選定理由 | 本種は琵琶湖と有明海流入河川のみに局所分布する希少種。今回、宇治川の下流域にも生息することが初めて確認された。幼虫は平野部の河川に生息するため、人為的な環境改変の影響を受けやすく保全対策が必要である。 |
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形態 | 本種成虫は、オス交尾器の把持器の先端節が細長いことや陰茎先端の切れ込みが深く表面に刺がないことで同属種から区別できる。幼虫は後頭部や胸部背面に突起のないこと、腹部背面に刺列があること、前胸背面に2対の黒点があることで区別されるが、宇治川個体群の斑紋には変異があり2対の黒点の不明瞭な個体も見られる。 |
分布 | 極東からヨーロッパまでユーラシア大陸に広く分布するが、日本国内では琵琶湖淀川水系と有明海流入河川に限定的に分布する。 |
生態的特性 | 河川中下流域の平野部に限定的に生息するが、その生態的特性については未解明の部分が多い。 |
生息地の現状 | 宇治川個体群は緩流域ないしたまりやワンドの砂礫底に生息し、早春に羽化する。 |
生存に対する脅威 | 府内で唯一の生息地である宇治川では、河床低下によって緩流域が減少している。 |
必要な保全対策 | 宇治川の岸辺に緩流域や止水域などの生息場を再生する。 |
改訂の理由 | これまで府内から記録されていなかったが、今回の調査で初めて確認された生息地はきわめて局所的で保全対策が必要であると判断された。 |
執筆者 竹門康弘