4野室地先(図5)
野室地先の調査した場所は水深5〜23mまで傾斜が8度の緩やかな中、大型転石域でした。この水深帯には6種類のホンダワラ類が生えていました。水深5m〜10mには一部ホンダワラ類やマクサが生えていましたが、全体的には礁上に無節サンゴモが点在する磯焼け状態でした(写真6)。
植食動物は10種類がみられました。現存量は水深5mで最も多く水深が増すに従い少なくなりました。すべての水深帯でみられたのは小型巻貝のウラウズガイでした。有用貝類としてはサザエが水深20mを除くすべての水深帯でみられました。ウニ類ではムラサキウニとバフンウニが水深5〜10m、キタムラサキウニとアカウニが水深7〜10mでみられました。植食動物の現存量の多かった水深5mでは水深15m〜23mと比較して植食動物の現存量が多く、このこともホンダワラ類の生えていた水深帯が限定されることになっていました。小型巻貝のオオコシダカガンガラが全体の8割以上を占めていました。このことからたとえホンダワラ類の種が加入してもオオコシダカガンガラをはじめとした植食動物の食害が大きく、結果としてホンダワラ類は生えている水深が限定されることになったと考えられます。また、浅い水深帯にホンダワラ類が生えていないことは野室地先の藻場形成には新井崎と同様に冬季の波浪による影響が大きいと考えられます。また、広範囲に磯焼け状態がみられることから、成生地先のように種の加入や前述した基質の安定にも影響していると考えられますが、今回の調査結果から要因を特定することはできませんでした。
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