平成28年度第2回京都府「明日の京都」第三者委員会の開催結果
日時
平成29年2月7日(火曜日) 午前10時から正午まで
場所
出席者
委員
井口座長、赤瀬委員、芦田委員、尾池委員、佐々木委員、澤井委員、西村委員、松下委員、宗田委員
講演
前野隆司 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
事務局
畑村政策企画部長、梅原政策企画部副部長、古澤計画推進課長、岩田明日の京都担当課長
議事内容
前野教授 講演「幸福学入門」
- 幸福の持続性
- 地位財は短い(周囲との比較で満足を得るもの。所得、社会的地位、物的財等)
- 非地位財は長い(他人との比較とは関係なく幸せを得られるもの。環境的、身体的、心的な要因によるもの)
- 心的要因の分析による「幸せの4因子」
「1.自己実現と成長」、「2.つながりと感謝」、「3.前向きと楽観」、「4.独立とマイペース」
- 日本とは、あらゆるものを受け入れ、常に自分のものとしてきた、サステナブルで調和・平和の国
意見交換
- 「幸福」は総合指標だが、「満足」は部分的なものである。部分的な満足を足し合わせたものが幸せとなるので、満足度だけでなく幸せも市民に尋ね、どの満足が幸せに寄与しているのか調査すると、政策を打ち立てやすいのではないか。
- 幸せの4因子のうち、「3.楽観」と「4.独立」はユニークで面白いと感じる。京都府の長期ビジョンには、3.4.の視点が少ないのではないか。
- 幸せの4因子のうち、「2.つながり」と「4.独立」は矛盾するようだが、「和して同ぜず」という言葉のように、両方とも高い人が幸せである。
- 明治に家制度が家族へと変わり、今はその家族が崩壊を始めている。古い仕組みから新しい仕組みへと移る中で、家庭以外の場に4因子を見出すことができた人は幸せを感じられるが、それができない人は、時代の変化に取り残されることになる。
- 家族以外のつながりを求める動きが生まれているが、元気でそれができた人と、取り残されてしまった人とで、格差が拡大していく。この人たちを繋ぎ直すことが必要になる。
- 世界的に見て日本は幸せの男女差が最も大きい国のひとつである。男女間格差の問題があると言われるが、女性の幸福度の方が、男性よりかなり高い。
- 女性が幸せを感じているのは、女性が自由に行動し、条件に差はあっても仕事ができるようになったことがあるのではないか。
- 労働者がAIに置き換わる社会が来るかもしれないが、置き換わるのは単純な仕事であり、人々はクリエイティブな仕事に移行することができると思う。いかに各個人に強みを持たせるかが課題。
- 事務職で、朝から晩までずっと同じルーチンワークをしている人はあまりおらず、AIに置き換わるにはかなり時間が掛かる。何がルーチンワークであるかを調べ上げ、そこをAIに置き換えれば、例えば1時間掛かっていた作業が15分になるだろう。
- 「4.ありのままに」個性を出し、「3.前向きに」、多様な「2.つながり」を作りながら、新しい働き方を作る。これができれば、AI時代でもより幸せになれる。
- 京都府も、各市町村単位の視点から見ると、それぞれ有り様が全く違う。4広域振興局という単位でも広すぎる。合併前の旧市町村といった細かい単位で、4因子での幸福分析を行う必要があるのではないか。
- 市町村合併をしても、まちづくりをするに当たり、やはり旧村単位が収まりやすいと感じている。
- 共生社会を実現するには互いの価値観を認め合うことが必要となる。多様な価値観は必要だし、重要だが、許容性が少なくなっているのではないか。
- 現行の基礎年金制度は、他人との比較により支給額を決めており、その意味では地位財と言える。幸福度が高いと言われるブータンを参考にすると、幸せ実現のためには、年金支給額の多寡よりも、人のつながりを上手く作ることの方が大切ではないか。母子家庭の人が共同で暮らす「ペアレンティングホーム」では、一緒に住むことで助け合え、幸福度が上がったという例がある。
- ヨーロッパでは、高齢者向けの住宅は大都市の中央に作る。高齢者ほど歩いていける範囲に様々なものが必要だ。若者は車で移動すれば良い。日本のまちづくりはそうなっていない。