選定理由 | 冬鳥として府内で越冬する。越冬個体数は極めて少なく、近年減少している。 |
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形態 | 全長140cm。翼開長225cm。雌雄同色。嘴は先端は黒く、上嘴基部が黄色で、黄色部は嘴の半ばより先に達し先端は尖っている。幼鳥は全体が灰褐色。 ◎近似種との区別 コハクチョウは少し小さく、成鳥は嘴の黄色部が小さい。 |
分布 | コハクチョウの繁殖地よりも南のシベリアタイガ地帯で繁殖し、冬鳥として本州以北、特に東北地方や北海道に多く渡来する。府内では久美浜湾にのみ極めて少数が渡来する。 ◎府内の分布区域 北部地域(京丹後市久美浜町)。 |
生態的特性 | 越冬地では湖沼や河川をねぐらとし、そこから朝早く起き出して、湖沼や田圃、給餌場などの採食地へ移動する。春先には求愛行動がよく見られるようになる。営巣地には5月中旬に出現し、5月下旬~6月上旬に、直径2mの巣を枯れ草などでつくり、一腹3~5卵を産み、メスだけで約31日抱卵する。ふ化後雛たちは親鳥に守られながら、スゲ、ミツガシワなどのある浅い湖沼で過ごす。9月下旬に雛は飛べるようになり、10月中旬までには親鳥とともに越冬地に渡る。 |
生息地の現状 | 久美浜湾では1980~81年冬から1994~95年冬までは、毎年12~54羽の渡来が確認され、最多は1982~83年冬の54羽であった。しかし、1995~96年冬から2000~01年冬までの間は、0~3羽と激減している。久美浜湾では河口や海岸で休息し、海草や浮いているもの、小さな貝を採食する。久美浜湾ではウインドサーファーや水上バイクの増加による攪乱があり、冬期にも生息地近くで土木工事が行われている。 |
生存に対する脅威 | ウインドサーファーや水上バイクの増加による攪乱や、冬期にも生息地近くで行われる土木工事が、安全な生息環境に脅威を与えているものと思われる。また蛍光色や黄色や赤色に警戒を示し、交通安全の黄色い帽子などにも反応する。 |
必要な保全対策 | 久美浜湾海岸域の保全計画を策定し、オオハクチョウが渡来する可能性のある海岸域の冬期の土木工事の中止やウインドサーファーなどの規制を行う必要がある。 |
文献 日高(監)(1996)、京都府(1993)、永井(1995)、日本野鳥の会京都支部(2013a)、高野(1982)
執筆者 須川恒、和田岳