選定理由 | クロガモは京都府だけでなく周辺県の海岸域における越冬期の調査でほとんど確認されておらず、越冬個体群の規模が極めて小さいことから絶滅危惧種となった。 |
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形態 | 全長48cm。オスの体はすべて黒色だが飛んだ時に次列風切が少し淡く見える。嘴は黒く、上部のふくらんだ部分(鼻こぶ)は橙黄色。メスは頭上から後頸、背、腰、尾が黒褐色。頭と前頸の上部が灰白色。若いオスはメスとオスの中間的な特徴を持ち、鼻こぶは小さく黄色部も小さい。また、体全体に褐色と黒色の羽が混在する。 |
分布 | ユーラシア大陸北部やアラスカで繁殖し、北海道から東北、北陸地方に冬鳥として渡来し、沿岸、沖合、内湾、港などに生息する。内陸ではまれにしか見られない。北海道阿寒湖で夏に幼鳥が観察されたことがあり、繁殖の可能性がある。繁殖地のカムチャツカの分布は一様ではない。ある川の下流に普通にいても、付近の川にはまるでいない。京都府北部ではまれな冬鳥として時々観察される。また隣接している兵庫県北部海域でも近年ほとんど観察例はなく、兵庫県南部で少数が確認されているだけの状況である。 |
生態的特性 | 淡水の湖沼で繁殖し、貝類やエビなどの水生無脊椎動物、時には魚を食べる。巣は低木の多い草地や、草に覆われた島などにつくる。クリーム色の卵を6~9個産み、27~29日抱卵する。オスは「ピィー」、「フィー」と口笛に似た声、メスは「グルルル」、「クルルル」と低い声で鳴く。 |
生息地の現状 | 京都府周辺県が実施してきた1月のガンカモ類でかつてクロガモが多く記録されていたことがあったが、当時は調査が不十分であったようで、現在はそのような記録はなくなっている。 |
生存に対する脅威 | 狩猟対象種になっている。 |
必要な保全対策 | 狩猟対象種から除くこと。越冬海域の保護。モニタリング継続。 |
改訂の理由 | 本来は前回、絶滅危惧種相当であったが、データの見落としにより掲載されなかったため。 |
文献 日高(監)(1996)、ロプコフ(1988)、真木、大西(2000)、日本野鳥の会ひょうご(2013)、高野(1982)
執筆者 須川恒、中村桂子