選定理由 |
国内では重晶石鉱床は少なく、主なものは北海道、東北地方の黒鉱鉱床に限られる。笠取鉱床は中生代の堆積岩中に鉱脈状に発達する唯一のもので国内でも珍しい産状である。 |
分布 |
重晶石は北海道の茂賀利、小樽松倉、東北地方の花岡などの新生代黒鉱タイプの鉱床から普通に産する。また、近畿においては京都府内の丹波帯の堆積性マンガン鉱床から微細な緑色の重晶石が少量産するのみである。 |
特徴(特異性) |
笠取鉱床付近の丹波帯の堆積岩は頁岩や粘板岩を主とする。鉱床から約4km北方には花崗岩体が貫入しており、堆積岩に接触変成作用を与えている。鉱床の成因には花崗岩の貫入が関わっているとする考えもあるが、もともと堆積起源である可能性も否定できない。鉱床は3ヵ所で発見されており、地層面にほぼ並行して分布する。また、地層の褶曲部に生じた間隙を充填した部分もある。脈幅は1.5〜3mである。鉱石鉱物は重晶石であるが、少量の黄鉄鉱や赤鉄鉱を伴う。脈石鉱物は石英であるが、鉱床と母岩との境界付近には葡萄状のアロフェン(山真珠)などの粘土鉱物も見られる。重晶石はほとんどが白色不透明でもろく、石灰岩に外観が類似し、比重が重い。顕微鏡下では等粒状結晶が観察される。小さな空隙が見られることがあり、半透明〜透明の板状小結晶が発達する。なお、本鉱石中には微量のSrを含むことが確認されている(牧 俊夫,1957)。 |
現状 |
鉱山は閉山して久しく、一部に坑口が認められる。捨石には重晶石が認められる。 |
保存に対する脅威 |
笠取鉱床はその地理的位置が都市近郊であり、土地の再開発や道路建設により、喪失する可能性が大きい。 |
必要な保全対策 |
本鉱床は学問上重要な地質である。現状のまま放置するだけではなく、鉱山跡を保存、整備する必要がある。 |