京都がタイプ標本の産地であるが、その後記録されていない。また全国的にも極めて稀である。本種の含まれるベッコウタマユラアブ属は特異な形質をもち、所属に関してもたびたび議論がある。すなわち、この属とタマユラアブ属はしばしばクサアブとされてきた、しかし、一方、シギアブともされた。ところが、タマユラアブ属の幼虫が発見され検討された結果、オーストラリア、南米に分布するオオタマユラアブ属と近縁であることがわかり、タマユラアブ科とされるに至ったが、なお異論がある。けれどもベッコウタマユラアブ属は依然として幼虫が未知であって、正確な位置は決定できない。またこの属はもう1種が北米から知られるだけで分布的にも局限された孤立した属で、類縁が見当たらないので、学術的にも極めて貴重な種である。また北米産の種は本種に極めて近縁であるという。

本州のみで、確実な産地は群馬県、石川県、兵庫県の各1か所。古くから極めて稀な種であり、現存する標本も極めて少ないと思われる。京都のみならず、各地とも最近の採集例がまったくといっていいほど見当たらないので、全国的に一層減少している可能性が高い。

◎府内の分布区域　府内では京都市の奥貴船の1例のみ。

京都府では1932年以降記録がなく、2014年の調査に至るまでまったく得られていない。あるいは特殊な生態をもっていて、成虫が発見されにくい可能性がある。しかしこれを考慮しても、顕著な大型の種であり、2014年の調査に至るまでの発見例が極めて少ないことから減少していることは疑いない。貴船、鞍馬周辺は他にも多くの種の記録が近年見当たらなくなっていて、したがって特に2014年の調査に至るまで、相当回数調査されたにもかかわらず再発見されなかった貴船周辺では、既に絶滅してしまった可能性が高い。植林や道路建設によって、貴船周辺の環境が著しく変化したので、再発見は絶望的と考えられる。ただし、芦生のような自然林をよく残している場所には、なお生息している可能性もあると思われるので、さらに調査を継続する必要がある。

生息地の保全。