選定理由 | 留鳥として年中府内に生息する。個体数は極めて少なく、近年減少している。 |
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形態 | 全長40cm。ドバトより大きく、尾は比較的長い。雌雄同色。体は黒色で紅紫色や緑色の金属光沢がある。嘴は先が淡黄色で基部付近が淡青緑色。足は赤い。頭部はヘルメットをかぶっているような感じの膨らみがある。側頭の羽毛を横帯状に立てることが多い。 ◎近似種との区別 ドバトは小さく、体形が異なり、黒色型でも嘴や蝋膜の色が違う。尾は短く、羽ばたきは速い。生息環境も異なる。 |
分布 | 日本と朝鮮半島南部の海岸、済州島、鬱陵島のみに分布する。国内では、留鳥として本州中部以南の島嶼に分布する。春秋の渡り期には、日本海側の島嶼で観察されることが多く、移動や渡りをするものもあると考えられる。府内では、舞鶴市冠島にのみ生息している。 ◎府内の分布区域 北部地域。 |
生態的特性 | 主に木の実を食べており、木の実を求めて小規模の移動を頻繁に行い、採食は樹上でも地上でも行う。シイやタブなどの実が多い場所には多くの個体が集まることがある。繁殖期は2~9月頃までだが、5~6月が多い。秋・冬期に繁殖した記録もある。よく茂った照葉樹林の樹上に小枝を粗く組み合わせて外径24~35cmの皿形の巣をつくるが、樹洞や地上で営巣することもある。一腹卵数は1卵で、卵は白い。 |
生息地の現状 | 冠島は全島がタブやシイの林で覆われており、オオミズナギドリの集団営巣地となっている。以前ほどは間近に観察されることが少なくなっており、生息密度が減少していると思われる。 |
生存に対する脅威 | 冠島そのものは、オオミズナギドリの集団営巣地として舞鶴市によって管理され保護されている。それにも関わらず、原因は不明ながら生息数は減少している。 |
必要な保全対策 | 全国的にも、照葉樹林の伐採に伴い急速に減少しつつある。その生態や生息状況は詳しくはわかっておらず、詳しい生態調査と生息地の環境保全の必要性が指摘されている。冠島においても、カラスバトの生息実態を把握するための詳細な調査を実施し、個体数の減少原因を明らかにする必要がある。 |
関係法令 | 文化財保護法(天然記念物「地域定めず」) |
文献 日高(監)(1997)、京都府(1993)、真木、大西(2000)、高野(1982)
執筆者 須川恒、和田岳