選定理由 |
京都府南部のマンガン鉱床は白亜紀の花崗岩(領家花崗岩)の貫入により、接触変成作用を受けてマンガン珪酸塩を多く含む鉱床に変化している。本鉱床はその中でも多様な含マンガン鉱物を産することでよく知られている。 |
分布 |
国内では中・古生代の堆積性マンガン鉱床は各地に多く分布している。京都府内でも隣接する他府県を含め、500以上の鉱床が知られている。この中で変成層状マンガン鉱床は府内南部の丹波帯と領家帯の漸移部に多く見られる。 |
特徴(特異性) |
本鉱床は堆積岩中の層状マンガン鉱床が花崗岩類の貫入により接触変成作用を受けた結果、鉱石の粒度が増大し、二酸化マンガン鉱や炭酸マンガン鉱が減少してバラ輝石、テフロ石(マンガンかんらん石)などのマンガン珪酸塩が増加したものである。いわゆる変成層状マンガン鉱床の典型例といえる。古くからマンガン鉱山として開発されてきたが、1972年頃から採石場になっている。露頭の様子は採石状況により常に変化している。かつては泥岩やチャートのホルンフェルスがルーフ状あるいは巨大な捕獲岩状になって花崗岩(含ざくろ石両雲母花崗岩)と接する様子が広範囲に観察できた。主要なマンガン鉱床は千枚珪岩中の石英脈付近に見られ、バラ輝石、テフロ石、マンガンざくろ石がまとまってみられた。他に園石、アレガニー石、マンガン透輝石、マンガン角閃石、含マンガン金雲母、パイロファン石、木下石などの多種類のマンガン鉱物が認められた。また、花崗岩中にも電気石や燐灰ウラン石など少量ながら珍しい鉱物が産する。最も多量に産するバラ輝石は美しいピンク色の粗粒の結晶質塊である。園石(sonolite)は木津川を隔てた東北方の和束町東和束に位置する園鉱山で発見された新鉱物で、淡紫色のマンガン珪酸塩鉱物である。バラ輝石とは共生しない。木下石(kinoshitalite)は岩手県野田玉川鉱山で発見された新鉱物で、バリウムを含む脆雲母の一種である。テフロ石あるいは園石中に径1mm、時に1cmの淡黄色板状結晶で模式地よりもフッ素の含有量が多く、マンガンフッ素木下石と呼べる。木下石は金雲母に類似しているが、黄色味が強い。金雲母はバラ輝石に伴うが、木下石はテフロ石に伴う(Matsubara et al.、1976)。 |
現状 |
現在は採石場になっており、マンガン鉱物の採集は困難である。ただ、採石状況によって鉱床に当たることがあり、その際には多量のマンガン鉱物が露出する。 |
保存に対する脅威 |
採石場に変わって久しく、マンガン鉱物を含む露頭の喪失は著しい。鉱床は南方に広がっており、付近の土地開発や道路建設などの整地によってさらに鉱床が喪失する脅威にさらされている。 |
必要な保全対策 |
現在の露頭より南方の土地開発に際しては、地下に潜在すると考えられる鉱床が著しく破壊されることのないよう注意する必要がある。 |