選定理由 | 夏鳥として府内に生息して繁殖する。繁殖個体数は極めて少なく、近年減少している。 |
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形態 | 全長19~22cm。翼開長42~49cm。フクロウ類の中で最小で、長さ約2cmの小さな羽角があるが、倒れて見えないことがある。体は灰褐色で褐色、黒色、灰色などの複雑な虫食い状の斑紋がある。目は黄色。翼の下面は灰白色で、風切羽には黒色の横紋がある。全体が赤褐色の赤色型も少数混ざっている。 ◎近似種との区別 オオコノハズクは少し大きくて目は橙色。後頸に灰白色の斑がある。 |
分布 | ユーラシア大陸の中緯度地帯で繁殖し、冬はユーラシア大陸の低緯度地帯、アフリカ大陸などで越冬する。日本で繁殖した個体は、フィリピンやインドネシアで越冬する。夏鳥として九州から北海道まで広く渡来する。府内では、6~7月に、芦生、久多、八丁平等で確認されている。 ◎府内の分布区域 全域(局所的)。 |
生態的特性 | 北海道では平地や低山帯の森林で、本州ではやや標高の高い針葉樹林などの大木のある深い森の中で繁殖する。夕暮れから夜半にかけて羽音をたてずに飛び回り、オサムシ、ヤガ、バッタなどの昆虫を採食することが多い。繁殖地には4月下旬~5月上旬に渡来して樹洞に営巣するが、青森県ではムクドリ用の巣箱を利用することも知られている。鳴き声は、「ブッポウソウ」と聞きなされ、ブッポウソウの鳴き声と信じられていたこともある。薄暗いこずえ近くで単独で静止することが多いため、見つけるのは難しい。一腹卵数は4~5卵で、抱卵期間は約2週間。雌雄がセミ、トンボ、コオロギなどの昆虫やクモ類を給餌する。越冬地への南下は、北海道では9月中旬、本州では10月である。 |
生息地の現状 | 府内では、芦生、久多、八丁平等で確認されているが、極めて少数で、近年繁殖期に観察される場所や確認数が減少している。繁殖期に滞在しているのは、いずれも営巣木となる樹洞のある老大木の生育する広大な自然林である。 |
生存に対する脅威 | 老大木のある自然林が、林道建設などの開発によって減少している。また、越冬地における森林伐採などの環境変化も、個体数の減少に影響している可能性が強い。 |
必要な保全対策 | 過去に繁殖していたと思われる森を含め、府内でコノハズクが繁殖している可能性がある森林の目録を作成し、個々の森林別に生息状況と保全状況を明らかにした上で、本種の保護を進める必要がある。 |
文献 日高(監)(1997)、黒田(編・監)(1984)、京都府(1993)、真木、大西(2000)、高野(1982)
執筆者 須川恒、和田岳