( iii )詳しい地形図をもとにした地形現況と絵図の描写との比較考察
絵図に描かれた風景と現況との比較の次のステップの一つとして、詳しい地形図をもとにした地上に植生のない場合の状態(地形現況)と絵図の描写との比較がある。この比較考察は、絵図の写実性を判断する上でかなり有効である場合が多い。 この考察の前提としては、ふつう対象とする地域の地形の状態が、絵図の描かれた頃と今日とではほとんど変化していないと考えられることがあるが、対象地域に自然災害や土木工事などによる変化のある場合、それが部分的であり、かつその変化の概要を確認することができるようなときにはこの限りではない。 この考察は、たとえば、絵図に描かれている谷の一つを確認するようなことであれば、地形図を見るだけでできるような場合もあるが、ふつう地形現況と絵図の描写との比較を可能にするためには、詳しい地形図をもとにして、絵図の視点から見た地形現況を何らかの方法によってビジュアルな形でとらえられるようにする必要がある。 その一つの確実な方法は、詳しい地形図をもとにして、できる限り精巧な地形現況の模型を作成することである。また、詳しい地形情報をパソコンに入力することにより、コンピューター・グラフィクス(CG)によってそれを行うことも考えられる。 なお、この考察の際、もとにする地形図がたとえ2,500分の1程度のかなり詳しいものであっても、
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それから実際の細かな地形を読み取るには限界があり、絵図には地形図からは読み取ることができないような小さな谷などの地形が描かれている場合もあるため、そのようなときには、現地に足を運んで、実際に地形の状態がどのようになっているかを見る必要がある。また、2,500分の1や3,000分の1のようなかなり詳しい地形図でさえ、作図があまり正確でない場合があるので注意をする必要もある。 また、模型の作成やCGの利用は必ずしも容易ではないが、地形現況と絵図の描写との比較考察を便宜的に行う方法の一つとして、山地部の稜線(輪郭線)の形状について、絵図のそれと絵図と同一視点から見た地形現況のそれとを比較検討する方法がある。地形現況における稜線の形状の予測は、2,500分の1から1万分の1程度の詳しい地形図を適宜用い、地形の範囲や複雑さに応じて適当に、視点から稜線への10点から数十点ほどの仰角(俯角)を求めてゆくことにより行うことができる。 地形現況や現況において、対象とする地域と視点との距離が近く、植生高によって稜線の形状が大きく変化するような場合には、地形現況にある一定の高さのものが加わったときの稜線の形状を予測することによって、ある絵図が描かれた時代の植生の状態を判断できる場合もある。
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