○京都府犯罪被害者等支援条例
令和5年3月17日
京都府条例第8号
京都府犯罪被害者等支援条例をここに公布する。
京都府犯罪被害者等支援条例
目次
第1章 総則(第1条―第9条)
第2章 犯罪被害者等支援に関する基本的な施策(第10条―第23条)
第3章 犯罪被害者等支援に関する推進体制(第24条・第25条)
第4章 雑則(第26条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、犯罪被害者等支援に関し、基本理念を定め、並びに府、府民、事業者、学校等及び民間支援団体の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等支援の推進に関し必要な事項を定めることにより、犯罪被害者等が受けた被害の早期の回復及び軽減並びに犯罪被害者等の生活の再建及び権利利益の保護を図り、もって、犯罪被害者等を社会全体で支え、誰もが安心して暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 犯罪等 犯罪及びこれに準じる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
(2) 犯罪被害者等 犯罪等により被害を受けた者及びその家族又は遺族をいう。
(3) 犯罪被害者等支援 犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるようにするための取組をいう。
(4) 二次被害 犯罪等により被害を受けた後に、周囲の者の無理解又は配慮に欠ける言動、インターネットを通じて行われる誹謗中傷、報道機関による過剰な取材等により、犯罪被害者等が受ける精神的な苦痛、心身の不調、名誉の毀損、私生活の平穏の侵害、経済的な損失その他の被害をいう。
(5) 再被害 犯罪被害者等が、当該犯罪等の加害者から再び被害を受けることをいう。
(6) 民間支援団体 犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和55年法律第36号)第23条第1項に規定する犯罪被害者等早期援助団体その他犯罪被害者等支援を行う民間の団体をいう。
(基本理念)
第3条 犯罪被害者等支援は、犯罪被害者等の個人としての尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利が尊重されることを旨として行われなければならない。
2 犯罪被害者等支援は、犯罪被害者等が受けた被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に行われるとともに、二次被害が生じることのないよう十分に配慮して行われなければならない。
3 犯罪被害者等支援は、犯罪被害者等が被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう推進されなければならない。
4 犯罪被害者等支援は、府、市町村、国、府民、事業者、学校等(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校(以下この項において「学校」という。)及び学校以外の教育施設でその教育課程が学校の教育課程に相当するもの、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園並びに児童福祉法(昭和22年法律第164号)第39条第1項に規定する保育所をいう。以下同じ。)、民間支援団体その他の関係者(以下「市町村等」という。)が連携し、及び協働して社会全体で推進されなければならない。
(府の責務)
第4条 府は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市町村等との適切な役割分担を踏まえて、犯罪被害者等支援に関する総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するものとする。
2 府は、前項の規定による施策の策定及び実施に当たっては、市町村等と連携し、及び協働して取り組むものとする。
3 府は、市町村が行う犯罪被害者等支援に関する施策の策定及び実施を促進するため、技術的な助言その他の必要な支援を行うものとする。
(府民の責務)
第5条 府民は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性について理解を深めるとともに、二次被害を生じさせることのないよう十分配慮しなければならない。
2 府民は、府及び市町村が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性について理解を深めるとともに、事業活動において二次被害を生じさせることのないよう十分配慮しなければならない。
2 事業者は、基本理念にのっとり、その従業者が犯罪等により被害を受けたと思われるときは、その就業に関し、必要な配慮を行わなければならない。
3 事業者は、府及び市町村が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(学校等の責務)
第7条 学校等は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性について理解を深めるとともに、教育活動等において二次被害を生じさせることのないよう十分配慮しなければならない。
2 学校等は、基本理念にのっとり、在籍する幼児、児童、生徒又は学生(以下「児童生徒等」という。)が犯罪等により被害を受けたと思われるときは、当該児童生徒等が安心して教育等を受けることができるようにするため、その学校生活等に関し、必要な配慮を行わなければならない。
3 学校等は、府及び市町村が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(民間支援団体の責務)
第8条 民間支援団体は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等支援に関する専門的な知識及び経験を活用し、犯罪被害者等支援を推進するものとする。
2 民間支援団体は、府及び市町村が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(支援に関する計画)
第9条 知事は、犯罪被害者等支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な計画(以下「犯罪被害者等支援推進計画」という。)を定めるものとする。
2 犯罪被害者等支援推進計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。
(1) 犯罪被害者等支援に関する基本方針
(2) 犯罪被害者等支援に関する施策の目標
(3) 犯罪被害者等支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 犯罪被害者等支援推進計画は、京都府犯罪のない安心・安全なまちづくり条例(平成16年京都府条例第42号)第3条第1項に規定する犯罪被害者等に対する支援に関する計画と一体のものとして策定するものとする。
4 知事は、犯罪被害者等支援推進計画を定めるに当たっては、犯罪被害者等及び府民の意見を反映させるために必要な措置を講じるものとする。
5 知事は、犯罪被害者等支援推進計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
6 前2項の規定は、犯罪被害者等支援推進計画の変更について準用する。
7 知事は、毎年、犯罪被害者等支援推進計画に基づく犯罪被害者等支援に関する施策の実施状況を取りまとめ、公表するものとする。
第2章 犯罪被害者等支援に関する基本的な施策
(相談及び情報の提供等)
第10条 府は、犯罪被害者等が、その受けた被害(二次被害を含む。第19条第1項を除き、以下この章において同じ。)を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるようにするため、犯罪被害者等が直面している各般の問題について相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、犯罪被害者等支援に精通している者を紹介する等必要な施策を講じるものとする。
(日常生活の支援)
第11条 府は、犯罪被害者等の早期かつ円滑な生活の再建には、犯罪等の被害により現に支障を来している日常生活の再建が重要であるとの認識の下に、犯罪被害者等が、その置かれている状況に応じて、家事、育児等に関する支援を受けることができるようにするため、情報の提供及び助言その他の必要な施策を講じるものとする。
(心身に受けた影響からの回復)
第12条 府は、犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響(二次被害によるものを含む。)から早期に回復できるようにするため、その心身の状況等に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講じるものとする。
(安全の確保)
第13条 府は、犯罪被害者等が更なる犯罪等により被害(再被害を含む。)を受けることを防止し、その安全を確保するため、一時保護、施設への入所による保護、防犯に係る指導、犯罪被害者等に係る個人情報の適切な取扱いの確保その他の必要な施策を講じるものとする。
(居住の安定)
第14条 府は、犯罪等の被害により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図るため、京都府府営住宅条例(昭和42年京都府条例第10号)第1条に規定する府営住宅等への入居における特別の配慮、一時的な利用のための住居の提供その他の必要な施策を講じるものとする。
(雇用の安定)
第15条 府は、犯罪被害者等の雇用の安定を図るとともに、犯罪被害者等が置かれている状況、二次被害の防止のための配慮及び犯罪被害者等支援の必要性について事業者の理解を深めることができるようにするため、広報及び啓発その他の必要な施策を講じるものとする。
(経済的負担の軽減)
第16条 府は、犯罪被害者等の経済的負担の軽減を図るため、経済的な助成に関する情報の提供及び助言その他の必要な施策を講じるものとする。
(保護、刑事手続等の過程における配慮及び支援)
第17条 府は、犯罪被害者等の保護又はその被害に係る刑事手続等の過程において、名誉又は生活の平穏その他犯罪被害者等の人権に十分な配慮がなされ、犯罪被害者等の負担が軽減されるようにするため、犯罪被害者等の心身の状況、その置かれている環境等に関する理解を深めるための研修の実施、犯罪被害者等支援に精通している弁護士への相談の機会の提供その他の必要な施策を講じるものとする。
(損害賠償請求に関する情報の提供等)
第18条 府は、犯罪被害者等の損害賠償の請求を適切かつ円滑に行うことができるよう、損害賠償の請求に関する情報の提供及び助言その他の必要な施策を講じるものとする。
2 府は、前項の態勢の下において、当該事案に応じた適切な緊急支援を実施するほか、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことの助けとなるよう、市町村等との連携及び協力の下に、義援金の募集及び配分その他の必要な施策を講じるものとする。
(府内に住所を有しない者等への支援)
第20条 府は、府内で発生した犯罪等により府内に住所又は居所を有しない者が被害を受けた場合においても、当該犯罪被害者等が直面している各般の問題について相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、犯罪被害者等支援に精通している者を紹介する等必要な施策を講じるよう努めるものとする。
2 府は、前項の施策を講じるに当たっては、当該犯罪被害者等が住所又は居所を有する都道府県及び当該都道府県に所在する民間支援団体との連携及び協力に努めるものとする。
(インターネットを通じて二次被害を受けた者への支援)
第21条 府は、犯罪被害者等が受ける二次被害に係る事案のうち、インターネット上の誹謗中傷の事案については、その特性を踏まえ、国、民間支援団体その他の関係者と連携し、及び協力して、当該犯罪被害者等が直面している問題について相談に応じ、専門的な知識を有する者の紹介、弁護士への相談の機会の提供その他の必要な施策を講じるものとする。
(民間支援団体等に対する支援)
第22条 府は、民間支援団体の活動の促進を図るため、犯罪被害者等支援に関する情報の提供及び助言その他の必要な施策を講じるものとする。
2 府は、犯罪被害者等支援に従事する者(以下「支援従事者」という。)が支援を行うことにより犯罪被害者等と同様の心理的外傷等を受けることを防止するため、支援従事者に対する研修の実施その他の必要な施策を講じるものとする。
(府民等の理解の増進)
第23条 府は、犯罪被害者等が置かれている状況、二次被害の防止のための配慮及び犯罪被害者等支援の必要性について府民等の理解を深めるとともに、犯罪被害者等がその被害に係る相談その他の支援の求めをしやすい環境を醸成し、犯罪被害者等支援が社会全体で推進されるよう、市町村、学校等、民間支援団体その他の関係者と連携し、及び協働して、広報及び啓発、教育の充実その他の必要な施策を講じるものとする。
2 府は、前項の施策を講じるに当たっては、犯罪被害者等が直面している各般の問題、その置かれている状況等を府民等が聴くことができる機会の提供に努めるものとする。
第3章 犯罪被害者等支援に関する推進体制
(支援調整会議)
第24条 知事は、市町村、警察及び民間支援団体と一体となった犯罪被害者等支援を推進するため、関係市町村その他の関係行政機関及び関係民間支援団体(以下「関係機関等」という。)により構成される犯罪被害者等支援のための調整会議(以下「支援調整会議」という。)を置くものとする。
2 支援調整会議は、犯罪被害者等が必要な支援等を受けることができるようにするために必要な情報の交換を行うとともに、犯罪被害者等支援(第19条第1項に規定する大規模な事案が発生した場合における緊急支援を含む。)の内容に関する協議を行うものとする。
3 支援調整会議は、犯罪被害者等から府、市町村、警察又は民間支援団体のいずれに支援の求めがあった場合においても、関係機関等が相互に連携を図りながら必要な協議が行われるよう努めるものとする。
(人材の育成及び確保)
第25条 府は、犯罪被害者等支援の充実を図るため、市町村、大学、民間支援団体その他の関係者と連携し、及び協働して、犯罪被害者等支援を担う人材の育成及び確保を図るための研修の実施その他の必要な施策を講じるものとする。
第4章 雑則
(財政上の措置)
第26条 府は、犯罪被害者等支援に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講じるものとする。
附則
この条例は、令和5年4月1日から施行する。