選定理由 |
昔から府内では有名な水晶の産地である。結晶形態も単純なものが多いが、都市近郊の産地として注目される。 |
分布 |
国内の水晶の産地は多数ある。府内でも花崗岩中のペグマタイト、鉱脈中、丹波帯の堆積岩を貫く石英脈の晶洞など産状は様々である。 |
特徴(特異性) |
甘南備山には丹波帯中・古生層の頁岩、砂岩、チャートが熱変成作用を受けたホルンフェルスが分布している。地表では見ることができないが、地下に熱変成を与えた中生代白亜紀の花崗岩体が潜在するものと考えられる。水晶は山の上部に広く分布する黒色の珪岩化したチャート中に発達する石英脈(通常幅約1cm)から産する。長さ2〜3cm、径数mmの細長い結晶がほとんどである。無色透明で、石英脈中の褐色粘土の詰まった晶洞に群生している。特に幅の広いイモ状に膨れた2〜3mの石英脈では長さ、8〜10cm、径1cmの長柱状の水晶が産出している。結晶形は単純で理想形といえる。石英脈からは他に少量の輝水鉛鉱や鋭錐石、硫化鉄鉱が認められる。府内南部の領家帯のホルンフェルス中には細い石英脈しかなく、本地域のような長く伸びた水晶は見いだされていない。(益富・内山、1940;高田、1999) |
現状 |
本地域は自然公園として整備されつつあるが、水晶の採取できる露頭は表面的には取り尽くされている。石英脈も深く削り取られている。風化した砂の中から細かい結晶を拾うことができる。1995年に露頭付近の道路が整備され、擁壁もできている。 |
保存に対する脅威 |
都市近郊にある産地として、危険な箇所も少なく、多くのマニアによる機械を使用した露頭破壊の可能性がある。 |
必要な保全対策 |
貴重な産地を保護するために石英脈を深く削り取る採取を禁止したほうがよい。採取はできるだけ付近の風化砂からにするべきである。 |
特記事項 |
甘南備山は一休寺にも近く、山頂には今昔物語にも記述がある甘南備神社が奉られている。 |
関係法令 |
付近は生活環境保全林。 |