選定理由 | 古くから大阪、京都で知られていた種で、かっては格別稀なものではなかったようである。しかし、ごく近似のビロウドツリアブが森林から草原まで広くかつ現在でも普通にみられるのに対して、この種の減少は著しい。この種は草原ないし林縁的環境に適応しているもので、もともと局所的であったようである。1970年代頃までは近畿地方の都市近郊で点々と得られていた。しかし現在の採集例は極めて少なく、確実な産地は1か所程度。京都では記録が長く途絶えている。里山的環境が環境が減少するとともに、急速に姿を消した種の一つであると思われる。 |
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形態 | 近似種のビロウドツリアブに極めて近似し、注意しないと混同する。 |
分布 | 本州(近畿)。 ◎府内の分布区域 松村は「京都に稀ならず」と記し、竹内は山科を産地としてあげている。現存する唯一の標本は大文字山産。 |
生態的特性 | 生態は不明であるが、おそらくハチに寄生する。成虫は春に出現する。 |
生息地の現状 | 両産地とも開発の進行とともに絶滅した可能性が高い。 |
生存に対する脅威 | 開発、都市化による環境の消失。 |
必要な保全対策 | 当面再発見のための調査と、里山的環境の維持。 |
改訂の理由 | 2002年版レッドデータブック作成時には、参照できる資料がほとんどなかったため、ひかえめな判断とせざるをえなかった。しかしその後の京都における調査および近隣地区の資料が増加したため、現時点において妥当と思われる評価に変更した。 |
文献 松村(1916)、竹内(1955)、紺野(2004a)
執筆者 大石久志