3.「たてがに」、「水ガニ」「やけガニ」と「大」、「中」、「小」銘柄の関係
次に、先ほどの雄ガニの脱皮、生長過程をもとに、市場に水揚げされる様々な銘柄のカニについて説明します。
雄ガニとして漁獲されているのは、身入りが良く最も商品価値が高い「たてガニ」とあまり身入りの良くない「水ガニ」とに大別されます。さらに、「たてガニ」の中には、甲羅や脚の裏側が少し黒くなった「やけガニ」があり、市場価値は少し劣ります。漁業者の間では、以前はこれらのカニは別の種類といわれていました。しかし、近年ではこの違いは雄ガニの脱皮してからの経過時間と最終脱皮に由来していることが分かっています。
まず、「たてガニ」と「水ガニ」の関係について述べます。市場で水揚げされる「たてガニ」と「水ガニ」の甲幅と鋏脚高の関係は、図4のようになります。「たてガニ」では全てのカニで鋏脚が大きく、最終脱皮を終えたものばかりです。「水ガニ」では、鋏脚の大きいものと小さいものが混在しています。 ここで、脱皮の時期と漁期に注目してみます。脱皮の盛期は、上述したように9〜10月頃です。一方、漁期は「たてガニ」が11月上旬、「水ガニ」が12月下旬から始まりますが、いずれにしても脱皮時期の直後といえます。すなわち、「たてガニ」とは最終脱皮を終えて少なくとも約1年以上経過したカニです。これは、図5のB2〜B4、C2〜C4およびD2〜D4当たります。「水ガニ」とは最終脱皮であったか、そうでなかったかを問わず、脱皮後間もないか、少なくとも脱皮後1年以内のカニです。これは、b1とB1、c1とC1、そしてD1にあたります。 「水ガニ」の中でも鋏脚の小さいカニ(b1とc1)は、翌年の9〜10月頃にはまた脱皮を行うので、翌年も「水ガニ」のままです。鋏脚の大きい「水ガニ」(B1,C1およびD1)は、最終脱皮を終えているので、翌年には「たてガニ」として漁獲されます。 ところで、「たてガニ」に含まれる「やけガニ」はどのようなカニなのでしょうか。それは、最終脱皮を終えて3〜4年経過した、いわば「お爺さんガニ」にそのようなカニが多くみられます。一般的には、図5のB4、C4およびD4が「やけがに」に当たります。 一方、雄ガニの漁獲できる大きさは甲幅9cm以上ですから、図5に示すようにB、C、D群の齢期群が漁獲の対象になっています。市場では、雄ガニは甲羅の大きさにより「大」、「中」、「小」の銘柄に大別されていますが、これはD群、C群およびB群にそれぞれあたります(図5)。 以上述べたように、商品価値が大きく異なる「たてガニ」、「水ガニ」および「やけガニ」、また、「大」、「中」、「小」などの銘柄は、実は雄ガニの最終脱皮と深く関わっているのです。 |
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