選定理由 |
京都の貴重な鉱産資源として知られており、都市開発に伴う破壊から保存される必要がある。またコノドントを多量に含み観察、教育用に貴重である。 |
分布 |
砥石型珪質粘土岩は丹波〜美濃〜足尾帯のジュラ紀付加体とその相当層分布地域、秩父累帯南帯および北海道渡島帯の各地域から報告されている。休業中の砥石山を含めると、瑞穂町、園部町、八木町、京北町に各1ヵ所、亀岡市に6ヵ所、京都市に5ヵ所ある。 |
特徴(特異性) |
砥石は、I型地層群の最下位に位置する砥石型珪質頁岩およびその上位の層状チャートに漸移する部分で、層状チャートの厚い“はさみ”の淡黄〜青灰色を呈する風化層が採掘の対象とされてきた(井本ほか、1989)。全国的に知られた鳴滝砥石の産地としては、おもに高雄から北嵯峨にかけて分布している。コノドントはカンブリア紀から三畳紀の海成層から産出し、示準化石として極めて有効なものである。ジュラ紀以降からは産出しない。近年、スコットランドのエジンバラ付近の下部石炭系(Briggs et al.、1983)や南アフリカのオルドビス系(Aldridge et al., 1993)から軟体部の完全遺骸が発見され、原索動物や脊索動物の器官であることが明らかになった。砥石型頁岩から産出するものは櫛形コノドント(複合型コノドント)が多い。砥石層の上位に分布するチャートからもコノドントが報告されている(吉田・脇田、1975)。“砥石層”は遠洋性海洋生物の大量絶滅のあったペルム〜三畳紀境界(P/T境界:古生代と中生代の境界)付近に伴うことが指摘され、P/T境界を含む層状チャート、“砥石”、黒色有機質泥岩の層序や海洋環境の変遷が検討された。P/T境界は地球史上におけるもっとも重要な境界の1つである(石賀・山北、1993)。本露頭で見いだされる化石は、1mm以下の櫛形をした形態のものが多い。個体分離には化学処理が必要であるが、砥石表面のものは破損し易いため個体分離が困難で、表面のものを実体顕微鏡などで詳細に観察する。砥石の層理の分離面においてルーペで簡単に見いだすことができるため、地質実習や科学教育として重要である。 |
現状 |
高雄奥殿山の砥石の採掘場および、採掘坑跡が残され、品位の悪い砥石が山積放置されている。表面に1mm以下のたくさんのコノドントを見いだすことができる。産地の動向鳴滝砥と呼ばれて全国に知られ、古くは鳴滝、梅ヶ畑、愛宕山月輪寺、越畑において採掘されてきた。いわゆるアジノール粘板岩である。質の悪い鳴滝砥石が至る所に落ちており、ルーペで観察すると表面には化石が認められる。このような開放的な教育環境は市民にとって重要である。 |
必要な保全対策 |
危険な場所への立ち入りを禁止する立て札が必要である。 |