選定理由 |
丹波帯の三畳紀放散虫化石産地として記載された重要な露頭であり、保存が必要。 |
分布 |
層状チャートは、丹波-美濃-足尾帯の付加体中にブロック状・レンズ状に産出するが、確認された三畳紀古世の露頭はあまり多くない。北桑田郡京北町八千代橋、京都市右京区保津峡の壁岩、宇治市池ノ尾などで三畳紀古世は知られているが、他の地点でParentactinia sp.が産出するのは三和町兎原のみである。 |
特徴(特異性) |
Sugiyama(1992)が美濃帯で記載した、Pn群集帯を特徴づける随伴種の放散虫化石がほぼすべて産出している。Pn群集化石がチャートの下限から産出することで他の露頭とは異なっている。つまり、三畳紀チャートがいつから堆積し始めたかを示す上で特異性がある。丹波帯のII型地層群で、初めて報告された中生代三畳紀古世(Spathian)のParentactinia nakatsugawaensis(Pn群集)で、Pn群集の下限を決める上で重要な露頭である。コノドント化石と共存し、北摂山地においては極めて化石の保存がよい。 |
現状 |
化石の産出する層状チャートと珪質頁岩が道路際に分布し、建築物の基礎として利用されている。アプローチし易く、容易に観察できる反面破壊されやすい。楠利夫・井本伸廣(1996)で報告された当時の露頭状態を良く保存している。化石が産出するカ所であることを地元の方々にはほとんど知られていない。 |
保存に対する脅威 |
茨木−亀岡線の道路交差点付近で、道路の拡幅や改修工事、住宅の改築や石垣の延長などで被覆されたり破壊されたりする可能性がある。 |
必要な保全対策 |
教育研究上重要な露頭である。とくに危険はないと思われるので、コンクリートの吹きつけやカバーはせずそのまま維持されることが望まれる。また、現状のまま放置するだけでなく、観察用のパネルなどで貴重な露頭であることを示すべきである。 |