選定理由 |
府内唯一の海洋底塩基性火山活動に伴う海底火山噴気鉱床である。また、初生の金属鉱物に伴って多種類の二次鉱物が産する。 |
分布 |
国内では同様な鉱床として東北日本のグリーンタフ地域に見られる新生代の黒鉱鉱床がよく知られている。 |
特徴(特異性) |
本鉱山はかつて大和谷鉱山と呼ばれ、明治末期〜大正初期にかけて稼行されていたらしい。鉱床は丹波帯II型地層群新水戸ユニット基部に発達する緑色岩類の内部、または上位に胚胎しているものと考えられる。緑色岩層の地質時代を示す化石の証拠はないが、本層の東方への延長部に相当する緑色岩からSm-Nd年代として334〜339Maの値が報告されている(Sano et al., 1987)。付近には赤白珪石の鉱床がいくつかあり、成因的には関連しているものと考えられる。鉱石は黄銅鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱からなる緻密な集合体で脈石鉱物として重晶石の細脈を伴う。地表付近の「ヤケ」の部分に褐鉄鉱、孔雀石、珪孔雀石、水亜鉛鉱、赤銅鉱、藍銅鉱、ブロシャン銅鉱、緑鉛鉱、異極鉱、水亜鉛土などの銅、鉛、亜鉛の二次鉱物が多産する。また、少量の二酸化マンガン鉱も見られる(松尾、1968)。 |
現状 |
本鉱山は山中の谷にあり、いくつかの坑口とズリが認められる。 |
保存に対する脅威 |
現在、閉山しており、また今後も再開される見込みはない。地中には鉱脈は続くものと考えられるが、マニアによってわずかな地表の露頭が採取し尽くされる可能性がある。 |
必要な保全対策 |
中・古生代の鉱床としては珍しいものであり、観察路などを設けて坑道を整備保存する必要がある。 |