淡水産貝類の概要
2002年版自然環境目録には淡水産貝類47種(亜種を含む)が掲載されていたが、既存の標本資料からカワシンジュガイとフネドブガイが、最近の調査からヒメマルマメタニシとマルドブガイが確認された。その結果、確認された淡水産貝類は、巻貝3目10科30種、二枚貝3目5科21種(亜種を含む)の計51種となった。このうちサガノミジンツボとナカセコカワニナは府内の産地をタイプ産地として新種記載がなされた種である。外来種はスクミリンゴガイやタイワンシジミなど7種が確認された。
府内の水系は、淀川水系、由良川水系と日本海に流入するその他の小河川に大別できる。淀川水系の流域は京都府のおよそ3分の1の面積を占めるにすぎないが、ここにはイシマキガイを除くすべての種が生息しており、またナカセコカワニナやオグラヌマガイなどの14種はこの水系の固有種である。タテボシガイは近江盆地の固有亜種であるが、おそらく幼生が寄生した魚類が琵琶湖疏水を通じて府内に移入し、定着したと考えられる。
由良川水系も淡水産貝類相は比較的豊かで、巻貝9種、二枚貝5種が確認された。クロダカワニナとヒラマキミズマイマイの2種は確認できなかったが、支流の竹田川の兵庫県側には生息記録があり(余田 1977)、府内にも分布している可能性が高い。したがって、由良川水系には巻貝11種、二枚貝5種が生息していると考えられる。
その他の小河川の淡水産貝類相は貧弱で、巻貝は8種確認できたが、二枚貝はマシジミの1種しか確認できなかった。イシマキガイは府内では舞鶴市の伊佐津川と与保呂川の2か所で確認されているにすぎない。しかし、本種の幼生は海に下り、河口付近に定着した稚貝が淡水域へと遡上していくので、今後詳しく調べればまだほかの小河川でも見つかる可能性は高い。
執筆者 近藤高貴