双翅(ハエ)目 ハナアブ科
ムツボシナガハナアブ
京都府カテゴリー | 絶滅寸前種 |
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2002年版 | 絶滅寸前種 2002年版を参照する |
環境省カテゴリー | なし |
選定理由 | 京都府では冠島(舞鶴市)にのみ分布する。生息域が狭く個体数も少なく存続が危ぶまれる。また対馬暖流によって海流移動した南方系の種の典型的な例として学術的にも貴重である。 |
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形態 | 体長20.0mm内外と極めて大型で、日本最大のハナアブの1種である。体は黒色で光沢がある。胸部には橙黄色の斑紋があり、腹部には顕著な3対の黄色紋が見られる。翅は透明でわずかに曇る。京都府では見誤るような種はない。ただし南西諸島には近似種ヤエヤマナガハナアブがあり、これとは本種が顔面に顕著な黒条をもつ点で区別できる。 |
分布 | 本来南方系の種で沖縄県、奄美大島、屋久島等の南西諸島に分布し、離れて対馬と冠島にも生息するが、この付近の本土側ではまったく記録されていない。幼虫が朽木に生育するため、流木によって分布を広げたと考えられている。 ◎府内の分布区域 北部の地域(冠島)。 |
生態的特性 | 幼虫は各種の朽木それも倒木に生息する。対馬ではスギに産卵するのが確認されている。冠島では樹種不明の広葉樹であった。また南西諸島ではこの種のように倒木を好む種と、ヤエヤマナガハナアブのように立ち枯れを好む種があるという。これが分布の拡大の相違と関係するとの推測もある。成虫は朽木に集まり、また花にも来る。 |
生息地の現状 | 京都府では1952年に丹信實氏などによって冠島から発見された。以後記録が途絶えるが、1989年には、継続して生息していることが確認された。林中の比較的新しく相当に太い倒木に産卵のため飛来した個体や、訪花中の個体を確認されたが、個体数は極めて少なかった。調査の範囲では、幼虫の生息可能な範囲はおおよそ南半の比較的湿潤な暖帯林に限られるようで、至って狭い。利用できると思われる倒木も、勿論少ないものである。このような生息環境は、特にムツボシナガハナアブのような大型種にとっては非常に厳しい環境であると思われる。 |
生存に対する脅威 | 周辺を含めた環境の劣化。 |
必要な保全対策 | 以上のような極めて狭い範囲に生息しているため、わずかな環境の悪化も生存の脅威となり得る。今後とも、少なくともこれまで行われてきた島の保全策を維持する必要がある。また長期的にみた場合、森林の自然な更新によって常に朽木が供給されるのが、存続にとっての必須な条件である。この点で、オオミズナギドリの植生に与える影響が大きく、更新はもっぱらひこばえにより、実生はほとんど生育していない。これが本種の存続にどの様に作用するか、注意深く見守る必要がある。これは別としても、これまでオオミズナキドリを中心に考えてきた島の保護策を、他の多くの希少生物の保護を含めた、よりきめの細かいものとしていく必要があるだろう。 |
文献 木村(1991c)
執筆者 大石久志