選定理由 |
年代と含有するコノドント化石が記載された数少ないチャート層の露頭であり、本来保全されるべきものであった。現状以上の破壊を防ぐ必要がある。 |
分布 |
西南日本では内帯の丹波美濃帯、外帯では秩父帯、また東日本では足尾帯、北部北上帯のI型地層群相当層分布域。丹波帯には古生代石炭紀からジュラ紀新世に至る丹波層群が分布する。このうちI型地層群は三畳紀からジュラ紀中世までの層状チャートと整合的に重なる黒色頁岩、タービダイト砂岩で構成される。三畳紀チャートは最下部の砥石型珪質頁岩および炭素質珪質頁岩に整合的に重なる。北桑田郡美山町五波谷林道、河内谷林道、同京北町八丁林道、芦見谷林道などで典型的なものが見られる。 |
特徴(特異性) |
丹波帯I型地層群の三畳紀―ジュラ紀チャートは一般に灰色を呈し、板状層理が明瞭で、厚さの変化も少ない点に特徴がある。本地域のチャートは、景勝地保津峡の壁岩としてよく知られているだけでなく、層序学、古生物学的研究がなされている点で極めて貴重である。三畳紀チャートについては、Isozaki and Matsuda(1980、 1982)の研究があり、コノドント生層序の詳細な記載が行われている。それは三畳紀古世(?)のNeogondolella homeriから三畳紀新世最後期レーチアンのMisikella posthernsteiniまでのものである。とくに丹波帯で三畳紀新世最後期レーチアンのコノドントの記載と地層の存在が確認さ
れた最初の地点である。またチャートの層序、層厚変化から、三畳紀における環境変遷についての議論も行われている(Ishiga、 1994)。
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現状 |
京都市右京区鳥居本より亀岡市水尾間の府道で、JR保津峡駅から橋を渡った地点より東へ約50mから200m先のトンネルまでがIsozaki and Matsuda(1980, 1982)により岩相、層序、コノドント化石の記載がなされた露頭であったが、同露頭の内、東半分の最も重要な三畳系チャートの層序が見られた部分が擁壁によって覆われてしまった。詳細な学術研究が行われた露頭であり、そのまま保全されるべきであった。丹波帯I型地層群の典型的な層序としてぜひとも保存されなければならない。 |
保存に対する脅威 |
半分ほどがコンクリートによって覆われてしまっている。残された部分も拡幅工事などによりコンクリートによる覆いがされる可能性が高い。 |
必要な保全対策 |
道路の拡幅がされる場合は、露頭のある崖側を適切な斜面勾配を作り露岩のまま保全すべきである。 |