暖温帯常緑広葉樹林

シイは丘陵地、低山地などの優占種であり、西日本の低山地でも照葉樹林帯における優占種の一つである。一般的には、海岸近くはスダジイが、内陸域ではコジイが林を作る。丹後半島など沿岸部では樹皮が若齢から縦に割れるスダジイタイプが、京都盆地では樹皮の平滑なコジイタイプが多い傾向にあるが、両者が混生する場合や、中間型のものもみられる。京都府では主として丹後地域・中丹地域の海岸から山地にかけて、京都市・乙訓地域、山城地域の北部山地以外は分布可能な範囲であり、実際にも今回リスト化された中でシイ群落は最も多い。立地は適湿な斜面上などであるが、やや広く分布する。一般的には、一斉林を作る事が多く、状態のよいシイ群落ではほとんど高木層はシイだけで覆われ、亜高木層や低木層にも、次世代のシイが存在するというような群落は珍しくない。しかし適度な湿度が必要であるために、周囲の開発やシイの個体が枯死するなどして林内が乾燥すると、シイが弱り、亜高木層や低木層に他の常緑樹がはいるようになり、林相が変わってくる。したがって、林内の構成種相からもそのシイ群落の状態を判断することができる。丹後地域・中丹地域では、シイがほぼ高木層を占め、林内にソヨゴ、アセビ、シラカシ、モチノキ、アラカシ、ウラジロガシなどが見られる事が多く、常緑樹が非常に多い群落をつくる。京都市・乙訓地域・山城地域では、やや高木層にシイ以外の樹種が入る事もあり、アラカシ、タマミズキなどが混成し、林内には、アラカシ、サカキ、ヤブツバキ、カナメモチ、ナナメノキなど、やや乾燥地にも侵入するような常緑樹が見られ、その出現樹種数も多い事がある。京都では社寺林の優占種になることが多く、実際にも集落や市街地の近くでこんもりした常緑樹の林がある場合には、ほとんどがシイ群落である。1960年代までは、燃料や肥料として、森林が利用されていたが、ガスや石油の普及によって、森林に人手が入らなくなり、アカマツ林などの二次林内にシイの若木が広く分布するようにった。さらに、アカマツがマツ材線虫病によって枯損したため、シイが成長し、過去50年間ほどで、京都府各地でもシイ林が拡大している。その分布拡大の元になっているのが、社寺林に残るシイ林の場合が多い。

現実にはほぼ全て管理されている群落であり、管理者が知らない間に開発がされるということはない。また多くが社寺林であるため、特別な事情がないかぎりは適切な管理がされる事になっている。したがって、各地域、あるいは京都府としてシイ林が原植生に近い大切な林である事を広く知ってもらう事が大切である。