がなくとも就職できるというシステムになっていますが、欧米ではそのようなシステムはなく、自分でスキルを磨いてから就職していきます。この日本の仕組みを活かすならば、大学と産業界がしっかりと連携し、京都の中小企業に良い人材がどんどん入るようにネットワークを強化するというのは非常に重要だと思います。それが高度人材の獲得に繋がり、京都の産業を強くしていくことに繋がると思いますので、そういったことを計画に記載する必要があると思います。
  • 新卒者が就職後に3割はミスマッチにより辞めると言われております。ミスマッチは必ず起きることであるので仕方ないと思いますが、問題はその後で、この人達をしっかりフォローする仕組みが必要となっています。ミスマッチにより辞めている優秀な人材がいますので、そこをまた繋ぐ仕組みを考えることができれば、これも高度人材を活用できることになりますので、考えていただければと思います。
  • 若者や高齢者、女性等の人材育成は必要だと思います。特に若者の実態として、高校、大学生時代からの不登校が引き金となり、人とのコミュニケーションがうまくいかず引きこもり状態になり、働きたいけれど働く経験も自信もない、また一旦社会に出るもバーンアウトして働く意欲を失い、就職活動をすることができない若者が多く存在します。これらは現在の社会現象とも言われています。その人たちの多くはハローワークやジョブパークを利用する機会がないので、就労のセーフティネットから漏れています。私は、10年前からこの若者就職支援事業に民間事業者として主体的にかかわってきましたが、事業スタート時に受け入れた若者の事例を挙げますと、30代の13年間引きこもっていた青年は、受け入れ半年で結婚し、その後、子どもが生まれ、父親になり、支援機関を卒業してから父親の会社に入り、仕事の経験を積んで今年、事業継承し、会社社長に就任しました。このモデルで御理解いただけたと思いますが、就職支援の成果は大きいと自負しています。実習生の若者は実家暮らしが多く、当面経済的には問題がないと思われますが、両親の高齢化や扶養から外れた場合、このまま働かないと生活保護となる可能性があります。働いて国を支えるか、支援される側になるか、本人の生活の質はもとより国の財政面から考えても大きな違いがあります。若者の就職等の支援に関する条例に基づく支援事業が今後も継続できる仕組みを京都府や関係機関と共に考え、京都府の人材確保に繋げていくことが必要だと思います。
  • 京都の企業では、海外の大学からインターンシップ生を受入れてくれる企業が少ないため、東京に流出してしまっている。
  • 最近すごく東京から京都に進出する企業が増えていますが、これは外国人の確保を狙いとしているようです。ただミスマッチがあるようで、企業はコンピューターサイエンスというプログラムができる学生を求めていたりしますが、この分野について京都の大学は必ずしも強くなかったりするようです。今後、IoTもしくはAIのところを強化していくとなれば、この分野の人材育成も重要になってくると思います。
  • 単純労働についてはいずれAI、IoTに取って代わられますので、これからは高度な人材を育成することを考える必要があります。若者や女性、海外からの留学生も含めて、高度人材をしっかり京都企業に確保する仕組みが必要です。
  • 中小企業は研修を受ける仕組みが乏しく、京都のものづくりの力は非常に先進的だと思う一方で、分野によっては海外のベンチャーの方が先進的なものづくりをやっていたりするケースがあります。研修機関を各個別の企業で用意することは難しいため、京都の強みである、ものづくりの力を将来に亘り伸ばしていくためにも、中小企業に対する研修環境を整えていくことを考える必要があると思います。
  • 多様な産業が集まるということは、景気変動に柔軟に対応するという面からも重要だと思います。その中で雇用の需給バランスをどのように保っていくかを考えたときに、雇用の安定という面からも、仕事を移りやすい環境を整え産業間の流動性を確保していくことも必要ではないかと思います。

(商工業・観光振興関係について)

  • 商店街は、地域を支えるという役割が大きい。地域力を高めるための施策を打ち出して良いのではないでしょうか。
  • 開業率と廃業率の問題では、京都府は老舗が多いという特徴からも開業率、廃業率共に低くなっていますが、これは一見良く見える反面硬直的でもあるといえます。アメリカのシリコンバレーのように、新陳代謝を促し、スクラップ&ビルドの繰り返しによる企業間競争により、企業を成長させていくことも目指す方向としては必要ではないかと思います。
  • 京都産業のブランド化について、野菜は京野菜というブランドがつくられましたが、多様性を持った伝統産業から先端産業、観光、文化、そういうものと融合した、京都ならではのものづくりという意味での京都産業のブランド化を目指すことを、長期ビジョンとして打ち出す必要があると思います。
  • 産業の成長というのは地域の振興に繋げる必要があると思っています。けいはんなでは、色々な成果を上げていますが、これをけいはんなエリアだけではなく、府域全域に広げていくことが必要だと思っています。例えば京都府南部では木津川右岸地域で農業が非常に盛んであり、こういった地域がけいはんなの研究成果を活用した高次農業化を目指していくということも必要になってくると思います。農業と食の科学と産業の結び付けによるフードバレー構想のようなものを考え、農村景観の保全やアグリツーリズムや生物多様性の保全なども射程に入れて、その効果を府域全域に広めていくことが必要だと思います。
  • 観光振興については、地域の公共交通網の整備と密接に関連していると思いますので、地域に訪れる人、地域で暮らす人両方の視点での対策を考えていくことが必要だと思います。
  • 地域でAIやIoTによるスマート農業がどんどん発達していく中では、地域を成り立たせるということに留意する必要があると思っています。地域は多様な人材や生活により成り立っているので、先端技術の活用により効率化させることばかりに気を取られていると、人が減り、地域の崩壊にも繋がりかねないので、地域がうまく先端技術と共生していく仕組みを考える必要があると思います。
  • 商店街の活性化に取り組む中で、方向性について悩むことがあります。京都府が中小企業者向けに取り組んでいる知恵の経営報告書のように、行政とも連携しながら商店街の強みや弱みを分析し、改善していくことが必要だと思います。
  • 商店街は、「時間」「空間」「仲間」の3つの「間」が足りない状況です。この問題を解決する救世主になるのは、大学教授や議員ではなく学生だと思っています。
  • 商店街は地域だと思っています。買い物するだけではなく、年配の方々から色んなことを教わるところも商店街の一つの魅力です。インターネットで物の価格だけで判断し、買い物をする方が増えていますが、商店街は地域を感じられる場所でもあるので、地域の子どもたちが自分の地域を感じられる場所として、残して行くという考え方も必要ではないかと思います。
  • 商店街はビジネスとしての位置づけだけではなく、地域のコアだという観点からも対策を考えることが必要です。ビジネスだけを考えるのでれば、別に商店街である必要はないわけですが、人が集まり地域を形成している場所でもあるので、空き店舗の問題など、店舗の開業・廃業がうまくいっていないという課題はありますが、そういった観点からも対策を考えていくことが必要だと思います。
  • 商工業の目指すべき将来像の20年後のありたい姿の中に、地域の商業がどうあるべきなのかということの記載がありません。商店街は物を売るだけではなく、地域コミュニティを支える基礎的なインフラという重要な側面がありますので、ぜひとも長期ビジョンに方向性を入れていただきたいと思います。
  • 企業が京都への進出を考えた場合に問題となっているのは、オフィスが全く建っていなく、場所がないということがあります。工業用地もほぼないということでしたが、企業を誘致する上で、場所がないというのは非常に大きな課題でありますので、対策を考えることが必要だと思います。
  • 農商工連携については、地域資源を活用するということを観光庁も重視していますし、6次産業化を進める上では農業者と商工業との連携が非常に重要になってきますので、そういった観点からも、商工業の計画にも対応を記載する必要があると思います。
  • 京都府の製造業のターゲットは、京都府内ではなく、日本全国であり、海外です。そうした時に必要となってくるのは、今までにない物を作っていくことです。そのためには、大学や研究機関と連携していくことが重要になってきますが、大企業や京都市内に近い企業を除き、ほとんどの中小企業はうまく連携できていません。京都府内全域の中小企業がしっかり連携していける仕組みづくりが必要です。
  • また、中小企業を支える取り組みとして中小企業応援隊という経営支援制度がありますが、最先端技術の発展なども踏まえ、府域全域で、専門性の高い人材によるサポートが受けられる仕組みを整えていくことが必要です。
  • 京都産業のブランド化について、京野菜等、既に取り組まれているものもありますが、ものづくりでも取り組んでいく必要があると思います。メイク・イット・イン・京都、こういうようなことをもう少し大々的にPRし、ブランド化を推進していくことも必要だと思います。
  • 京都府内の開業率を高めるためには、創業者をインキュベートする仕組みが大切だと考えます。現在、さまざまな支援機関があり、相談窓口を開設されてビジネスのスタートアップ手続きや各種補助金申請等の窓口は見受けられますが、それ以前の事業アイディア初期の段階や、若者や女性が働き方の選択の一つとして企業を考えたときの相談窓口がないため、気軽に創業を相談できる場を設けることが必要だと思います。
  • 観光振興については、観光する側の満足度と観光資源を提供する側が双方にメリットがあることが望ましいと考えます。つまり、地域社会と観光との共生です。そのためには、地域の文化や歴史を掘り起こし、観光に繋げることが必要です。地域の祭や神社仏閣の再現、季節の祭、地域の食文化、風習等を地域ごとに再現して観光資源にできれば、地域の活性化や絆も深まり、地域力低下も防ぐことができるかと思います。

お問い合わせ

総合政策環境部総合政策室

京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町

ファックス:075-414-4389

sogoseisaku@pref.kyoto.lg.jp