2.新しく開発した標識
1)飼育試験の結果
平成7年の7月28日から12月9日までの約5ヶ月にわたり、平均体長65mmのクルマエビを左側の尾肢を図1のようにハサミで切り取った後に飼育しました。
切り取った左側尾肢は日が経つにしたがい回復していきました。そして、約1ヶ月後には図2のようにほとんどのクルマエビの尾肢は90%以上に回復して先に説明した尾肢切除標識法のようになり、切り取った尾肢と切り取らなかった尾肢の区別はできなくなりました。しかしながら、左右の尾肢の大きさの差が肉眼的に判断できなくなった約1ヶ月後に回復してきた(再生した)左側尾肢をよく観察してみると、通常は尾肢の中央部にある暗赤色の色が、切り取った尾肢と切り取らなかった尾肢では図3のように違うことが分かりました。
すなわち、尾肢を切り取った全てのクルマエビで、回復してきた左側尾肢の暗赤色はその現れ方は弱く、しかもその面積はかなり小さくなっていました。中には暗赤色がほとんどでないクルマエビもありました。したがって、尾肢を切り取ったクルマエビと尾肢を切り取っていないクルマエビの識別は容易にできました。なお、コンピューターで左右の尾肢の暗赤色の面積を測定し、比較してみたところ、切り取った尾肢の暗赤色の回復は切り取らなかった尾肢と比較して25%以下でしかありませんでした。
このように、尾肢の暗赤色の大きさの違いは飼育試験の終了した12月9日まで認められました。したがって、切り取った尾肢の暗赤色の出方を指標とするならば、尾肢を切り取って天然海域に放流しても標識の有無が容易に識別できるものと考えられました。
この標識方法は尾肢切除法と区別するため、「京都方式」と呼ぶことにしました。
|