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(掲載日:平成29年12月4日、ものづくり振興課)
UIJターンによる起業支援―
事業継続・創生支援センターでは、首都圏等から京都への移住、そして京都での起業等に繋げていく取り組みを行っています。具体的には今年度は
を実施しており、今回、南丹地域ビジネスサポートセンターと共催し、京都丹波地域をモデルとしたUIJターン起業セミナーを開催しているものです。
6回連続講座の4日目の12月2日(土曜)は、実際に京都丹波で創業された2組の先輩経営者を訪ねるツアーが行われましたので、その様子をレポートします。上記「十人十話」参加者も、関東から遠路はるばるご参加いただきました!
まず最初に訪問したのはGOMA(南丹市胡麻町)さん。東裏さんご夫妻で、Web制作・パンフレットづくり、サイクリングツアー、ゲストハウスなど手広く手掛けてらっしゃいます。
篤史さんは、近隣の亀岡市出身、もともと京都市内のサイクリングツアーの会社に勤めてらっしゃって、その間に広告デザインやWebスキルを身につけられたそう。また、晶子さんは、元公務員で一級建築士、英国留学を経て、民間企業の管理職として経営ノウハウを身に付けられるなど異色の経歴をお持ちです。
日本では観光のための手段と考えられがちな自転車だが、欧米の方々は、それ自体をアクティビティと捉えていること、そして京丹波のエリアは、実は意外と見どころが多いと前から感じていたそう。
サイクリングツアーでは、地域のほかのお店にも人を連れていくとのことで、地域とのつながりもバッチリだ。「もともと人と会うのが、どちらかと言えば億劫だった」という篤史さん。しかし、前職は中小企業であり、まさに何でも自分でしなければならず、人と会うことも含めて様々なノウハウを身に付けた。そして、今はコミュニケーション力抜群の晶子さんの影響で、すっかり人と話すことが好きになったそう。
Web制作・パンフレットづくりも、こうした地域とのつながりがベースにあるようだ!南丹市をはじめ近隣の京丹波町、亀岡市等向けに展開されている。作品の出来を拝見しても、センスの高さが目を引きます。
サイクリングツアーにせよ、Web制作等にせよ、この地域、他の企業(顧客)に、これまでにはない価値を生み出してらっしゃることだろうと容易に想像できました。
起業間もない間は特にご苦労も多いと思いますが、こちらのキーワードとしてらっしゃることは、まず「多業」。収益の柱をいくつも持っておくこと。そして、「BtoB」。しっかりと価値をわかってもらうということですね。そして「アライアンス」。やはり自分たちで全てはできないし、その必要もないということ。例えばゲストハウスは、宿泊はできるが、飲食はされてないので、そこは地域の仲間のお店を頼られる。地域にとっても良いことですね。
しかし、決して地域に引きこもっているわけではありません。「東京でもどこでも出掛けていって、新しいネットワークを作ってくる」とのこと。海外経験があるので、ボーダーを気にせずどんどん超えていくそう。そりゃあ、ビジネスが広がりますよねえ!
京都丹波での起業のメリットは何か。
やはり、生活費の安さ、イニシャルコストの安さはその一つだそう。オフィス・ゲストハウスのイニシャルコストにしても、都会とは桁が全然違うとのこと。
一方最大のピンチは何だったのか。
「web作る会社なのに、最初はネット環境が整っていなかった(笑)」ことだそう。なので、近隣の町に出て行って喫茶店を巡って仕事をする日々もあったとのこと。
「でも、起きて夜寝る、普通の生活ができることがありがたい」。
この自然豊かな京都丹波を拠点としたビジネスを、存分に楽しんでらっしゃるように思いました。
続いて訪問したのは、ちょうど12月1日に「やさいおいる」の販売を開始された株式会社京都ものがたり(京丹波町高岡)さん。このプロジェクトを立ち上げられたメンバーの一人、閔(ミン)さんが講師を務めてくださいました。
「今年の7月7日に株式会社化しましたが、このプロジェクトは5年前からです。しかし、最初は誰も知り合いのいない土地に私たちだけぽつんと来たので、地域の皆さんにも理解できなかったと思います。」
生れも育ちも、韓国のソウルのど真ん中だそうですが、2008年に東京・新宿で日本語学校に通われ、縁あって働き始めた京都で農家と知り合い、その販路開拓を支援することになったとのこと。
「ところが、漬物をネットショップで販売するのに、お店と同様に袋のままだったんですよ。汁がこぼれますよね」と、販路開拓以前にパッケージから見直さなければならなかったそう。京都府内のいくつかの地域の農家をお手伝いしているうちに、中学生の頃からぼんやりと考えてきた「起業」を自覚するようになったそう。「でも、別に知り合いがいるわけでもないし、普通に京都市内で起業するという風にはしたくなかった」とのことで、やがて府に「京都丹波 食彩の工房」を教えてもらい、この京丹波町・竹野地区にやってきたのだそう。
「成功するためには絶対移住をしなければいけないと思っていた」とのことで、2年前に京丹波町内にアパートを借りたんだそう。ところが、自動車が不可欠なこの地域で、ペーパードライバー、というか、そもそも自動車を持ってない(創業時に買うだけの資力、普通はないですよねえ)。町営バスは、行きは役場を朝9時発、帰りはなんと昼12時に竹野地区を発車してしまう。そこで、閔さんは、朝は町営バス乗り場まで1キロ強、帰りは仕事場から自宅までの4キロ強の道のりを、大人用キックボードに乗って通勤したのだとか!
「幸いなことに、それが新聞に取り上げられて、知らない方からよく声をかけられた」という閔さん。キックボードを漕いでいる閔さん見つけた町民の皆さんが、乗っていきなよと、よく助けてくれたのだそうです。
まず最初の1年間は「地域の行事には何でも顔を出した」とのこと。その甲斐もあってか、この地域には800人くらいの人がいるそうですが、みんなとっても優しくしてくださるとのこと。「閔ちゃん、ちゃんとご飯食べてるか」などと声をかけてもらうそう。「でも、特におじいちゃんの日本語は難しい」と笑いを取るのも忘れない。
やがて、この竹野の住民になりたい、でもお金がない― 「だったら」と、地域の皆さんが家を探してくれて、今年、数十万円で(安い!)家を買ったんだそう。現実的には起業して融資を受けるのにも住所が必要です。
「でもトイレだけは、どうしても昔のものは耐えられない」とのことで、今改修工事をしている最中だとか(ここでもいちいち笑いを取ってくる!まあ、大都会ソウルのど真ん中で生れ育った若者ですから。)
「地域に産業がなければ、学校で地域を離れた若者が、地域に戻って来られない。工場が立地しても驟雨う蝕するだけ。やっぱり地域に産業を作らないと」という閔さん。そうして行きついたのが、今回販売開始された「野菜おいる」。
いろいろご苦労はあったようで、品揃えを増やしていくには、「作ったことがない」という農家を説得していく必要もあった。地域で野菜を栽培するところから含めて、全ての地域で行われているということが伝わるパッケージデザインを作っていく必要もあった。商品のアップグレードもユーザーの声を聞いて何度も繰り返してきたし、現在も商品の特長を、ユーザーのセグメントごとにどう伝えていくのか研究中とのこと(ここは大変重要ですね!)。
カタカナではなくひらがなで「おいる」と表現しているのは、外国人はひらがなは読めてもカタカナはなかなか読めないという、経験者ならではの発想。
「開発、製造も一定目途がついてきたし、地域の皆さんに任せて、私は売りに行きたいのです!」と力を込める閔さん。今後の販売拡大が楽しみです!
実際に起業を考えてらっしゃるエリアの先輩経営者のお話は、とても勇気もヒントも得られるものでありました!皆さん、引き続ぎ頑張ってまいりましょう!
(掲載日:平成29年11月20日、ものづくり振興課)
「十人十話~十人十色の『私の移住・転職物語』~」が、首都圏から京都へのUIJターン起業等の促進であるならば、こちらは、更にエリアを絞って京都丹波にクローズアップするとともに、より創業段階に近い方々を対象にしたセミナーです。
11月11日(土曜)から、12月16日(土曜)まで毎週集中的に全6回シリーズで実施。京都市内の方や、京都府南部地域の方も参加。中には、「既に起業し、事業の2本目の柱を見つけたい」との参加者も。
第4回(12月2日)には、南丹市胡麻の先輩起業家「GOMA(外部リンク)」さんを訪ねるツアーも!
楽しみです!
事業継続・創生支援センター連携事業「移住も起業もこわくない!京都丹波創業セミナー」(11月11日、18日、25日、12月2日、9日、16日開催) チラシ表(PDF:657KB)、チラシ裏(PDF:396KB)
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