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宿根草とは、開花、結実後も一年草のように枯死せずに、植物体またはその地下部が生き続け、翌年以降も開花する植物のことです。しかし、一口に「宿根草」といっても原産地は様々です。生育適地では、宿根、越冬できた植物も、日本の京都北山に持ってきて、果たして冬を越せるのかどうか?、は保証されていません。そこで、植物ごとの一般的な耐寒温度データや原産地、そしてこれまでの栽培経験等をもとに、防寒(寒さ除け)を行っています。切り株の上に落ち葉(人間にとっての毛布のようなもの)を敷き、コモがけなどの布団をかぶせてやります。たとえば中南米原産種の多いサルビアは防寒してやらないと正月を迎えられません。余談ですが下(あるいは右)の写真は南アフリカ原産のオルトシフォン・ラビアツス(シソ科)で 本来は防寒の必要があります。が、落ち葉(毛布)だけで布団はかけてません。理由は、この植物、真冬に条件が揃えば霜柱が立つ特徴がありそれをご覧いただくためです。
紅葉のシーズンもほぼ終わり、植物園では落葉まっさかりです。当園では園路に積もった落ち葉は回収し腐葉土をつくっています。自然の生態系では落ち葉が微生物によって分解され、養分やミネラルが植物に供給される循環系ができています。また、豊かな森林が「緑のダム」 と呼ばれるのは、落ち葉の積もった層がスポンジのように水分を多くため込んでいるからです。植物園では落ち葉を腐葉土という形に変え 、花壇などの土や土壌改良に使用することで園内でのリサイクルを行っています。腐葉土づくりは、落葉広葉樹の落ち葉を写真のような大きな升にため、雨水と微生物の力によって完熟させます。発酵がすすむと落ち葉からほんのりと熱を出しますが、切り返しという混ぜ合わせる作業を何回か行うことによって良い腐葉土ができます。栽培する植物の種類によっては鶏糞などの有機物を混ぜたり、落ち葉の種類を指定したりします。植物のリサイクルはまだまだ課題が多いですが環境にやさしい植物園づくりを進めています。
植物生態園にあるブナ(Fagus crenata ブナ科)が今年も結実しました。ブナは日本の冷温帯を代表する樹種で京都府内では海抜400メートル以上の山地に生育しています。海抜74メートルの当植物園では結実は困難とされていましたが、一昨年から結実を確認、今年は大量の果実ができました。今年結実したのは15本のブナのうち植物生態園南側にある1本(樹齢約40年生)です。都会の中でブナが結実すること自体めずらしい現象です。とげのある殻斗(かくと)の中に3角形の果実が2個包まれていますが、秋になると殻斗は4裂し落下します。
平成18年7月1日のよもやま話で紹介しましたソライロアサガオ ’ヘブンリーブルー’ (Ipomoea tricolor ’Heavenly Blue’ ヒルガオ科)
のアーチ、通称「ヘブンリーブリッジ」が見頃をむかえています。全長約15メートル、高さ約3メートルのこの橋、つる性植物のため水平部分の開花が遅れましたが、10月にはいってみごと開通しました。霜が降りるまでは洋風花壇にて咲き続けます。
今年の紅葉の見頃は少し遅めという新聞報道がありましたが、当植物園では例年11月下旬から12月上旬ごろにピークを迎えます。植物の数が多いと紅葉(黄葉)の時期もまちまちで、早くも色づいてきたものもあります。左の写真は水車小屋北側にあるアメリカキササゲ(Catalpa bignonioides ノウゼンカズラ科)で、葉が大きい分、黄葉にも迫力があります。右の写真は昨年の11月4日に撮影したものですが、バックヤード(栽培管理地)にある樹高が20メートル以上あるエノキにからまるアメリカヅタ(Parthenocissus quinquefolia ブドウ科)の紅葉です。園の北西部に位置する宿根草・有用植物園からよく見え、お客様から「何の紅葉か」という問い合わせが多数ありました。(紅葉のピークがたいへん短いため予告とさせてもらいます。)これから当植物園ではいろいろな植物の紅葉が楽しめます。
10月にはいり朝夕の冷え込みとともに、園にはキンモクセイの香りがあたり一円に漂う季節になりました。植物園会館前にあるキンモクセイも満開を迎えました。植物園OBの話では大正13年の開園後まもない頃に植栽されたという古木。樹高約10メートル、直径約20センチメートルの株立ちの個体が5本あります。ホームページではこの香りを送れないのが残念です。
キンモクセイ Osmanthus fragrans var. aurantiacus モクセイ科
京都では8月16日の五山の送り火が終わると夏も終わりかなと感じますが、まだまだ残暑がつづきます。7月30日に梅雨明け宣言がありましたが、そのあとはほとんど降雨がありません。長雨のあとの極端な渇水は植物へのダメージが大きくヘトヘトの状態です。花壇や乾燥が激しい箇所では連日のように水まきが行われます。左の写真は今夏10日目の出動になる散水車による水まきです。また、夏の高温乾燥がつづくと植物は葉や枝を落とすことがよくあります。右の写真はナラガシワの枝が落ちたところです。ノコギリで切断したような切り口でドングリがついた枝をこの時期園内で見かけることがありますが、これはチョッキリという虫の仕業(ドングリの中に産卵している)です。ナラ類の落葉しにくい樹種ではこのような形で枝を落とす戦略をとっているのかもしれません。暑い夏を乗り切るためには植物も人間もいろいろな努力が必要となります。
セミが鳴き出すと夏到来 海だ、山だ、キャンプだと多忙な日々を過ごし、セミの声がトーンダウンすると宿題の追い込みにかかっていた昔を思い出します。
環境省が全国的に展開している調査の一つにセミの分布の調査があります。かつて京都府内ではクマゼミの数は少なかったものですが、このごろはセミの種類が逆転してクマゼミが多くなってきました。植物園では、ニイニイゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、チッチゼミなどと、セミの主役の交代と共に季節の移り変わりを感じられます。途中ミンミンゼミやヒグラシのような、今となっては町中ではレアな種類もいます。このセミたちの好みの木を調べてみても面白いかもしれません。鳴き声を頼りにちょっとした宝探し気分で挑戦したらいかがでしょうか。幼虫の抜け殻を見つけてどんな木に幼虫が多くつくか、セミの鳴く時間帯などを調べてみると、種類ごとにきちんと分かれてくるかもしれません。夏の1日優雅に蝉時雨三昧も悪くないかも。写真は北山ワイルドガーデン近くにあるケヤキにあったセミの抜け殻です。われ先に、より高くと競い合うのは人の世も虫の世界も同じでしょうか。
停滞する梅雨前線がもたらす長雨により、全国各地に甚大な被害が出ています。当園におきましては7月18日に植物生態園内のヤマナラシの大木につづいき19日には花しょうぶ園東側のヤマザクラが倒れました。特にヤマザクラは開園当初からあったものと思われる樹齢80年以上ある古木で、非常に残念でなりません。降雨による地盤の緩み、枝葉にかかる雨の重みや樹体腐朽箇所の劣化などが重なり倒木したものと思われます。植物の育成には光、水分、肥料などは必要不可欠なことですが、人工による管理地においては老齢な樹木や土壌の管理についてはより繊細な心配りが必要です。今回、ある程度の予見により倒木を防ぐなんらかの措置ができたのではないかと思うと、貴重な財産を預からせてもらっているものとして反省しなければなりません。
倒木したヤマザクラ(樹齢80年以上)
夏の代表的な植物の一つに朝顔がありますが、当園に植栽していますソライロアサガオがいち早く開花しました。ソライロアサガオは中南米原産でセイヨウアサガオの名で一般に流通しています。花の色が快晴の空のように美しく、また、11月上旬頃まで長く咲き続けるため人気があります。ソライロアサガオは短日植物であるため、5月下旬に播種すると9月になるまでは開花しません。当園では4月に温室内の播種器(摂氏25度以上)で播種することにより、短日効果を持たせました。このことにより、ほとんどの葉腋に花芽がつき通常より早く開花します。今年は洋風花壇内にソライロアサガオの大きなアーチを作りました。題して「ヘブンリーブリッジ」。乞うご期待。
ソライロアサガオ ’ヘブンリーブルー’
Ipomoea tricolor ’Heavenly Blue’
ヒルガオ科
見頃の花や観察のポイントなどをわかりやすくお届けしようと、まさにきまぐれの間隔で作成しています「きまぐれ園だより」が100号を達成しました。「きまぐれ園だより」はA4の用紙におすすめの植物をワンポイントで解説しており、来園者からは植物園がより身近になったと好評です。イラストなどはすべて手書きによるもので、作成者は2004年12月16日の創刊号からすべて松谷茂園長(創刊当時技術課長)というのは、あまり知られていないと思います。「きまぐれ園だより」への思いを園長に語っていただきました。
「このペーパー一枚一枚には、技術課職員の「もっともっと、花を、植物を見て欲しい!」との強い思いが濃縮しています。
花は勝手に咲いているのではありません。職員が心を込めて、咲かせているのです。
ポットに種子を播いて、間引きして、鉢替えして、花壇の土を耕して、肥料を施して、風当たり、太陽の日射、乾湿の条件、植物の特性・適正など、御来園いただいた方に最高の条件で見ていただけるよう、よく考えて植栽しています。
保有している12,000種類という途方もなく数多い植物は、世界の各地から導入したものです。
栽培のノウハウの全くないものも多くあります。
つい一月前にはカナリア諸島原産の「エキウム・ウィルドプレッティー」が新聞紙のトップを飾りました。見事に咲きました。いや、咲かせました。播種から三年目で開花します。約20年前に種子を国内初導入し、試行錯誤の上国内初開花に成功した植物で、その開花させる技術は連綿と今に引き継がれています。
北山門のお花畑には「AAS」や「FS」のラベルが目に付きます。これは全米、全欧州での草花品種審査会(大変権威ある審査会)で金賞を取った品種ですが、なんと、東アジアで当園のみがディスプレーガーデンとして展示することを認められました。花を咲かせる高い技術水準を有していること、年間60万人を超える集客力がコンスタントにあることなどから信頼が得られた結果、と思っています。
樹木に目を向けると、例えば樹齢約100年の「ヒマラヤスギ」。この個体から、全国に種子を配ったそうです。こうなると、この木は天然記念物ものですね。
「センノウ」は当たり前のように地植えをしていますが、幻の園芸植物と言われています。7月に入れば宿根草・有用植物園で花を咲かせることでしょう。
「ムユウジュ」、「インドボダイジュ」、「サラノキ」これら仏教三霊樹は観覧温室に育っています(育てています)。
私に言わせるとお宝一杯の植物園です。
こんなにたくさんの植物を預かっているのですから、本当はこれら一つ一つの植物財産を府民の皆様に還元しなくてはなりません。
「もっともっと見て欲しい!」の思いと「ここにこんな植物、是非是非見てください!」の思いがこのペーパーとなりました。
「今何が咲いていますか?」電話を受け取る事務方の職員も、参考にしてくれています。
「安心・安全・憩いの場」としての植物園、職員一丸となって、がんばっています。
今後とも、応援・御支援のほど、どうぞよろしくお願いします。」
トウオガタマ(カラタネオガタマ) Michelia figo モクレン科
植物園の中には「なからぎの森」という自然の森があります。5月のこの時期に森の近くを歩いていると、どこからかバナナのような香りが漂ってきます。実はこの香り、中国原産の「トウオガタマ」の花から出ているものです。よく見るとモクレン科の花の特徴である多数の雄しべと雌しべをつけています。なからぎの森は、「半木(なからぎ)神社」という上賀茂神社の末社の鎮守の森であります。「オガタマ」とは「招霊」と書くように、サカキ(榊)とともに神社によく植えられている木で、この場所に植栽されているのも納得がいきます。日本の「オガタマノキ」も植栽されていますが、トウオガタマの方が香りは強いです。
5月の中旬頃になると「山が黄金色に見えるのは何ですか?」という府民からの電話がよくあります。答えはシイ(スダジイまたはツブラジイ)の木の新緑と開花の時期だからです。花は樹冠を覆うように咲くとともに、クリの花と同じ生臭い香りが周辺を漂い、花粉を媒介する虫を集めます。写真は植物園正門近くのスダジイとその雄花です。5月いっぱいは花を観察できます。
ゴールデンウイークに来園され、クスノキ並木の落ち葉の多さに驚かれた方もあると思いますが、クスノキやカシなどの常緑樹木の落葉は、いまがピークです。常緑樹は落葉樹のように裸になることなく、ゆっくりと葉の世代交代を行います。左の写真は植物園会館前の「ユズリハ」の世代交代です(赤く見えるのは雄花、奥の方の枝はまだ旧葉が付いている。)。ユズリハは新葉がそこそこ成長したのち旧葉が落ちることから、「親から子へ無事に世代を譲る。」ということで、縁起の良い木として正月の飾りによく使われます。右の写真はクスノキの紅葉で、落葉が終わったあとのクスノキ並木の新緑は見事です。
最近、都会ではめっきり見なくなった鯉のぼりですが、大芝生地で泳いでいます。こども達は大喜びです。
植物園には、日本中のみならず、世界中の多種類の植物を収集して、植栽、展示するという基本的役割があります。植物収集の方法としては、職員が植物採集を行ったり、市販の種苗を購入することがありますが、これらの方法には労力的限界があり、また費用面でも制限されます。
このような事情を解決すべく、多種類の植物収集を支える合理的な方法として、世界中の植物園が互いに保有種子をやりとりする「種子交換」という任意のシステムがあります。植物園間の信頼関係のもとに成立しています。毎年、各植物園は提供可能種子リストを全世界の植物園あてに発送して、注文を受けます。そして、注文を受けた種子を確実に希望園に発送します。植物園どうしの「ギブアンドテイク」、「信頼の絆」です。(写真上:発送する種子袋、写真下:送られてきた種子リスト)
自然界では非常にめずらしい翡翠(ひすい=エメラルド)色の花を多数つけます。栽培条件下ではほとんど結実しないため、人工交配が行われます。人工交配では、翼弁と竜骨弁の付け根を押さえ、竜骨弁の先端部から雄しべと雌しべを露出させ、雄しべの花粉を指で雌しべの先端につけます。雌しべの先端部には受粉を阻害する層があり、これを破壊するために、花粉のついた指を雌しべの先端に強く押し付けるようにな動作を繰り返すことが必要です。自然界ではコウモリや鳥のような動物がジェイドバインの蜜を求めて花粉を媒介することが知られています。
ジェイドバインの花の構造
ジェイドバインの花から雄しべを露出させたところ
ヤツガシラ(大芝生地にて 写真提供:日本野鳥の会 北野春治氏)
植物園にカメラの放列。有名人が来園かと思いきや、見たこともない鳥1羽が旅の途中に飛来したらしい。撮影されている方に尋ねると「ヤツガシラ」という旅鳥で、京都市内では約10年ぶりに観察されたとのこと。大勢のカメラマンを尻目に黙々と餌を探している姿はまるで、つるはしで地面を突いているようだ。こんな都会にも珍鳥が現れること自体、植物園が自然が豊富である証拠なのだろうかと思いつつ、やはり豊かな環境を守っていく必要性を感じた。カメラマンの方々、くれぐれも足元の植物を傷めないでくださいね。
この季節、世間の話題はサクラの開花で持ちきりですが、今回はモクレンの話を一つ。モクレンの仲間が「コンパスプラント」と呼ばれ、北の方向を向いて咲くのは有名なことですが、じっくりと観察することがなかったので、今回改めて確認してみました。開花直前の方がわかりやすいと思い、見てみるとやはり北を向いている。理由は、蕾の南側と反対側では日当たりに差ができ、南側の成長が良くなるため、バナナのように蕾が曲がり、結果として蕾の先端が北を向くようです。隣接のシモクレンも同様に皆、北を向いていました。モクレンの開花はソメイヨシノとほぼ同じ頃。「はなしょうぶ園」の東側に植栽していますので、一度観察してください。
今日、アンズの側を巡回していると「ウワッ、この桜きれいやなァー。」「ちょっとまってや、これサクラと違うわー。」「ほななんやろ、梅やろか?梅ともちゃうなー。」との会話を耳にした。今日だけではなく、今まで何回も聞いてきた。その度に「これはアンズです。この部分をよく見てください。梅や桜との決定的な違いがここに見えています。どのようになっているかを確認してください。」その場ではっきりと見ていただき、桜や梅との違いを感じ取っていただくと、皆一様に驚かれ、納得される。さて、アンズ。信州には「アンズの里」がある。ここ京都ではどうだろう、調査をしていないのではっきりとはよくわからないが、どこにでも見られるものではないことは確かだろう。梅の開花とソメイヨシノ(染井吉野)の開花の間に咲く、貴重な花木。実は花にものすごい特徴がある。花といっても花弁を支えているガク片に要注目。つぼみ状態ではガク片は完全に花弁のかたまりに密着しているが、開花が進むとそのガク片は見事に反り返る。植物の専門用語で「反り返る」と表現するが、この表現では植物に慣れ親しんでいただくにはちょっとした壁を感じてしまう。「ガク片がイナバウワーになっています。」と説明すると、すぐに理解していただき、その部分にグッと焦点を当てた注目をしていただける。さすが、オリンピック効果! 当園の北西部に18本。今年は4月上旬までが見頃と予想。是非御来園のうえ、確かめてください。
(アンズ:宿根草・有用植物園南側)
サイカチ Gleditsia japonica マメ科
山城原野遺存の天然木であるこのサイカチは、樹齢100年以上と推定され、当植物園でも大変貴重な樹木でした。平成17年の梅雨の後半、枝葉に溜まった雨の重みと、長年にわたってむしまばれていった幹中心部の腐りなどが要因となって地上部の樹体を支えることが出来なくなり、平成17(2005)年7月13日未明、倒れてしまいました。サイカチのこの個体は絶滅してしまったのでしょうか?そうではありません。二世が株元に育ち、りっぱに、生き続けています。植物の持つ、たくましい生き残り戦略、時間をかけてじっくり観察してください。倒れた当時の株元の姿、あえて残しました。
場所:カキツバタ園(あじさい園)北
植物園でマラソン!?実は4月9日(日曜日)に投開票されます京都府知事選挙の投票を呼びかけるコマーシャル撮影にアテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが、ケヤキ並木を快走されものです。野口さんが折り返し地点を行き過ぎ、投票はがきを持って投票所に行くという設定で、ゼッケン番号は投票日にちなんで「409」。植物園正門の並木は、当初、アメリカキササゲの並木でしたが樹形が悪いので、その後、シリブカガシを経て、1935年(昭和10年)現在のケヤキとなりました。250メートルの間に58本のケヤキが並んでおり、クスノキ並木とならび当園のシンボルロードです。並木はなからぎの道(鴨川の土手)とともに、府民の散策道として親しまれています。
節分寒波で雪の舞う寒い朝、北山門広場西側に植栽されたスノードロップが、雪を被りながらも健気に花を咲かせていました。
スノードロップとは、ガランツス属の植物を総称する英名で、15種ほどが知られています。ギリシャやトルコ、地中海北部が原産地です。秋から早春にかけて白い小花を咲かせる球根植物です。植栽している種は、「オオマツユキソウ」(学名:Galanthus elwesii)で、ガランツス属の中では比較的大きな花を咲かせます。積もった雪の中に咲く姿は、その名のとおり「スノードロップ(英語で、「雪の雫(しずく)」の意)」そのものでした。
落葉樹は、葉を落とすことによりこの寒い冬を乗り切っています。冬芽の中には春の芽吹きのときに顔を出す葉や花の組織が入っており、寒さや乾燥からガードされています。その個性あふれる冬芽の形も冬の樹木観察の楽しみの一つです。その冬芽の中でも当園の歴史を感じさせられるのがイチョウの短枝(葉や花が出る枝)の冬芽です。短枝には冬芽の着ていた鎧が春の芽吹きとともに落ちた痕(芽鱗痕:がりんこん)として輪状に積み重なります。一年ごとに一本の輪が積み重なるので、その短枝の年数がわかります。観覧温室前のイチョウの枝で数えるとわずか長さが5センチメートルの枝に約40本の芽鱗痕がありました。この枝が生きてきた証を見ると、うかつには剪定などできくなります。
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文化生活部文化生活総務課 植物園
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