選定理由 |
丹波帯I型地層群の最下部の岩相であり、かつアプローチが容易な観察の適地である。チャートの露頭は一部破壊されたが、より以上の破壊を避ける必要がある。 |
分布 |
西南日本では内帯の丹波―美濃帯、外帯では秩父帯、また東日本では足尾帯、北部北上帯のI型地層群相当層分布域。丹波帯には古生代石炭紀からジュラ紀新世に至る丹波層群が分布する。このうちI型地層群は三畳紀からジュラ紀中世までの層状チャートとそれに整合的に重なる黒色頁岩、タービダイト砂岩で構成される。砥石型珪質頁岩および炭素質珪質頁岩は三畳紀チャートの最下部に位置する。北桑田郡美山町五波谷林道、河内谷林道、同京北町八丁林道、芦見谷林道などで典型的なものが見られる。 |
特徴(特異性) |
三畳紀の層状チャートの基底部には、砥石型珪質頁岩があるが、その中に黒色珪質頁岩が挟在する。炭素含有量が極めて高く、三畳紀初頭における海洋の嫌気的環境または海洋生物の大量死等のイベントを示すものである。炭素質珪質頁岩にはシリカの含有量の極めて高い塊状チャート状のものと比較的やわらかい黒色頁岩状のものとがある。本層はImoto & Kozur(1997)によって含まれるコノドント化石が記載されている。それによればNeospathodus sosioensis、Neospathodus cf. curtatus、Cypridodella unialata、Oncodella?benderi、Neohindeodella triassica riegeliなどが含まれ、スパチアンの最後期Neospathodus sosioennsis帯に相当するとされている。丹波帯の砥石型珪質頁岩の年代については、一般に三畳紀古世のスパチアンないし中世のアニシアンと考えられているが、含有される化石によって地質年代の確定されたものは極めて少ない。本層は多くのコノドント化石を含有していて、肉眼でも容易に識別でき、またその年代が決定されているという点でも保存されることが重要である。 |
現状 |
保存状況 JR保津峡駅から保津川に沿う道には東方200mにトンネルがある。トンネルの南側にはさらに保津川沿いに旧道が伸びており、この旧道に沿って露頭が継続する(Isozaki and Matsuda,1984)。現在は一般に道としては使われていないため、放置されたままとなっている。 |
保存に対する脅威 |
現状では放置された旧道であり、斜面崩壊等が発生しない限り、保存される。 |
必要な保全対策 |
今後道路拡幅などの工事によって、この旧道までも削り取ったり、埋没させてしまわないように保全すべきである。 |