第2回経済部会の開催結果
日時
平成30年10月30日(火曜日)午前10時00分から午前12時00分まで
場所
出席者
委員
牧部会長、柿迫委員、齋藤委員、徳岡委員、錦織委員、久本委員
事務局
前川危機管理監、坂本防災監、松村府民生活部理事、加藤防災消防企画課、山本災害対策課長
益田公営企業管理監兼副部長、本間公営企画課長、安田水環境対策課長
谷川建設交通部理事、礒岩道路管理課長、木寺砂防課長、和田建築指導課長、堀本インフラ長寿命化担当課長
配布資料
議事内容
各委員からの主な意見
【牧部会長から防災対策について紹介】
- 近年、京都府に起こった災害ということで、平成16年までは平和でしたが、平成24年、25年、26年と3年連続で大きな水害が、宇治それから京都府の北部、それから福知山と発生しまして、それから時間が空いて大丈夫かと思っていましたら、昨年は舞鶴などで台風被害が発生しました。今年に入っては、大阪北部地震から始まり、7月の豪雨ということで、人がお亡くなりになるような被害が京都府綾部等で発生しており、今年はこれで終わりかと思いましたら、関西空港が大きな被害を受けた台風21号が発生をしました。これはまず偶然なのかということですが、実は雨が降る日というのは年々減っており、強い雨が降る日が非常に増えています。下水道は1時間に50ミリの雨を超えると排水ができないという基本的な設計基準となっておりますので、こういった強い雨が降ると、どうしても水害が発生をしてしまう状況にあります。
- 最近、水害が発生をしているということは、偶然ということではなくて、地球温暖化ということが確実に影響を与えているということが言われております。
- 次に地震でございますが、これも偶然増えているのかというとそうではなく、今後30年の南海トラフ地震の発生確立が80%ということで、この南海トラフ地震というのは、大体100年から150年に1回起きておりまして、非常に周期的に起こっています。この周期的に発生する分だけではなく、日本の特に西南日本、西日本ですけども、地震が起きる時期というのは決まっておりまして、この南海トラフ地震が起きる前に地震が頻発しております。南海トラフがユーラシアプレートの下に潜り込むと、ひずみが異常なことになりまして、この時期に地震が起きます。兵庫県南部地震以降ですけども、大阪北部地震だけではなくて、鳥取の地震が2回ございましたし、淡路島でも地震がございましたということで、近年、地震の回数が増えているというのも、偶然ではなく、そういった状況が起きるということなので、これにどう備えていくかというのが今まで以上に私たちに求められるということです。
- 今後の対策を考える場合として、一つはレジリエンスという言葉があります。防災ではレジリエンスというのを抵抗力プラス回復力と言いまして、抵抗力というのはハード整備です。災害で被害が出ないようにすることは非常に重要なことですが、被害をゼロにするというのは非常に財源も必要ですので、それに加えて回復力、要するに起こった災害にいかに対応していくのかということ、これを両方ともしっかりと考えましょうというのが、今、防災を考える場合の一つのポイントです。
- それからもう一つ、業務を守るということが今防災対策の目標になっております。東日本大震災や熊本地震の際、地震で工場が止まると、日本全国の工場もしくは世界の工場が停止するといったことがありまして、災害の被害は直接被害と呼ばれる建物が壊れ資産が失われるということにプラスして、災害によって営業ができなくなるという間接被害、この二つをしっかりと考えていくことが必要となっています。間接被害の割合は非常に大きく、東日本大震災では16兆円の直接被害がありましたが、それに対して間接被害は8兆円、10兆円という、直接被害と変わらないような被害が出ており、これにどう備えるのかということも重要な課題となります。
- 防災を考える上で避けて通れないのが少子高齢化です。下水道も防災対策すべきですが、利用される方が減っており、防災投資をしてもなかなか便益が昔ほど上がらないということもございます。また、岡山の真備町でも災害でお亡くなりになられた方は高齢者がほとんどで、災害弱者の方が増えていますが、それを助ける方々が地域にいないということで、災害弱者への対応を考える必要があります。
- 災害復興というのは、高度成長期では実はそんなに大変ではなく、経済が右肩上がりなので、放っておいても元には戻るのですが、横ばい若しくは下降している状況から元の状態に戻すというのは非常に困難です。これまで日本は復興に関する法律がありませんでしたが、東日本大震災の後、大規模災害からの復興に関する法律ができまして熊本地震に適用されたように、災害復興という課題もあります。
- 災害対応の担い手ということで、よく言われる自助、共助、公助ですが、互助を入れた方が良いのではと言われる方もおられます。
- 互助というのはいわゆる地域コミュニティです。地域の防災力をどう上げていくのかということが非常に重要になります。
- 共助というのは、NGOですとかNPOとか新しい担い手で、特に水害のときには家の中から泥を出すというのは本当に必要で、不可欠な存在であり、そういったボランティアとの連携をどうするのかが重要です。
- ポイントとしては公助、基本的にハード対策を行うわけですが、やはり求められるのは災害対応能力の向上です。京都府は実は災害対策本部の特別の建物というのは、近畿では他の府県全部持っていますが、京都府にはございません。ですので、災害が起きた時にトイレや電気が使えるということが本当に可能なのか、また、免震もないので、そういったことも考えないといけないと思います。
- それとやはり基本は自助となります。自宅が壊れないような対策をしていただくことと、もう一つは正しい理解が必要です。原子力災害や水害対策もですが、実は間違って色々な情報を理解されているということもあり、正しい理解をしていただくことが重要ではないかと考えております。
【防災・減災対策について】
- マニュアル化を進めるということですが、策定して終わりというような実際に使えない危機対応マニュアルが多く、実際災害が起こった際に、皆が本当に動けるのかすごく不安です。マニュアルを策定するのは良いのですが、実際の訓練みたいなものをセットに皆の意識付けを行い、使えるマニュアルにする必要があると思います。
- 会社を経営しておりますとマニュアルも大切ですが、最終的に人に頼らない仕組みが必要ではないかと思っております。仕事をする際にもパッと見たら分かるよう、視覚的に理解ができるごく簡単なハード化のようなものがありますが、そういうものを作ると日頃から意識付けができますし、人が替わったり、責任者が不在でも対応ができると思います。
- 災害発生時には正確な情報を地域ごとに発信していくことが必要です。自分の地域の電気・ガス・水道、交通事情など、2次災害を防ぐ観点からも、不要な外出は避けるべきで、給水車がどこまで来ているのか、道路がいつ復旧するのかなど、スマートフォンの普及によりSNSなどからの情報が溢れている中で、行政が正しい情報を発信し混乱を抑制することが重要だと思います。
- また、情報を発信する場合には受け取った私たちがしっかり対応できるよう、マニュアルの中で、私たちがやらなければならない役割を伝えることも必要だと思います。
- 地域の防災で一番のキーは電力ですが、これまで電気への対応は関西電力任せとなっています。府民生活にとって、例えばガスの湯沸かし器とかガスのファンヒーターとかでも電気がないと使えませんし、電気に対する対応を関西電力任せとするのではなく、防災体制を日常的に整えていくことは府としてやるべきことだと思いますので、計画に加えていただきたいと思います。
- 電力会社と連携して大規模に完全復旧することはもちろん大切で、それはきちんと対応いただきたいと思いますが、復旧までの間の電力確保をどうするのかを考える必要があると思います。各家庭で例えばバッテリーを置いて深夜電力で充電をしておくとか、地域の公民館である程度の規模のバッテリーを設置し蓄電するとか、太陽光発電の活用など、そういった取組みに対しての支援、補助が必要だと思います。
- 情報発信の件ですが、フェイクニュースが流れると困るので、各自治体の防災無線や地域FM局、アマチュア無線を持っている方を活用することも考えてみてはいかがでしょうか。地域FM局では正確なローカル情報を伝えることができると思いますし、アマチュア無線は免許を取得する必要があるので、身元が明らかで信用もできます。北海道の地震の際にはラジオが一番良かったと聞いていますので、そういった主体と自治体とが連携して緊急時の一斉放送ができないかと思っております。
- 未曾有の災害に対して個人で対応できることは限られており、基本的にはコミュニティの中で対応することが重要だと思います。災害が発生した場合、色々便利なツールがありますが、これを個々が使ってしまうと大変なことになります。お互いが尊重し合い助け合いながら、難局を切り抜けるためにどうすれば良いか、地域でしっかり話し合い、マニュアルを策定する必要があると思います。
- 地域では災害時に消防団がお年寄りの各家庭を回って危険を知らせていますが、道路が皮一枚残っているような危険なところを通り、身を挺して声かけをしており、消防団の方が危険に晒されるケースがあります。また、災害時に避難所である公民館に逃げられている方がいますが、災害の種類によっては逆に避難所に逃げることが危険となっていることもあります。これは地域の皆さんが、災害時にどう判断をしてどう動くのか、どこへ避難するのか、正しい情報が伝わっていれば防げることであるので、地域でどうするのかということをしっかり議論することが必要だと思います。
- 災害が起こった際に、一番危険なところに人が行くというのではなく、ドローンなどITを使って現状把握をするということも、人命を守る観点から必要だと思います。
- 福祉関係もそうですが、地域力が落ち続けている現状がある中、全てを地域に任せるというのは難しいと思います。自営業者はどんどん減っており、会社勤めの方は長距離通勤していて家は寝るところという現状で、自治会に入らない人も増えています。
- このような中、地域防災力を強化するためにみんな頑張りましょうと行政が声をかけても、その地域自体の力がすごく落ちているので、それをいかに高めるかという中長期的な政策目標を立てることが、経済部会だけの問題じゃなく全体を通じた重点項目として考える必要があると思います。
- 京都府北部は京都府唯一の港である舞鶴港がありますし、兵庫県の但馬空港とも近接していますので、南海トラフ地震が起こった際の避難地としての役割を考える必要があるのではないでしょうか。
- 先日の台風21号の際には関西国際空港が使えなくなり、外国人観光客の方は東京に殺到されましたが、南海トラフ地震が発生すると名古屋も使えなくなりますので、両方使えない状況になると、鉄道で湖西線を使うか、舞鶴から船で新潟まで出ていく以外、実は方法がありません。ぜひそういうことも今回の台風21号から学び、南海トラフ地震発生時を想定した対応を考える必要があると思います。
- ガス供給について、大阪ガスのタンクは基地が堺と姫路ですので、そこからこの京都の五条へガスが供給できないことになると、非常に大きな問題になります。エネルギー供給を日本海側にどれだけ持ってこられるか、日本のエネルギー拠点としての北部の役割というのは非常に重要だと思います。
- 原子力災害対策について、府民に負担を求めるのではなく、関西電力に負担させる等の対応が必要ではないか。
- 共助のところについて、地域に頼らず食事や住まいを自分で確保し、ボランティアとして参加いただいている方が非常に地域の力になっているので、そういった方を支援することにより、ボランティアを広げていくことが必要ではないでしょうか。
【上下水道について】
- 上下水道の老朽化や耐震化の問題について、対策を講じるならば収入が不足するので値上げするしかないということでしたが、結局これは危機管理の観点から見れば防災対策として必要であり、単に上下水道事業の問題ではなく、広い目で捉えるべきだと思います。
- 下水道の持っている機能として雨水処理がありますが、これは治水対策でもあり、極めて公共財としての位置づけが強いと思いますので、経営ということも重要ですが、公的な視点で治水事業という面からの整備を考えても良いのではないでしょうか。
- 僻地に住んでいる者として下水道整備の方針を見たときに、最後に残った未整備地域は切り捨てますよというふうに聞こえます。そうではなく、公的に行うべき事業だと思いますので、たとえ利益に合わなくても整備していくべきだと思います。
- 山間地では下水道整備ができるところとできないところがあり、できないところは全て合併浄化槽となっております。合併浄化槽を設置するときには補助金による支援がありますが、その後の維持費については負担金を支払っておりこれが地域のお年寄りには負担となっています。下水道整備地域と未整備地域とで不公平とならないよう、時代に応じた新しい整備方針を考えていただきたいと思います。