選定理由 | 夏鳥として府内に生息して繁殖する。繁殖個体数は極めて少なく、近年減少している。 |
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形態 | 全長49cm。雌雄同色。ゴイサギより小さく嘴は短い。頭上は赤栗色、体の上面は暗栗褐色。雨覆は栗褐色で風切羽は黒く、先端は栗色。 ◎近似種との区別 ズグロミゾゴイは頭頂が黒く飛翔時は風切羽の先端に白斑がある。 |
分布 | 夏鳥として本州、九州、四国、伊豆諸島へ渡来する。冬期は、主にフィリピンに渡るほか、台湾や南日本でも越冬する。府内での記録は少ないが苔寺、石清水八幡宮(八幡市)、鞍馬寺、芦生で観察された。ごく少数が繁殖していると考えられていたが、近年観察情報が減少している。 ◎府内の分布区域 中部地域、南部地域。 |
生態的特性 | 低山の森林に生息。谷や沢筋、湖畔などでサワガニやミミズなどを捕食。繁殖期には、雨や曇りの日の日暮れから数時間と夜明け前の数時間、ウシガエルのような「ボォーッ、ボォーッ」(近くでは「オッボォーッ」と聞こえる)という声で5~8声連続して不気味に鳴く。コロニーは形成せず単独で繁殖する。巣は丘陵地の小さな沢筋の奥まった場所などにつくられ、クヌギなど地上から数mの高さに小枝を使って粗雑な巣をつくる。一腹卵数は3~5卵。抱卵期間20~27日。ふ化後34~37日で巣立つ。 |
生息地の現状 | 10年以上前は、京都市近辺や北山などにある、よく茂った谷川を含む落葉広葉樹林で、少ないながらも観察情報があり、繁殖をしているものと推定されていた。しかし近年は観察記録がほとんどなく、繁殖情報も極めて少ない。 |
生存に対する脅威 | 比較的に低山で繁殖することがあるため、低山の森林で行われる開発が脅威となっている可能性がある。また全国的にも個体数が減少しているのは、越冬地における森林開発などが影響している可能性もある。 |
必要な保全対策 | 府内の生息情報をまず把握し、その中で繁殖している可能性の高い地域を重点的に調査することによって、生息地の保全を行う方向性を探る必要がある。また全国的にも個体数が少ないと考えられる種であるので、保護に向けての全国的な調査と連携することが必要と考える。 |
文献 日高(監)(1996)、京都府(1993)、真木、大西(2000)、日本野鳥の会京都支部(2013a)、高野(1982)
執筆者 須川恒、梶田学