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私は、今年の1月にカンボジア王国に派遣され、2月から北西部にあるバッタンバン州立病院に着任しました。職種は看護師で、看護実践の質向上を目指して、看護部で現地看護師・助産師と共に働いています。私の同僚は、看護部長、副看護部長など計5名で、うち3名は男性看護師です。カンボジアでは、助産師は女性のみですが、看護師は男性の割合が高く、これまで女性看護師とばかり仕事をしてきた私は、着任当初、彼らと信頼関係をどのように築いていけば良いのか若干不安な思いもありました。しかし、実際共に働いてみると、皆のんびりと明るく、優しい人ばかりで、すぐに不安は払しょくされました。写真1は、着任してすぐにシアヌークビルという美しい海岸のある州病院で行われたワークショップの帰り道で同僚と一緒に撮ったものです。
写真1 看護部の同僚。左から看護部長・アドバイザー・私
カンボジアでは1970年代の内戦によって多くの医療人材が失われ、教育制度の崩壊によって人材育成も立ち遅れました。その後、看護師教育制度は整備され、3年制の看護学校から現在では、4年生の看護学部もでき、学士看護師も増えてきています。しかしながら、現場の看護師は依然として、医師の補助という役割内にとどまっており、専門職としての能力が活かしきれず、自立できていないのが現状です。また、病院施設の劣化と医療設備の貧弱さから、交通事故や生活習慣病の増加によって増え続ける患者に対応しきれず、病院の外に寝かされている患者も多く、療養環境は劣悪と言わざるを得ません。しかし現在、日本のODAによって、外科・ICUの新病棟が建設中であり、クメール人皆、この完成を心から待ちわびています。写真2は、新病院の竣工式の様子です。
写真2 カンボジア政府関係者・日本国大使など参加されました
療養環境が劣悪と書きましたが、日本人が考えるほどに患者さんや家族には深刻さや悲惨さは見られません。患者の入院には、鍋・かま、ハンモック、ゴザをもって一家が付き添いにやってきます。家族は涼しい木陰にハンモックを吊るして休憩し、共同炊事場で食事を作り、患者さんにご飯を食べさせ、体をさすり、話を聞いています。親身に看病する家族の姿を毎日見ていると、この国の豊かさを感じることができます。開発途上国への支援といいながら、日本で生活していると忘れがちな素朴な愛情に改めて気づかされ、逆にこの国から得ることも多いと感じる毎日です。
写真3 現病棟の様子
写真4 病棟の外で家族が使うかまど
写真5 病棟の外の様子(左端、家族がハンモックで寝ている)
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