1.京都府の甲殻類およびその他の淡水産無脊椎動物
府内で確認された淡水産大型甲殻類は3目8科11種で、うち外来種はアメリカザリガニ1種である。ここには
動物プランクトン種や小型の底生種は含まれていない。
大型甲殻類には、(1)ミゾレヌマエビやモクズガニのように、卵サイズが近縁種に比べて小さく、幼生期を
プランクトンとして海で過ごし、稚エビ期に河川に遡上する両側回遊種、(2)ミナミヌマエビ、サワガニのよ
うに、卵サイズが比較的大きく、幼生期を卵内で過ごし、稚エビや稚カニでふ化する直達発生種、(3)ヌマエ
ビ、スジエビ、テナガエビのように、幼生期をプランクトンで過ごすが、その時期に必ずしも塩分を必要としな
い種が知られている。
(1)のグループは、海に注ぐ河川にしか生息しないため、府内では大阪湾に注ぐ淀川水系および日本海に流
入する小河川から報告がある。(2)のグループは、主に河川の上流域や支流に生息し、府内では淀川水系、日
本海に流入する小河川での記録がある。(3)のグループは、淀川水系等の河川のみならず、府内のため池や水
路など様々な淡水環境に広く生息している。さらに、琵琶湖固有種であるナリタヨコエビが、今回、初めて琵琶
湖から流出する宇治川で発見された。このように、同所的に生息する種であっても、府内に生息する甲殻類各種
の生活史および起源は様々である。ただ各水域での分布調査は不十分で、今後さらに府内での記録種や分布記録
が増える可能性は高い。
甲殻類以外の淡水産無脊椎動物では、刺胞動物門1科1種、扁形動物門3科3種、環形動物門2科2種、触手
動物門1科2種が、文献調査及び府内の河川、ため池等の現地調査で確認されたが、調査に出るたびに新記録種
が発見されており、研究が進めば今後さらに記録種が増えるのは間違いない。
2.種の選定基準
種の選定に当たっては、
1)京都府内の生息地が限られ、絶滅の危険が増大している、
2)個体数が非常に少ない、
3)かつては普通種であったが、最近は著しく減少している、
4)隔離分布をするなど、全国的にみて特異な分布をする、
5)京都府が模式産地になっている、
6)情報が不足している、
7)生態系に影響を与えるおそれがある、
という7つの事項に配慮した。そして、京都府のカテゴリー定義にしたがって、府内での記録が少なく、
かつ近年の生息が確認されていない種を絶滅寸前種、府内での生息地が限られ、個体数が少ないか減少し
ている種を絶滅危惧種、府内における個体数がもともと少ないか近年著しく減少している種を準絶滅危惧種、
情報が不足しているか生態系に大きな影響を与えるおそれのある種を要注目種とした。
3.選定種の概要
府内で確認された甲殻類11種およびその他の淡水産無脊椎動物8種から、絶滅寸前種1種、準絶滅危惧種3種
を選定した。このうち3種は、生息環境の悪化や農薬等の流入により、全国的に生息数が減少している種である。
そのほかに要注目種として3種を選定した。内訳は、情報が不足している在来種1種、および生態系に影響を及
ぼすおそれのある外来種2種である。
執筆者 西野 麻知子
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