哺乳類の概要
京都府の哺乳類相
京都府の哺乳類相は、府内に高山帯や亜高山帯がないために、これらの高標高地に生息するオコジョ、ヒメヒミズなど高山性の哺乳類を欠いていて、山地性の種が主体となり、これに平地の農耕地や河川敷に生息する種が加わったような哺乳類相となっている。
陸生哺乳類の主な生息場所である森林は、およそその8割を民有林が占めており、スギ、ヒノキなどの植林地がその60%以上を占め、ブナ、ミズナラ林やモミ林など原生林は京都大学芦生研究林などごく限られた地域に見られるに過ぎない。したがって、これら天然林の樹洞などを利用すると考えられるクロホオヒゲコウモリ、コテングコウモリなどの分布はかなり京都大学芦生研究林に局限されている。
京都府は水平的には太平洋近くから日本海側まで南北に長いので、昆虫相などはそれを反映していると見られるが、哺乳類で見れば太平洋側要素や日本海側要素と見られる特徴は顕在化していない。このためか、日本全体で京都府にしか見られない種あるいは分布北限や南限になっている種はいない。ただし、沓島など離島があり、ここでオヒキコウモリが発見されており、これら離島の存在は京都府の動物相全体を見れば特徴の一つを構成する可能性が高い。
今回、京都府で確認された哺乳類は外来種を含めて7目20科52種となった。このうち、外来種はアライグマやヌートリア等を含めて3目9科12種で2002年と変化はない。一方、評価対象となる在来種は7目16科40種であり、2002年より2種増加した。これはモモジロコウモリとユビナガコウモリが新たに確認されたことによる。在来種の内、絶滅種2種(2002年は2種、以下同様)、絶滅寸前種9種(10種)、絶滅危惧種6種(4種)、準絶滅危惧種7種(5種)、要注目種3種(4種)、全体で27種(24種)となり、絶滅のおそれのある種は、確認種40種のうち27種で67.5%もの高率となっている。
このうち10種をコウモリ類が占めている。コウモリ類ではその多くの種で標本が1~数個体であり、その繁殖地も天然林や洞穴などかなり限定されている種で、これらの繁殖地が府内では少ない上、減少しつつあることが絶滅のおそれを生じさせている原因である。
その他、今回特徴的なことは、ニホンジカの増加により、下層植生が衰退し、カモシカやジネズミなどが減少したことで、ニホンジカの管理が課題となっている。また、ホンドザルのように人や農業に対する被害を与える種の保護管理が大きな社会問題となりつつあると考えられる。さらには、近年、アライグマ、ヌートリア、クリハラリスのように農業被害や生態系の攪乱を起こす外来種が増加しつつあることも大きな問題となっている。
執筆者 村上興正