選定理由 |
海洋性堆積岩に見られる不整合であり、地球史におけるイベントを記録したものとして極めて重要である。また不整合直上の三畳紀の岩相、含有コノドント化石も貴重である。 |
分布 |
古生界石灰岩体に見られる不整合は、栃木県葛生石灰岩体、岐阜県赤坂石灰岩体などに認められている。丹波帯には他に知られていない。 |
特徴(特異性) |
舞鶴帯に見られるペルム−三畳系不整合は陸源砕屑物からなる浅海相中のものであるのに対し、丹波帯の不整合は海洋環境におけるものである。このことは、不整合の示す変動が地球規模の事件を意味することになり、地球史の解析に重要な意義を持っている。不整合の露頭は主に2つある。1つは瑞穂町によって開発された質志鍾乳洞の洞口より約10m上であり(武蔵野他、1979)、2カ所目は旧国道の榎峠より南西に200mの採石場跡地である。前者は樹林のなかにある。後者は採石によって岩盤が露出下した部分に認められるものである。下位のペルム系石灰岩は不整合付近で赤色斑状を呈し、陸化にともなう風化を示す。採石され京錦という商品名で小装飾品として加工されたことがある。上位の赤褐色の石灰質砂岩は、三畳紀コノドントNeospathodus homeri、Gradigondolella tethydis、Epigondolella hungarica、E. abneptisなどを含む(武蔵野他、1980)。 |
現状 |
質志鍾乳洞は京都府唯一の鍾乳洞であり保存が不可欠であるが、その近傍にある不整合の露頭も地球史の重要な事件の記録として保全しなければならない。同時に、三畳紀コノドントを含有する石灰質砂岩は、日本の数カ所に残されているのみであり、保存の必要性が高い。 |
保存に対する脅威 |
質志鍾乳洞の上にある露頭は、現状のままの観光利用がされていれば保全されていくものと思われるが、旧採石場については放置されたままであり、今後他の用途に、使われた場合露頭が破壊される可能性が高い。 |
必要な保全対策 |
鍾乳洞近傍の洞口の拡幅や、つけ直しなどの改変は避けるべきである。なお、不整合の露頭は周辺を整備し、解説板等を設置することにより、貴重な野外見学地点とすることができる。旧採石場は小稜線上の一部については天然記念物指定等の保全措置が必要である。 |