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産学公連携、産業振興の一環として、京の研究者・専門家の皆さんを紹介するページです。
(掲載日:令和5年10月6日 聞き手・文 ものづくり振興課 石飛)
「光合成活性の高い樹木を選定するモデルのイメージ」
京都工芸繊維大学 応用生物学系の半場祐子教授(以下、先生)に少しお話を伺いました。
先生は、都市における脱炭素化を目的とし、大気中のCO2を吸収する能力の高い樹木を効率的に選抜する光合成活性評価モデルの開発を行っています。
背景には、街中の樹木の少なさが都市温暖化の原因の一つとなっていること、現在の樹木選定にはCO2を吸収する能力の高い樹木は選ばれず、花の美しさや管理の容易さが優先されていることなどがあります。
そこで先生は、気候、車の多さ、日照時間など、地域毎に最適な樹木の配置を行うためのモデル開発を目指し、「品種」と「場所」等の組み合わせによる比較方法(安定同位体(※))を用いて実施しています。
イチョウは都市部でこそ光合成が活発になるかもしれない、ソメイヨシノは夏になると京都市中心部では機能低下が大きかった、ソメイヨシノとヒラドツツジでは光合成活性が2倍以上の違いがある(図1)といった具合。このようなことが樹木配置に活用されれば脱炭素化に繋がり、辛い猛暑も緩和されることなどが期待されます。
(図1)「ソメイヨシノとヒラドツツジの光合成活性の比較」
ちなみに先生が安定同位体を使うと、以下の図2の赤色部分のように京都駅周辺で特にヒラドツツジがストレスを受けていることなどが分かります。
当研究の強みは、場所を選ばず、ちぎった葉っぱ1枚からでも、乾燥又は粉末にした葉からでも炭素量を測定可能でかつ安価である点です。
現在、光合成活性を測る為には、現地で「生きた」葉を測定する必要がありますが、府域全体を調べるには非現実的な作業となっている状況ですので、先生の方法は画期的と言えます。
この技術が確立すれば、将来的には住まいや町づくりなどにも活用できて面白い事業展開が想像できます。
先生はハイキングが好きで、山頂から町を見渡した時に「緑を増やしてもっと快適な街にしたい。」と思うそうです。日本の都市には緑地が少なすぎるそうで、緑の多い未来を熱望されています。今後の展開が楽しみです!
「半場 祐子教授」
(※)安定同位体
環境に対する植物の反応を研究するために利用される研究手法。
測定スケールが幅広く、積算的な情報が得られ、分析が容易でコストも安い点が利点。
今回は主に、光合成能力の情報などがとれる炭素同位体比を測る。
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